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玉蜀黍倶楽部コミュのさびしんぼうのカナリヤ

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ある草原の木の上に、一羽のカナリヤが住んでいました。

黄色い羽をしたカナリヤは、とてもきれいで歌が上手でした。

カナリヤが木の枝に止まって歌い始めると、
いつのまにかたくさんの鳥たちが集まってきます。

そして、みんなうっとりとして、カナリヤの声に耳をすませるのでした。



「なんてすてきな声なんだろう。カナリヤさん、ぼくとおともだちになろう」
「わたしもおともだちになってほしいわ」



カナリヤは、たくさんのおともだちにかこまれて、
とても楽しい時間を過ごすことができました。



けれども、カナリヤが歌を歌い終わると、
鳥たちはみんなカナリヤをおいて、
草原の奥へ帰っていきました。



草原のむこうに太陽がしずむと、カナリヤはひとりぼっちになってしまいます。



ひとりぼっちになったカナリヤは、夜になるとお月様を見上げて、
いつも一人でないていました。



「いつでも、いっしょにいてくれるおともだちがほしい。さみしいよお」


でも、さびしんぼうのカナリヤを、なぐさめてくれる
おともだちはいませんでした。



ある朝のことです。枝にとまったカナリヤは、
おひさまのむこうに、
大きな森があるのを見つけました。

おひさまの光をあびて金色に光る森は、
とてもきれいでした。


「あんなに、きれいなところがあるなんてしらなかった。あそこに行ってみたい」


カナリヤはそう思うと、おひさまの方向をめざして、
空高くはばたきはじめました。
はじめて高く飛んだ空は、とてもきれいでした。

あたたかいおひさまの光。青い空。

ひとりぼっちでもぜんぜんさみしくありません。
それどころか、心がうきうきしてきます。


「こんなにおひさまの光があたたかいなんてしらなかった。
金色に光るあの森は、どんなところなのかしら」


カナリヤは、わくわくしながら、
金色にかがやく森にむかって空をとびました。


「やあ、いらっしゃい。鳥のおきゃくさまとはめずらしい。
君はどこからやってきたの?」


 カナリヤが森につくと、あちこちに立っている松の木や
くるみの木たちが話しかけてきました。


「草原からです」



「そうなんだ。遠いところからよく来たね。
いつまでもすきなだけ、ゆっくりしていらっしゃい」


カナリヤがおそるおそる答えると、一番大きな松の木が、
にっこりわらってそう言ってくれました。

森の木たちも、枝をざわざわ鳴らして、カナリヤを歓迎してくれました。

「松の木さん、みなさんありがとう」
「どういたしまして。これからよろしくね」



カナリヤの思ったとおり、森はとてもすてきなところでした。


鳥のおともだちはいないけど、あちこちにいる松の木や
くるみの木がお話をしてくれます。きのこの子どもたちが、
かくれんぼやおにごっこをして遊んでくれます。



でも、やっぱり夜になると、ひとりぼっちになってしまいます。

カナリヤはやっぱりさみしくて、夜になるとお月さまを見上げて
一人でなきました。



ある日の夕方のことです。
きのこの子どもたちからわけてもらった、くるみを運ぼうとしていた時でした。

とつぜん木の上から声が聞こえてきました。


「君はどこから来たの?」


カナリヤが木の上を見上げると、一羽のかっこうが枝にとまっていました。


「草原からよ。高い木の枝から見たら、とてもここがきれいで
楽しそうだから遊びにきたの」

「ここは楽しい?」
「うん、でもね」


カナリヤは、かっこうに話しました。
草原にいたときは鳥のおともだちがたくさんいたけど、
夜になると一人になってしまうので、すごくさみしかったこと。

それがいやでここに来たのに、やっぱり夜はひとりぼっちになってしまうこと。



 そんなことを話しているうちに、カナリヤは、
さみしくてたまらなくなって泣き出してしまいました。

かっこうはカナリヤを、とてもかわいそうだと思いました。


「そうかあ。この森の中に、鳥はぼくしかいないからなあ。
ぼくでよければ、おともだちになるよ。
ぼくの住んでる木の枝にひっこししてくればいい。

となりに巣を作ってあげるよ。
