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リレー小説を作る会コミュの〜失恋小説〜

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はじめまして。
積み上げて崩れた感じを丁寧に出したいです。
宜しくお願いします。
 

コメント(17)

 自分の部屋がすきだ。
 明け方、小さな窓から光が差し、青白く染まってゆくこの部屋。今時だけど和室に敷布団。畳に似合わないママ好みで購入されたビーチカラーの学習机は、役目を終えた今年の四月から事務机に変わった。本、CD,シンセサイザー、小さな掃除機、すべて大きな押入れに納まっていて、畳の上は机とコンポしかない。私の就職も決まって落ち着いた事だし、という理由で、パパはギターや推理小説やいろんなものと一緒に隣町へ引っ越して行った。六月の事だ。懐かしいなぁ、と早くも感じる。
 押入れはいつも開け放している。この部屋は手を伸ばせば何にでも届く。足りないもの、欲しいものは通信販売で玄関に届く。今日は結婚式の招待状まで届いた。
 差出人は見なくても分かっている。ママからだ。パパとリコンしてから六ヶ月経ったので、晴れてあの男と一緒になれるというわけだ。
 一体どこの世界に、自分の母親から結婚式の招待状をもらう娘がいるのだろう。ふつう、逆じゃないのか?あ、自分が結婚するときって親には招待状は出さないのかな。結婚したことないからワカンナイヤ。っていうか、ママは再婚なのに。いい歳も歳、四五歳なのに。
いくら相手の男が初婚だからって結婚式なんかやっちゃっていいのか?
母親のウエディングドレス姿を見せつけられるこっちの気持ちにもなってみろ、と言ってやりたいが時すでに遅い。遅すぎるのだ。

 半年前、つまり今年の四月に、パパは突然私の下宿先に現れた。ギターと二、三冊の推理小説だけを持って。ママにリコンされちゃった、と半泣き半笑いのピエロのような表情で。
 離婚のリの字も聞いてなかった私は、驚いて買い替えたばかりの事務机の椅子からずり落ちそうになった。いや、そんな予感がしないでもなかったが、それだって本気で別れる前に一言ぐらい私に相談してくれるものだと信じていた。それが、全く寝耳に水、スルーもスルー。

 あんまりじゃない、と母親に電話したところ
「いいじゃないのよ、あんたをちゃんと大学まで出して就職までさせたんだし(就職活動したのは私であってママじゃない)もう大人なわけでしょ?(まあ一応ね)離婚はね、パパとママの問題なの、だからあんたに事前に了解なんか得なくたっていいのよ(そりゃそうだけど)、パパもね落ち着いたら自分で引っ越し先見つけるって言ってたから、ほんの数カ月の間だけだからいいわよね、たまには父娘水入らずも(そんな勝手な)。    
 じゃあ、そういうことで。今お客さまが来てて忙しいから切るわよ。」

