無二会コミュの19年前の12月6日（日）

昭和62年冬2組時間割より

5時半：起床
6時〜7時：勤行・法話
7時〜7時半：清掃
7時半〜8時半：朝食
9時〜12時：稽古
12時〜13時：昼食
13時〜16時半：稽古
17時半〜18時半：夕食
18時半〜20時：入浴
20時〜21時半：ﾐｰﾃｲﾝｸﾞ
22時〜：就寝


5時半〜起床・勤行。
この時の背筋の伸びる感じが好きになってきた。寒さも気持ちを引き締める。
食事当番は4班、稽古場当番は5・6班。私は6班なので、準備のため一足先に
稽古場へ向かわなければ。朝食後、着物を着て雪が溶けてきた道を稽古場へ
走った。稽古場では、あたふたと、水屋の準備、床飾りなどを吉水先生が
指示され整えた。最後に菅田先生がちらっと覗かれ床をご覧になり、
「まがってます。」と一言。床前にお座りになって指示され整えた。静かな一瞬。

9時〜稽古　
時間丁度に襖が開き静かに先生方が席に入られる。稽古場の空気が一瞬にして
ぴーんと張り詰めた。畳は硬い板のよう..でも緊張で身じろぎも出来なかった。


午前A席2回目は私の番、点前。A席は稽古場奥側、床の間のある席。1回目の
人が終わった時、私は緊張感でおかしくなりそうだった。担当は吉田先生。
初日の夜の「何のために茶をするのか」という心に突き刺さる問いから後、
この先生の厳しさから目が離せなくなっていた。その先生が、点前畳の真横に
お座りになる。ご挨拶をして、水屋で準備。「もう何とでも言って...」と開き直って、点前へ。いくつかの小さなご指摘、そして水指からお釜へ水を注ごうとした時、
お声がかかった。「摺りきり柄杓っていうのだから、もっと」私の柄杓には半分強の水、もう一度掬って8分目。「もっと。かして」と柄杓を手に取って水指の中へ。
顔が映るほどたっぷりと掬ってみせ「このくらい」とおっしゃり、水を戻して柄杓を
また私に..。そして、「水でも湯でも掬う時には柄杓が全部濡れるように、柄杓を
傾けてたっぷり掬えばそうなる」とおっしゃった。その光景、言葉は今も傍らにある。濡れた柄杓の美しさを知った。稽古を終えてご挨拶、力がぬけた。

12時〜昼食　水屋準備当番なので、慌てて稽古場へ戻る。

13時〜稽古
午後1回目B席で、私はお詰。菅田先生の静かな目の中、終了。お菓子の味が判らなかった。その後はひたすら座して静かに仲間の稽古を見る、見た。

＜道具組について＞

＊棚＊
・A席　二重棚 吸江斎好み 溜塗 敷板なし（濃い茶の光るかんじ）
・B席　丸卓　啐啄斎好み 溜塗（黒の濃い落ち着いた色）

＊主茶碗＊
・A席　5日と同じ
・B席　5日と同じ

＊替茶碗＊
・A席　染付 祥瑞写し（馬や人が描かれ金茶色の一本線がある）
・B席　萩焼（こぶりで薄いピンク）

＊蓋置＊
・A席　黄つくね 永楽弘入作（楽山12代目・薄い黄色で楽の字がある）
・B席　赤絵ひちきり 犬山焼（上には赤い花、下には緑の葉・窪みにも赤絵あり）

＊菓子＊
・主菓子　落ち葉 とらや製（長方形・漉し餡もったりして、上側には黄色あづきが入っている）
・干菓子　柚餅 鶴屋吉信製
　　　　　うす紅 末富製（2枚の白い薄紙のよう、中には梅餡）

＊水指＊
・A席　ねじぬき（昨日のB席）
・B席　白鷺 高取 惺斎在判（薄茶色、正面に白く釉が垂れている）

＊掛物＊
・A席「勤　一日不食　一日不成」 大徳寺昭陰和尚筆

・B席「説似一物即不中」
　　　　即中斎の字を入れて大徳寺和尚大梅さんが書かれたもの

＊花入＊
・A席　竹一重切　土佐みずき・椿（ﾋﾟﾝｸ）

＊花台＊
・A席　丸香台 大徳寺五郎松 摺漆


17時半〜夕食

20時〜ﾐｰﾃｲﾝｸﾞ　吉田先生

＊今日の道具組の説明

＊「自分は何のためにここに来たのか？」
　 「どうしてお茶をするのか」
　　甘えてる、甘えるな。

＊お茶を飲むこと。日々の中、抹茶を好きになれ。

短期講習会の前日、京都には大雪が降った。吉田先生は私たちを迎えるために
家元門前の雪かきをされ、結果ギックリ腰となり、動くこともようやくという状態らしい。稽古場でも皆に判らぬように襖の窪みに指をかけてそっと出入りされていた。でもそんな事は関係ないとおっしゃった。自分自身の自己管理の問題であって、
痛いとか動けないという事を人に言うようなら甘えているだけの事。自分で自分に厳しくあれと話された。胸に刻む事ばかり、お茶は生き方もみせてしまう。