韓国で過ごすはじめての夏も終わりに近づき、秋の気配が見え隠れし始めた頃、突然一人旅に出たくなった。
旅に行くなら、キョンジュやテグ、テジョン、クァンジュ、モッポ、プサンなどは当然のことだが、特に自然と人しか存在しないような、いわゆるド田舎に行って見たかった。
私の下宿は、地方人間たちのルツボで(韓国の場合、大学生になってもソウルっ子は、日本人みたいには独立せず、大体は実家から大学に通い、地方から来た学生はしかたなく下宿する)、常日頃からさまざまな地方の方言(サッツリ)が飛び交っていた。
だから有難くも、自然といろいろなサッツリが身についていたため、サッツリを聞けば大体、どこのものかが分かるようになっていた。
そこで、鍛え上げられたサッツリを試してみたいということもあったが、何よりも韓国人の情をもろに感じられるだろう所に行きたかった。
そして、その何とも言えない情の世界にどっぷりと浸りたかった。
それから、約2週間の旅は始まった。
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