 その「お客さま」が誰だったのか。
あのときには想像もつかなかったことだが、今の私になら分かる。
 よりによって、その男が彼だったなんて。
 パパはギターを弾かない。だけど何時だって馬鹿正直なパパの手にはギターがあると連想できる。
 私は椅子に掛けながら、ギターの頭を触った。少しゆらしてみる。ボディの空洞。真っ黒い穴。おもむろに持ち上げ、私だって弾きもしないのに、足を組んで構えてみる。肘を載せるといい高さ。爪ではじいた弦のチューニングはばらばらだ。
 今度は膝の上にギターを立てかけ、正面から見ようとする。
 からん
 乾いた音が暗い穴の中からした。大事なものとは知っていながら、ボディを掴んで振ってみた。
 かた、からん
 こと
 中に何か入っている。
「ピックっていって、ギターを弾くときに使う三角のプラスチック。ママの落し物。」
 ドアにもたれて淡々とパパは言った。
「他にもいろいろ。」
「いろいろ?」
 見つ返したが、パパの五十幾つかの歴史を語る白髪が居た堪れなくてギターに、自然に見えるように視線をおとす。
「二十歳の僕の駅前、落書きだらけの楽屋、パリ、もちろん空港。友達の声、お前が叱られて泣いた日の蝉の声。」
 私はのん気な初老のパパに微笑んだ。
「なにそれ。」
 パパは大真面目に、だけど微笑んで言う。
「ギターはね、音楽を聴くんだ。バッハを聞かせばそりゃいい音を出すし、永い間ケースに閉じ込めてりゃ、機嫌を損ねていやな音をだす。」
 疑ってるね?とパパ、私はうなずく。
「今夜は特別に。」
 パパは私からギターを取り上げると、十分。そう、猫舌な私が入れたてのしょうが湯を飲み干す十分の間にチューニングを済ましてしまった。ど、れ、み。的確な音が鳴る。パパが私を見て穏やかに告げるへんてこなタイトル。
「パパよりのっぽの彼氏が出来た日の娘の鼻歌。」
 そういって、大きく息を吸って演奏を始めた。
 それはうまいなんてもんではなかった。
 パパは今頃も、そうしてギターを弾いているのだろか。
 「パパより若い男と結婚する日の元妻の歌」なんてものを奏でているのだろうか。
 何だか急に、パパが哀れに思えてきた。
 パパはいつだってやさしい。パパが声を荒げているのを私は見たことがない。パパにだって悔しいことや悲しいことの一つや二つ、あったに違いないけれど、いつだってそれを胸に押しとどめて周囲を和ませてきた。
 でもね、パパ。悔しいときは悔しいって大きな声で言ってもいいんだよ。悲しいときは悲しいって、思い切り泣けばいいんだよ。そう私に教えてくれたのはパパなのに。何も語らず、ただ寂しげな様子で過ごすパパに、私は最近ちょっとイラッとしていた。
 いつだって家族を思ってたこと、もっとはやく気付いていればよかった。イライラするのだって、家族がいるから。
 気付けなかったのは、近すぎるパパとの距離のせいじゃないし、私たちから逃げようとするママのせいでもない。大きな声も出さず、泣き喚きもしない自分のせいでもない。この世界は、私の言葉や考えでは手のとどかないものが沢山ある。知らないことも沢山ある。
 きっとパパもママも私には手の届かないところで、離婚届けに印鑑捺したんだと思う。ダメ男になっちゃったパパに、私、いつまでもママとの詳しい話を聞き出せなかった。いたわりややさしさじゃない。何を言ってもパパには言い含められるだろうし、新婚のママには聞けない。そう本気で思ってた。
 まるで子供。まさに子供。



 イライラとじめじめな気分。顔にも出てる。これじゃあ恋なんて出来やしないね。嘯いて溜息する間に、かすかに期待はしていた。自分が内へ内へと篭るほど、少年の前では強気になれたから。優越感。高校生に。掃除しか仕事の出来ないがきんちょに。
(あんたには手の届かない問題に私は直面してるんだ。)なんて!
 その子の休みは火曜と日曜。名前はりーな。クリーナーのリーナ。本名なんて知らない。  
「そうやってすぐ子供あつかいするんだね」

リーナはそうやってむくれる。
その態度そのものが子供だ。

確かに見た目は大人と言っていい。
長身の美男子でジャニーズ系だ。クラスではさぞモテモテだろう。
そして、年上の社会人の女性と関係を持っている。
そりゃあ、クラスの他の男子と比べて自分のことを大人だと思っても仕方がない。

あなたは私を恋人だと思ってるのでしょう。
でも違う。私はあなたの恋人ではないわ。
私は高校生と本気の恋愛なんてしている場合じゃない。
確かにあなたは今は本気かもしれない、でもそれは若いから。そのうちきっと他の恋愛に目覚めるに違いない。
そんなあなたに私は本気になるわけにはいかない。
リーナを拾ったのは、深夜のゲームセンターの片隅。懐いてくる子猫をあやす感覚で、何となく声をかけた。
あどけなくて端正な顔立ち、ちょっと可愛いなって。

誘ったらすぐに付いて来て、甘え声を出した。

大人たちに振り回されるのは、もう沢山だった。行動したいのに自分で自分を誤魔化す父親も、闇雲に突っ走る母親も……

だから、捨て猫リーナと、こうしている。
何度でも言うけど、恋なんて洒落た代物ではない。
あの日からリーナは火曜と日曜に私の家に来て、掃除・洗濯・料理など私の世話を焼くようになった。
だからクリーナーのリーナ。本名なんて知らない。知る必要はない。

