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語ろう!フライフィッシング。コミュの「ハポンの鱒釣りおたんこなす」(連載1/n)

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「ハポンの鱒釣りおたんこなす」(連載1/n)

娼婦の館のような、場末の路地裏で開店しているその古本屋の店頭ワゴンにあった100円の本、「リチャード・ブローティガン著 『アメリカの鱒釣り』:藤本和子訳」は久しぶりに俺のこころを揺さぶった。

“Trout Fishing in America” by Richard Brautigan

先日ご紹介した(『アメリカの鱒釣り』、100円。「本は性(セックス)である)」)ように、それは散文詩のような幻想的な47章からなっている。
小説嫌いな俺をなにがこの本は魅了させるのだろう?
それはきっと翻訳者である「藤本和子」の心象と資質にあるのではないかとおもっていた。
ああ、この『アメリカの鱒釣り』を訳したのが女であって良かったなあ〜って。

なかでも「アメリカの鱒釣りちんちくりん」というのがおもしろい。『語源はどんなだろう?』とおもって調べてみたら、それは「Trout Fishing in America Shorty」であった。このShortyを単に“小さい”ではなく「ちんちくりん」と訳したところに“おんな”がいる、“藤本和子”がいるっておもえる。この訳者がもし男ならこうはならなかったかもしれない。

しかし、リチャード・ブローティガンがなぜ「アメリカの鱒釣りちんちくりん」(Trout Fishing in America Shorty)としたかはわからない。
例えばこの「Shorty」をundersizedとかdwarfishとしてもいいのではないか。とりわけ“いじけた”という感触がある「dwarfish」の方がいいかもしれない、いやまてよ、リチャード・ブローティガンはもしかしてShortyにその雰囲気を込めているのではないか。しかしまあ、“おんな”である藤本和子のこの「ちんちくりん」と訳したのには畏れ入るし、同時に吹き出してしまった。

俺も釣り師(フライフィッシャー)で、モンタナ周辺の川やクリークに遊んだ頃がある。
そのとき俺は敗戦国である「ハポンの鱒釣りおたんこなす」である。この「おたんこなす*」は俗説では“おちんちんが小さい”といった意味もあり、「ちんちくりん」もまた同様な意味をもつ。またそれは“いじけた”といったふうにもみえるから、リチャード・ブローティガンが生きたそのアメリカの時代をいい表しているのかもしれない。

ネットであれやこれやを調べていたら、素晴らしい読書感想に出会った。

それは、はてなブログの「Ryo」さんのものである。
それでおもわずコメントした。

『素晴らしい!ぼくは「ハポンの鱒釣りおたんこなす」です・・・・・』

きっと笑ってくれることを期待して、あまりにも素晴らしいRyoさんのこの「リチャード・ブローティガン著『アメリカの鱒釣り』:藤本和子訳」の書評の一部を無断転載しよう。

【アメリカの鱒釣りちんちくりん  Trout Fishing in America Shorty

『アメリカの鱒釣り』は散文詩のような47の断片で成り立っている。「わたし」は妻の「かの女」と娘の「あかんぼ」とアメリカ西部をキャンプして回っている。子供のころの回想やサン・フランシスコでの出来事がその支流に流れている。sheを彼女ではなく「かの女」、babyを赤ちゃんではなく「あかんぼ」と訳すのには脱帽するしかない。

この本と作家にもいろんなところからぶち当たった。藤本和子による本書の邦訳刊行は翻訳史上の革命的事件であり、これがなければ村上春樹の作品の存在も考えられないと柴田元幸が書いていた。

1984年9月16日、『アメリカの鱒釣り』の表紙の男は頭に44マグナム弾をぶち込んで自殺した。アメリカン・フット・ボールの中継中に隣人が銃声を聴いた。調べてみると、その日曜日には確かにNFLの試合が行われていた。偶然にも僕が生まれた日の出来事だ。時差を考慮すると、この男と半日ほどはいっしょに過ごしたことになる。

最初は文章の雰囲気について行くのがやっとだった。<アメリカの鱒釣り>と文通をしてみたり、屋外便所に話しかけられた妄想をして「くたばりやがれ」と言い返したり、<アメリカの鱒釣り>が美食家でマリア・カラスとディナーをしたらどんなレシピがふさわしいかが書いてあるのだ。