そしたらいつでもいっしょにいられるから、さみしくなくなるでしょ?」


カナリヤは、はじめてずっといっしょにいてくれるおともだちができて、
とてもうれしくなりました。


「すぐりの実を取っててきたよ。あげる」
「ありがとう」

「暑くない? やつでのはっぱであおいであげる」
「ありがとう」

「さむくない? こっちにおいでよ。羽の下であたためてあげる」
「ありがとう」

「ねむれないの? こっちにおいで。お話してあげる」
「ありがとう」



かっこうは、カナリヤのために、昼も夜もいっしょうけんめいに
いろんな事をしました。

かっこうは、いつもよろこんでくれるカナリヤが、とても好きになりました。


カナリヤも、いつもいっしょにいてくれて、
自分にいろいろなことをしてくれるかっこうが大好きになりました。


ある夜のことです。
いつものように、羽の下であたためてもらいながら、
かっこうにお話をしてもらっていると、カナリヤはあることを思いつきました。


「ねえ、かっこうさん。ずっと前に、この森にはかっこうさんしか
鳥が住んでいないって言ってたでしょ?」
「そうだよ」

「鳥のおともだちは、ほかにいないの?」
「いないよ。君がはじめてのおともだちだよ」


「さみしくないの?」
「よくわからないよ。だってぼくは、ずっと一人でここに住んでいるからね」


「おとうさんやおかあさんは?」
「しらない。気がついたらここにいたんだ」

「ずっと一人ぼっちだったのね。かわいそう」


「そうなの? でも松の木さんやくるみの木さんや、
きのこの子どもたちとか、むささびさんとか、りすさんとか、
たくさんおともだちがいるよ」


「でも、鳥のおともだちはいないじゃない」
「君がいるよ」

「そうだけど、もっとたくさんおともだちがほしいでしょ?」
「おともだちって、たくさんいないといけないの?」


「そうよ。その方が楽しいに決まってるじゃない。いちど草原に行ってみない?

 いつもそこでわたしが木の枝にとまって歌うの。
そしたらね、たくさんの鳥のおともだちがやってくるの。
みんなでいっしょに歌ってあそびましょ。きっと楽しいわよ」


「うーん、でもなあ。ぼくは歌ったことなんてないし。
それにきっと君みたいにうまく歌えないよ」


「だいじょうぶよ。いつもそんなにすてきな声でお話してくれるじゃない。
きっとうまく歌えるわよ」
「うーん、そうかなあ」


次の日、カナリヤは、かっこうをつれて森から草原へやってきました。

ひさしぶりにカナリヤのすがたを見た鳥たちは、おおよろこびでした。


まだ歌いはじめてもいないのに、
カナリヤの止まった枝のまわりに集まってきました。


「カナリヤさん、はやく歌を聞かせてよ」

 集まってきた鳥たちは、カナリヤが歌い出すのを
わくわくしながら待っていました。

 カナリヤが歌い始めると、もっとたくさんの鳥たちがやってきて、
いっせいに拍手が起きました。


 カナリヤは、とても楽しそうに歌を歌っていましたが、
かっこうはとてもきゅうくつそうな顔をして下を向いていました。

カナリヤの歌はとても好きだったけど、
こんなにたくさんの鳥を見たのは、はじめてだったからです。


「カナリヤさん。となりにいるおともだちはだれなの?」

 カナリヤが歌い終わると、だれかがたずねました。

「かっこうさんよ。森の中でおともだちになったの。
とってもやさしいおともだちなのよ」



「へえ、じゃあ、カナリヤさんと同じで歌がじょうずなんだろうな。
ねえかっこうさん。何か歌ってよ」

「うんうん、何か歌って」



 集まってきた鳥たちは、かっこうを見つめると、
いっせいに歌ってほしいと話しかけました。



はじめて、たくさんの鳥のおともだちができたばかりなのです。

かっこうは、はずかしくなってしまって、何も言えずに、
また下をむいたままになってしまいました。


「なあんだ。カナリヤさんのおともだちって言うから、
どんな歌を聞かせてもらえるかと思ったら、何も歌えないんじゃないか。
つまんない。みんな帰ろうぜ」



 集まっていた鳥たちは、下をむいてしまったままのかっこうと
カナリヤをおいて、みんな帰ってしまいました。


「カナリヤさん、ごめんね。ぼくのせいで、おともだちがみんないなくなっちゃったね。
君は、たくさんのおともだちがいないとさみしいんでしょ? 

