ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

備前焼陶芸家  藤原啓コミュの結婚、そして郷里・穂浪へ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1922(大正11)年5月、藤原敬二は初の著書となる詩集『夕
の哀しみ』を上梓した。また、同時期に日本画家の川端玉章
が主宰し、洋画家の藤島武二が指導した川端画学校洋画部と、
谷中音楽院という音楽学校でヴァイオリンを学んでいた。

また、このころ神楽坂にある教会に通い、神父より「ヨハネ・
ケイ」という洗礼名を頂いたというが、女性運動家のエレン・
ケイと名前が似ていることは偶然だろうか。

詩人のサトウハチローと共に「悪所(吉原)通い」をしたり、
2度目の上京をしたばかりの林芙美子を、自らの下宿に2週間
ほど世話したなど(林芙美子は『文章世界』の投稿者であった
ため、記者だった藤原敬二とは手紙などの交流があったという)
藤原啓の自伝にはエピソードが残っている。
ちなみに、藤原啓の自伝では「もちろん、愛情関係ではないの
だから、手も握ったこともない」(『土のぬくもり』日本経済
新聞社、1983)と、林芙美子との短い同宿生活を回顧して
いる。

1923(大正12)年9月1日、関東大震災による帝都東京の壊滅。
藤原敬二はたまたま実家に帰省していて、難を逃れた。
実家で新聞を見た敬二は上京し、東京の荒廃を見て強い衝撃を
与えられたという。神楽坂にあった下宿は全壊。博文館の建物
も大きく崩壊していた。
翌年(1924年)、第二詩集『壊滅の都市』を尚文堂から上梓。
震災によって壊滅した東京を描いた詩集とのことだが、残念
ながらその書籍などは現存していない。

1925(大正15)年1月、博文館は創業以来かつてない労働争議
が起こった。関連会社の共同印刷で操業短縮案をめぐり労使が
対立。会社は1,460人にわたる解雇者を出し、争議は収ま
った。
金融恐慌から昭和恐慌への足音が近づき、マルキシズムの波が
都市部を中心に広まろうとしていた頃である。
同じ年に、藤原敬二は、労働争議に嫌気がさした上に、当時の
博文館の編集局長であった森下雨村とトラブルもあったことか
ら、博文館を退職した。

博文館退職後、映画会社の日活脚本部に勤務するが、数本脚本
を執筆したのみで退職。
1930(昭和5)年、森下雨村に詫びをいれ、再び博文館に復帰
した。
しかし、1932(昭和7)年に再び退社。文筆一本の生活を志す。
たまたま大沼氏という、茨城県土浦の近くの羽鳥という常磐線
沿線の町の地主の息子と知り合いとなり、大沼氏の実家の離れ
に厄介になった。
早速執筆活動を開始。平凡社の『文壇』という雑誌の懸賞小説
に応募、「二人の文学青年」という20枚の短編が1等に当選
し、賞金50円を手にする。
その後も宇都宮の『下野新聞』に小説「輝く日輪」を、函館の
『北海道タイムズ』に「妖艶の花」を連載。また、仙台の『河
北新報』、『秋田魁新聞』にも連載小説を掲載した。
当時の敬二は「穂浪健児」「大村健一」「不二原敬二」「不二
原敬」などの筆名で小説やエッセイを発表した。

ここで敬二に転機が訪れる。1932(昭和7)年に郷里の父に見
合いを薦められ、岡山県勝田郡飯岡村王子の農業・赤畠近平の
三女・かつ代と5月19日に結婚した。
敬二の父は、郷里を出奔した敬二のために、婚儀の段取りから
夫婦の住まいまで準備してくれた。
1933(昭和8)年6月には長男の雄が誕生するが、敬二は再び東
京に出ることが多く、上野周辺の下宿を転々としながら、新聞
小説やエッセイを執筆し続けた。
家庭は、ほとんど顧みなかったという。

しかし、次第に文学界で認められないことへの焦りが昂じ、深
い挫折感を味わったと、後に本人は語る。

敬二より1年前に博文館を退社したかつての編集局長・森下雨村
は、文筆活動を続けながら東京と郷里の高知・佐川村との往復
生活を続けていた。
敬二の「深い挫折感」を知った雨村は、敬二にしばらくの間郷里
に戻り静養した後、再び文筆活動を続けるように薦めた。
敬二も雨村の薦めを受諾し、かくして1937(昭和12)年、38歳に
して故郷・穂浪に腰を落ち着けることとなった。

「人生の敗残者という思いが何をするにもつきまとった」
敬二は、郷里の自然の中で、自らの再生への道を模索し始めた。


(参考資料)
藤原啓『土のぬくもり』(日本経済新聞社、1983)
撫川新『備前 藤原啓』(福武書店、1981)

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

備前焼陶芸家  藤原啓 更新情報

備前焼陶芸家  藤原啓のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング