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Bar【Philly's】コミュのTYPHOONと女

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たまたま昨年は顔を出さなかった台風がパワーアップして、この店の戸を思いっきり叩いていた。その音に人が怒ったような激しさのノックを読みとり、開けたら、雨でびしょ濡れの女性が飛び込んできた。

「さっきから何度も何度もノックしているのに開けてくれないのだから・・・」

「ゴメンナサイ!」女性から詰られたような口調で第一声を聞くと、この言葉で解決をはかろうというするのが身に付いているのを隠して、作った笑顔を見せる。

「男がさぁ、初めて来た客に、媚びるような顔を作らないでよ!」

なんだこいつはと思いながら、「こんな嵐の夜に来るのはドラキュラか通りの向こうから飛んできた瓦かな」と応えた。ゴメンナサイの言葉に突っかかるような女性はロクなもんでないから、正面から戦わずに少し体をかわして、かけていた下垣真希のCD「愛する人に歌わせないで」を止め、ザ・ピーナッツの「大阪の女」をかけた。

「あなたね、私が北の女だとわかってこれをかけたの?」

[夢を信じちゃ いけないと 言った私が 夢を見た 可愛い女はあかへんわ]を連想したからではなかった。この歌を知っている世代ではないのに、これを知っていた。どう見ても40前後にしか見えない。

「私の青春はミナミで、道頓堀川の橋の上りでウロウロしていましたから、お姐さんのような落ち着きのある人とは縁がなかった」

「ふーん、アイビーだったの?」

「私の頃は、インデアンマドラスのシャツにバーミューダーが流行っていましたし、ザ・ピーナツも人気がありました」

「ところで何を召し上がります?」

「台風の日だから言うのじゃないけど、タイフウという名のカクテルはあるの?」


面倒くさがらずに、「さとうきびから造られたラム酒とシークヮーサー果汁のカクテルですけど」と応え、CDをエラおばさんの「ANGELS WE HAVE HEARD ON HIGH」(=荒野のはてに)をかけた。

この客はどうも私を悩ませる客になりそうだ。

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