とっても悪いことをしちゃったから、ぼくはもう
君のおともだちじゃいられないよね。

さみしいけど、ぼくは森に帰るよ。さようなら。元気でね」

 かっこうはそう言うと、一人で森へ帰ってしまいました。



 かっこうがいなくなってしまった後、カナリヤはとっても大事なおともだちが
いなくなってしまったことに気付きました。


「草原の鳥のおともだちは、わたしが歌を歌っている時だけそばにいてくれた。
でも、かっこうさんは、わたしが歌を歌っていない時も、ずっとそばにいてくれた。

さみしくてたまらない時だって羽の下であたためてくれたし、お話もしてくれた。

かっこうさんがいつでもいっしょにいてくれる大事なおともだちだってわかっていたのに。
ああ、それなのに、なんてばかなことをしてしまったんだろう」


カナリヤは、とっても大事なともだちがいなくなってしまったことがわかって、
ずっとずっと泣き続けました。


やがて夜になって、お月様が空にのぼると、カナリヤはもっと悲しくなってしまって、
涙を流して大きな声で泣き続けました。


「おじょうさん、どうかしたのかな?」


 カナリヤが顔を上げると、ふくろうのおじいさんが枝に止まっていました。


「ほっほっほっ。久しぶりに月夜のさんぽを楽しんでいたら、
悲しそうな泣き声が聞こえてきたからね。
だれかと思ったらカナリヤさんだったのか。いったいどうしたのかね」


カナリヤは、ふくろうのおじいさんに全てを話しました。

夜になるとひとりぼっちになるのがさみしくて、森へでかけたこと。
そして森の中でかっこうに出会ったこと。いつでもいっしょにいてくれる

かっこうに出会えてとても幸せになったこと。



でも、もっとたくさんのともだちにかこまれていたくなって、
かっこうの心を傷つけてしまったこと。カナリヤは、すなおな気持ちになって、
正直にふくろうのおじいさんに話しました。


「そうかねそうかね。友だちがたくさんほしいと思うことは
全然悪いことじゃない。
でもね、いつでもそばにいてくれて、自分を心から大事にしてくれるともだちは、
どこにでもいるものじゃない。そのことはわかるね」


「はい。わたしを一番大事にしてくれるおともだちは、かっこうさんだけでした。
でももう、かっこうさんには会えません。かっこうさんは、森に帰ってしまったから」

「そんなことはないよ」

ふくろうのおじいさんは、大きなせきを一つすると話を続けました。


「ほんとうに大事なともだちは、そんなに簡単にいなくなったりはしないよ」
「でも、かっこうさんは森に帰ってしまったもん」


「君の目の前にいなくても、心は深くつながってるはずだよ。

本当に大事なともだちは、お互いの心の奥深くで
強く強く結びついているからね。
君が失敗しても、まちがったことをしても、すなおな気持ちになってあやまれば
絶対に赦してくれる。だから、絶対に会えるさ」


「無理です。だってかっこうさんは、深い森の奥へ行ったんだもの。
森の中のどこにいるのかもわからないんだもの。もう二度と会えないよ」


 カナリヤは、下をむいてまた泣きだしてしまいました。



「カナリヤのおじょうさん。いいかい? よくお聞き。
すなおな気持ちになるだけじゃだめなんだ。

かっこうさんの心の扉にかかった鍵を開けるには、
勇気を出して言葉で伝えないとだめなんだよ。

だまっていたら何も伝わらないんだ。いっしょにいられなくなって、
一番悲しいのは君じゃなくて、かっこうさんなんだよ。勇気を出すことだ。
このままずっとかっこうさんに会えなくなってしまってもいいのかい?」