“Sea Sea Rider”あたりから心地よくなってきた。古本屋でビリー・ザ・キッドの伝記を読んでいたはずが、店主にすすめられて知らない女と寝るはめになる。「ロールス・ロイス三千八百五十九台持ってるくらい」金持ちだという男の女と。一分になると、何だか気恥ずかしくなるような、永遠の五十九秒目を感じながら。

鱒にポート・ワインを飲ませ、自然の秩序に反する”ポルトワインによる鱒死(ますじに)”が起これば、バイロン卿の検屍報告書が<アメリカの鱒釣り>のためのものになった。小学六年生の”アメリカの鱒釣りテロリスト”たちが一年生の背中にアメリカの鱒釣りと書けば、校長先生は六年生用E=Mc2*1を使って彼らを黙らせた。

“ワースウィック温泉”で湯のなかにいってしまう描写は鱒の放精へのオマージュなのだろうか。何かの漫画(稲中かと思ったけどいくら検索しても出てこない)に鮭の放精の話が出てきたことを思い出した。

ここで登場するのが<アメリカの鱒釣りちんちくりん>*2だ。shortyの訳なんてふつう「チビ」しか思いつかないだろうに、「ちんちくりん」だなんて。鱒に噛み切られて脚がない*3アル中のホームレスの話。

『荒野を歩め』*4『ネオンの荒野』*5の著者ネルソン・オルグレンは<鉄道ちんちくりん>*6についていつも書いていて、保護者として最適だから<アメリカの鱒釣りちんちくりん>を送ることにしたのだ。その荷札を書くならこうなる。

内容物:アメリカの鱒釣りちんちくりん
職業:アル中
宛先:シカゴ ネルソン・オルグレン気付

そうして梱包用の木枠の外側に、ステッカーを貼りまくる。ガラス/取り扱い注意/要注意/ガラス/こぼすな/天地無用/このアル中、天使の如く扱うべし。

そんな計画を友人と話していたら大雨になり、<アメリカの鱒釣りちんちくりん>はフィリピン人が経営するコインランドリーで気絶していた。脳味噌を洗ってもらっている*7うちにいつしか眠ってしまったらしい。

あれやこれやで発送を延期しているうちに、彼は姿を消した。ブタ箱か精神病院にでも放り込まれたのだろう。彼がこの街に帰ってきて死ぬようなことがあれば「わたし」には考えがある。ワシントン広場のベンジャミン・フランクリン像の隣に彼を埋葬して、その土台に車椅子をしっかりつなぎとめ、石の上にこう刻む。】

うーむ、素晴らしい!

モンタナのある釣り街のあるモーテルに滞在して釣り三昧をして、バーボンをがぶ飲みしていたある夜に、ドアがいやらしくノックされた。入って来たのは「アメリカの鱒釣りイタ娘妹」であった。
「ハポンの鱒釣りおたんこなす」である俺はそのとき、俄かに「ハポンの鱒釣りゴーヤ」になるのだった。鱒釣りよりも激しい“たたかい”がはじまった。肌の色は白かった。“たたかい”はえんえん57分28秒つづいた。そして俺は釣られた鱒のようにまたもとの「・・・・・おたんこなす」になるのだったが、その「アメリカの鱒釣りイタ娘妹」はまだ許さなかった。また「・・・・・おたんこなす」を口に頬張るのであった。そうするとまた俺はまた「・・・・・ゴーヤ」になるのであった。
――それは3回繰り返されたーー。
夜が明けてくる頃、「アメリカの鱒釣りイタ娘妹」は何かをいい残して鱒の体操よろしくご機嫌で街に消えた。きっとこういったのかもしれない。

「Era molto buona (Era buonissima).」 エラ ブォナ (エラ ブォニッシマ)、美味しかったわ、「Ritornero' ancora.」 リトルネロ アンコーラ、また来るねって。