正直に言う、だんだん自分の中でリーナの存在が大きくなってるのは確かだ。
でも本気になるわけにはいかない。恋に進むわけにはいかない。

あの子は今大人の女と付き合ってる自分に酔っているだけ。
いつか夢から覚める日が来る。
そしていつの日か私は捨てられる、パパのように。

これ以上はいけない、そう私は感じていた。
それでも、リーナと過ごす安息の日々から抜けられない自分がいた。
けれど、そう、きっと私は惰性の心地よさに、あたたかいお風呂に入るように漬かってしまっただけ。そして慣れてしまっただけ。
今なら、この安寧を捨てても、しばらくは淋しいけれどじきに慣れるわ。リーナを拾う前の私に、戻るだけの話。




「あ、それはだめよ。いいの、置いておいてちょうだい。」

リーナは掃除の手を止めて振り返った。
テーブルの上に無造作に置いてある封筒に、伸ばした手を引っ込める。
今まで私がリーナの作業に口を挟むことなんてなかった。下着を片付けられたって平気だった。
その私が。

「・・・大事なもの?」

「言うほどのものでもないけど・・・」

私はつっとそれに指を這わせる。
さりげなく、けれど愛しさがにじみ出るような仕草で。

「やっと手紙を寄越したと思ったら、今度の休みにこっちに来ないか、なんて・・・勝手よね。」

リーナの表情が少し変わるのが分かった。
「誰?前の彼氏?」

直球。
前の彼氏ってことは、今の私の彼氏は自分だと思ってるってことだ。

「それ捨てるよ。渡して」

リーナは私から手紙を奪おうとする。

「・・・捨てる?どうして?」

「ど、どうしてって、今、彼氏がいるのにそんな手紙をとっておくなんて」

「・・・彼氏がいる?・・・誰のこと?」



私はリーナの目を見ることが出来ない。
リーナはまっすぐ私の目を見つめる。
「誰って・・・今、ここにいるボクは君のなんなの?」

答えてしまったら全てが終わる。だって、私はあなたに大人の彼女がいることも
しってるんだから。

この安寧を今すぐに捨てる必要はない、私はそう思った。
決してリーナを愛しているわけではないと、自分に言い聞かせながら。

「っていうかね、なんか勘違いしてない?その手紙パパからだから」
リーナの顔色が一瞬変わった

けど

すぐにいつもの穏やかな表情で微笑んで私の手を握りしめ
 
『そっか‥勘違いしてごめんね。ちょっとヤキモチやいちゃった』

そう言った

パパの話を詳しく聞こうともしないし、手紙を取り上げるわけでもなく

リーナは床掃除を始めた

リーナ
私のこと
知りたくないの?

私は
リーナのこと
リーナのもう1人の大人の女のこと

本当は気になってるよ


胸がちょっと痛くなったけど

追及することも出来なくて

黙り込んだ

その時

リーナが言った

『ねえ。俺のこと、好き?』
「え…?」

突然のリーナの問い。
私は小さく言葉を漏らしして又思わず黙り込んでしまった。

又黙り込む私にリーナはじれったくなったのか一歩、一歩と私の方に近付く。

そしてリーナは再度私に声を掛ける。



「ねぇ…俺の事、好き?」

「うん、好きだよ。」



嘘だった。

本当はリーナの事を愛しても居ないのに、好きだ何て有り得ない。

それでも、私は心の何処かでこの関係を保ちたいと思ってしまった。
そんな私の思いとは裏腹に

「そっか。よかった」

嬉しそうに微笑むリーナ

少し胸が痛んだ


でも

私の精神状態を保つのにはアナタが必要なの

ごめんね……リーナ。


その時

♪ピンポーン♪

玄関のチャイムが鳴る

玄関へ行き
ドアを開けると

そこには見知らぬ女性が立っていた

「トモヤここにいる?」

不機嫌そうにその女性は私に言い放った

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