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白粉花(おしろいばな)コミュの弁財天 8

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通信兵として国境で迎えた冬の寒さは尋常ではなく、
北海道育ちの彼さへ時には恐ろしくなるほど だった。
兵舎の中に居る限りはオンドルという床暖房装置があるので
快適そのものだが、その快適さが外の過酷さを一層際立たせる。
その冬の最低気温は47度であった。だれも零下など付けはしない。

そんな時も国境警備の軍隊である以上、定時の見回りを投げ出す
訳にはゆかない。3人一組で馬を連ねて行く。
馬は嫌がる素振りも見せず文字通り凍てつく大地を歩いて行く。
ほんの時たま、まるで棒が立っているような木が生えている以外は
見渡す限り何も無い大平原 。雪は積もっていない。
大気に雪を作る水分が無いのだろう。降った時もよく乾いた粉雪は
風に流され地面の上を宛もなく滑り何処かへ消える。
正確にはどこかへ吹き溜まる。

空の高見から俯瞰出来たなら、雪の吹き溜まりが作る長い帯が
東西に走り、その南に日本の、北にソビエトの軍隊が正対しないよう
位置をずらしながらほぼ等間隔に陣取っているのが見て取れるだろう。
ソビエトは8月までは交戦相手ではなかったのだから敵ではない。
限りなく敵に近い国との間ではそれなりの配慮が必要であった。

日本兵のだれもが驚いたのはソビエト兵の装備だ。遠目からも
その軽装は見て取れた。ある日などは数人が上半身裸で腕をグルグル
回したり飛び跳ねたりしていた。やつらはウオトカという強い酒を昼間から
飲んで寒さも分からないのだ、とここに長い堅物の古参兵が
吐き捨てるように言ったが満はぞっとした。
眺める自分達はといえば眼以外は毛皮に幾重にもくるまれまるで
茶色いダルマだ。銃を背負いはしているが二重の手袋で扱えるはずもない。
睫は凍り瞬きもままならない。戦う前から勝負はついているのだ。

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