「いや、それはいや。絶対にいや」


「だろう? だったらすなおになることだ。すなおになって
自分の気持ちをかっこうさんに伝えることだ」

「でも、どうやって伝えるの?」

「君には歌があるじゃないか。
歌でかっこうさんに、自分の気持ちをすなおに伝えるんだ」


「だって、かっこうさんは、森のどこにいるのかもわからないのよ」

「いい知恵がある。私の背中に乗りなさい。
森まで連れていってあげよう。さあ、はやく」


 カナリヤがおそるおそる、ふくろうの背中に乗ると、
ふくろうは空高く舞い上がりました。ふくろうが大きな羽ではばたくと、
あっと言う間に森が近づいてきます。


月の明かりに照らされた森は、深く青い色をしていました。
松の木もくるみの木も眠っているのか、だれも話す声は聞こえてきません。

もちろんかっこうの声も聞こえてはきませんでした。



「ふくろうのおじいさん。どうやってかっこうさんとお話するの?
 かっこうさんは、どこにいるのかもわからないのに」

「まあ、私にまかせなさい」


 ふくろうのおじいさんは、そう言うと、森のまんなかにある湖のほとりに降りました。



「ここがいいだろう。さあ、カナリヤのおじょうさん。歌いなさい。
かっこうさんのためだけに心をこめて歌いなさい。
そうしたら必ずかっこうさんは、やってきてくれるよ」

「本当に?」



「ああ、間違いない。かっこうさんと心が深くつながっていることを信じることだ。
必ずかっこうさんは君を赦してくれる。そしてここにやってきてくれる」


 カナリヤは、いっしょうけんめい歌いました。
カナリヤがせいいっぱい心をこめて歌う声は、湖の水面をこえて、
森へすいこまれていきました。

どれくらい時間がたったころでしょう。

カナリヤがせいいっぱい歌う声を聞いて、
眠っていた森の木たちが目を覚ましはじめました。


「なんだろう? あれはカナリヤさんが歌ってるんじゃないか?」

「どうやら、かっこうさんをさがしているらしいぞ」

「大変だ。大変だ。かっこうさんに知らせないと」


 森の木たちは、となりの木に話しかけて、かっこうさんを探しました。

そして、森の奥深くにいたかっこうさんを探し出しました。


「かっこうさん。カナリヤさんが帰ってきたよ」

「うそだよ。カナリヤさんは、ぼくがきらいになったんだ。
ここにはもうやってこないよ」


「本当だよ。かっこうさんにあやまりたいって歌ってるよ。
また会いたいからやってきたって湖のほとりで歌ってるよ。

すごくきれいな歌声だよ。自分が間違ってたからゆるしてほしいって泣いてるよ。

かっこうさん、はやく行ってあげなよ。
今日なら月の明かりがまぶしいくらいだから、今すぐ飛んでいけるでしょ」


 かっこうは、すぐに木の枝から湖のほとりに向けて飛び立ちました。
高く舞い上がると、カナリヤのきれいな歌声が聞こえてきました。

かっこうさんに会いたい。ゆるしてほしい。

カナリヤの声を聞くと、かっこうは胸が苦しくなりました。

せいいっぱいはばたいて、湖のほとりをめざしました。


「カナリヤさん」

 なつかしい声が聞こえたので、カナリヤはつい歌うのをやめてしまいました。


 声のする方を見ると、そこには、かっこうさんがいました。

「かっこうさん。来てくれたのね。ありがとう」


「ううん、ぼくの方こそありがとう。君の大事なおともだちをなくしてしまったのに」


「いいの、もういいの。わたしはかっこうさんだけがいればいいの。
わたしは歌を歌っていない時は、ひとりぼっちになってとってもさみしかった。

わたしが歌を歌っていない時にずっとそばにいてくれたのは、かっこうさんだけだったもの。
だから、かっこうさんだけがいてくれればいいの」


「ありがとう。カナリヤさん。ゆるしてくれて。ここに来てくれて本当にありがとう」


「また、お話ししてくれたり、やつでのうちわであおいだり、
すぐりの実をとってきてくれたりしてくれる? 
そして大きな羽の下であたためたりしてくれる?」

「もちろん。君がよろこんでくれるならそうするよ」



それから、かっこうとカナリヤは、ずっと森の奥深くで二人だけで暮らしました。


カナリヤは二度と大勢のともだちの前で歌うことはありませんでしたが、
さみしくなることはありませんでした。



自分が歌う歌を、かっこうさんが一番よろこんでくれることがわかったからです。


カナリヤはずっとずっと、深い森の奥で、
かっこうさんのためだけに歌い続けて幸せに暮らしました。

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