二日後、再びドアがノックされた。
「ハポンの鱒釣りおたんこなす」である俺はそのとき、ふたたび俄かに「ハポンの鱒釣りゴーヤ」になるのだった。鱒釣りよりも激しい“たたかい”がふたたびはじまった。肌の色は白かった。“たたかい”はえんえん47分36秒つづいた。そして俺は釣られた鱒のようにまたもとの「・・・・・おたんこなす」になるのだったが、その「アメリカの鱒釣りイタ娘妹」はけっして許さなかった。また「・・・・・おたんこなす」を口に頬張るのであった。であった。そうするとまた俺は「・・・・・ゴーヤ」になるのであった。
――それは3回繰り返されたーー。
しかし、俺は途中で気が付いていたのだが、それは双子のようにそっくりな「アメリカの鱒釣りイタ娘姉」だった。やや作法が違っていた。そして「Torno più tardi .」、後でまた来ます、といって、鱒の体操よろしくご機嫌で夜明けに消えた。

こうして「ハポンの鱒釣りおたんこなす」は姉妹に凌辱されたのだ・・・。

実は俺こと「ハポンの鱒釣りおたんこなす」は、釣り具と絵を売る店の画商のような、戦勝国を象徴するような、気丈な「アメリカの鱒釣りそばかすをんな」を狙っていた。――しずかではあったが気高くライズしていた。それは無視の軽蔑の貌に顕れていた――

このアメ公をんなはハポンの釣り師を鼻で嗤っていたが、背も高くべっぴんさんだった。店にいってもニコリともしない。それが気に食わなかったのだが、毎日顔を逢すと、しだいに俺は卑屈になっていった。

――クソッ、何が何でもこのをんなを凌辱しなければくにに帰れない、天皇陛下に申し訳ないーー

ある夜、ドアが蹴っ飛ばされた。
蹴破って入ってきたのは、ショットガンはもっていなかったが、そのアメ公をんなだった。

『Could I ...?』

しかし、アメ公をんなは無言で行儀よくシャワーを浴びてから、すでに「ハポンの鱒釣りゴーヤ」になっていたそのゴーヤにやさしく触れて咥えた。俺は熊に咥えられた鱒のようにじたばたしていたが、若い「アメリカの鱒釣りイタ姉妹」よりはずっと歳が上だったせいか、やさしかった、淑女であった。
おもったよりも痩せていたが、気品はあった。そして化粧がはがれたその肌はそばかすだらけでやや肉臭かった。

――そして、「それは」、それ以来、俺のトラウマとなったーー。

生粋の「アメリカの鱒釣りそばかすをんな」はなんと「ロシアの鱒釣りバイカル」だった。“たたかい”というよりも、むしろ敗戦国である「ハポンの鱒釣りおたんこなす」を慰撫するようにやさしかった。乳房は想像したよりも大きくはなかったがかたちがよかった。そして無抵抗の「・・・・・ゴーヤ」が引き入れられたその先はたしかにかたちのいい「バイカル湖*」であった。
俺は“鱒の放精”のように興奮してから「・・・・・おたんこなす」になったのだが、「アメリカの鱒釣りそばかすをんな」は、それをバイカル湖に深く沈めて、しばらく何か考え込んでいたようだった。
37分59秒、俺は深く眠った。

『That's wonderful!』、『It was well known』としずかにいい残したそれは思想のことばに聴こえた。

けっして「dwarfish」とはいわなかった。

(つづく)

「予定」

■ ロシアの鱒釣りバイカル
■ シベリヤの鱒釣り石原吉郎サンチョパンサの帰郷「毒蚊」
■ アメリカの鱒釣り傷だらけのニューヨーカーの逆襲
■ カナダの鱒釣りぶすをんな
■ カナダの鱒釣りラブラドライト
■ オーストラリアの鱒釣りマッシュルームスープ
■ 中国の鱒釣り広東省をんな
■ タイの鱒釣りパタヤビーチの牡蠣
■ フィリピンの鱒釣りのろま牛
■ ミンダナオの鱒釣りゴリラをんな
■ フィリピンの鱒釣りケソンシティーから来た元女優
■ スペインアンダルシアの鱒釣り風来坊
■ アンダルシアの鱒釣りカンペロスーツを着た釣り師
■ 約束の鱒釣りアンダルシアからモロッコに消える恋
■ フラメンコの鱒釣り俺のPalillos/パリージョス、オレー!
■ フラメンコの鱒釣りカンタオーラの招待
■ フラメンコの鱒釣りセビジャーナス (Sevillanas)
■ フラメンコの鱒釣りソレア (Solea)とシギリージャ (Siguiriya)
■ スペインの鱒釣り隙間で生きたアナーキスト釣り師
■ 俺を訪ねた栃木の鱒釣りアナーキストタトゥー(刺青)の釣り師
■ 虐殺の鱒釣りロマ(ジプシー)への嫉妬と迫害
■ 虐殺の鱒釣り「カティンの森の虐殺」
■ グラナダの鱒釣り詩人ロルカと射殺
■ ロシアの鱒釣り民衆詩人エセーニンの死の謎
■ ロシアの鱒釣り破綻した革命とレーニン
■ 哲学としての釣り師キルケゴールとニーチェ
■ フランスの鱒釣り男装のシモーヌ・ヴェイユ
■ ドイツの鱒釣り惨殺のローザ・ルクセンブルクの恋
■ スコットランドの鱒釣り分離独立派ショーン・コネリー
■ モンタナの鱒釣りギャラティン・バレーの想い出
■ モンタナの鱒釣りインディアン部族の地
■ メキシコ周辺の鱒釣りルート66
■ リバーランズスルーイットの鱒釣りインディアンをんなとの恋
■ ジャズの鱒釣り「S Wonderful」とジョージ・ガーシュウィン
■ ジャズの鱒釣りDuke Ellington, "Take the A Train"
■ ジャズの鱒釣り現況のジャズ事情
■ コロンビアの鱒釣り全裸のショーダンサーと寝るはめ
■ ブラジルの鱒釣り日系三世ダメラとの恋
■ 低民の鱒釣りBBQ(バーベキュー)
■ 友との鱒釣りしずかなる星空とキャンプ
■ 俺の鱒釣り捨てられる運命
■ 天皇陛下の鱒釣りバンザーイ
■ 高次産業の鱒釣第六次産業
■ 資本主義の鱒釣りくにの解体
■ 消費としての鱒釣り価値の転換
■ 函館の鱒釣り波止場の二人のをんな
■ すすき野の鱒釣り5円スナックの釣り師マスター
■ 蒲田の鱒釣り店を潰した男
■ 朝鮮の鱒釣りリヤカーで果物を売るおっさん
■ 高齢化の鱒釣りセックスを辞めた意思
■ 杖をついた鱒釣り最後のゴーヤチャンプル
■ アメリカの鱒釣り悩める性とアメリカ
■ ほんとうの鱒釣りヤマメイワナ
■ ほんとうの鱒釣り静かなること林の如く
■ 東北の鱒釣りスーパ−ハッチ
■ 長万部の鱒釣りサクラマスを撃った釣り師
■ 九州の鱒釣りハマチを釣って送って贈ってくれた元新左翼〇〇派
■ ビジネスマンの鱒釣りアル中になった飲めない男
■ 四国の鱒釣り110円の讃岐うどん
■ 名古屋の鱒釣り蛆の湧いた飯と腐った豚ちゃんだけを食べた労働運動家
■ フライフィッシングの鱒釣り遥かなる川
■ 日本の鱒釣り公園化される川
■ 日本の鱒釣り退いていく風景と思想
■ 〜リチャード・ブローティガンに捧ぐ〜

註:この文章は、失われていく感性を取り戻す意味で、俗語、差別語、侮蔑語を極力駆使しています。はじめにお断りしておきます。

*『おたんこなす』の解説

おたんこなすとは間抜けな人や鈍間(のろま)な人を罵る言葉である。おたんこなすは同義語『おたんちん』からきた言葉で『ちん(男性の生殖器官のこと)』の部分を『小茄子』に例えたという説があるが『おたんちん』の語源自体が定かでないため断定は出来ない。また、おたんこなすは「炭鉱の茄子」の略で、灰をかぶった炭鉱エリアの茄子は売り物にならないことから先述のような意味になったという説もある。こちらも確たる出所がわかっていないため断定は出来ない。

*バイカル湖

バイカル湖は、ロシア南東部のシベリア連邦管区のブリヤート共和国とイルクーツク州・チタ州に挟まれた三日月型の湖である。「シベリアの真珠」とも、ガラパゴス諸島と並ぶ「生物進化の博物館」とも称される。(ウィキペディア)
平均水深: 744 m 面積: 31,720 km² 最大長: 636 km 主な島: オリホン島
生息魚: オームリ、 バイカルチョウザメ、 キタカワヒメマス
周辺都市: イルクーツク

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