ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

語ろう!フライフィッシング。コミュの『アメリカの鱒釣り』、100円。「本は性(セックス)である)」

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
『アメリカの鱒釣り』、100円。「本は性(セックス)である)」

«掘立小屋からちょっとのぼったところに屋外便所があった。扉がもぎとられそうな格好で開いていた。便所の内部が人間の顔のように露わになっていた。便所はこういっているようだった――「おれを建ててくれたやつはここで九千七百四十五回糞をしたが、もう死んでしまった。おれとしては、いまはもうだれにも使ってほしくないよ。いいやつだったぜ。ずいぶんと気を使って、おれを建ててくれたんだ。おれはいまは亡きおケツの記念碑さ。この便所には匿さなくちゃならんような秘密などないよ。だからこそ扉があいてるんじゃないか。糞をしたけりゃ、鹿みたいに、そこいらの茂みでやってくれよな」
「くたばりやがれ」と、わたしは便所にいってやった。»

(〜リチャード ブローティガン、『アメリカの鱒釣り』:晶文社、「赤い唇」の頁から〜)


杖を突いてバス停でバスを待ち、日陰になる椅子に座り、ちょっときつめの冷房を白い禿げ頭に受けて、暫らくすると着くのが「その俺の街」だ。
家族に捨てられ、独りの引っ越しに引っ越しを重ねても、「その俺の街」は執拗に追ってくる。
まるで「俺の女」のようだ。かれこれ25年にもなる。

「その俺の街」に行くのは、なにも歯科医院の「ユニット1」という拷問室で快楽を受けるためでもなく、飲み屋で出自の不明なまずい鳥を喰うためでもなく、ましてや梅雨のようにじめじめした膣を求めるためでもない。
ほとんど腐った食材をこまめに買わないといけないからだ。

まとめ買いをすると、人口の腰骨が身体を破って飛び出し、また救急車で病院に運ばれるからなのだ。

まあ、それもいいのかもしれない。
だって、あの南国の看護師のいたわりに逢えるかもしれないからだ。
俺の“かたち”としての睾丸からちょっと付いている軟棒をひょいとつまんでチューブを娼婦のように慣れた手つきで嵌めてくれる。もしくは、椅子車で運んだ風呂で母親のように身体を洗ってくれる。

少し歩くと、あの忌々しい古本屋チェーンがある。

(――陰気くさい書斎をむかしに娘の強要ですべて売り払ったのだ。きっと娘は俺の匂いと排泄物のような本の匂いが嫌だったのだーー)

この店に入るとたちまち腹痛をおこす。
それで決まって、その並びのスーパーの3階のトイレに駆け込むこととなる。
その後、1階のラウンド椅子に座る。
子供や老人らのなかに座っているのは、たしかに「廃人としての俺」だ。

歯科医院の「ユニット1」という拷問室の対面に“ちいさな古本屋”が気の毒そうに、諦めたように待っている。まるで客がとれなかった娼婦のように。

その日は、「ユニット1」で拷問を快楽した後に、下の100均ショップで培養土や植木鉢を買った。
なぜかというと、独りの引っ越しのとき友がくれた曲り竹が6年も“ただ生存していて”ちっとも大きくならないから、水瓶から土に埋めてやろうとおもったのだ。

(――人は“生きる”ことと「生存」の区別がつかなくなっている、鱒以下だーー)

たくさん残った培養土を植木鉢に移して、むかし保険会社から貰ったけち臭い«ひまわりの種»を埋めて水をかけてやった。その«ひまわりの種»が入った色褪せた小袋には「乙女の純潔」とあった。
俺はおもった。

『そうか、乙女でないをんなはもはや純潔ではないんだ・・・。だから「その俺の街」は異様に臭いのか・・・・・』

それからウヰスキーと卵と葱を買い、その娼婦館のような“ちいさな古本屋”に寄った。
あったぜー!
俺が読みたかった本がだ。入り口のワゴンにあったその本はすべて100円だった。
なんでも、その娼婦館、いや“ちいさな古本屋”は近くの古本屋チェーンにはない本を取り揃えているとのことで、思想や哲学書がやたら多かった。なるほど、競合を避けているのか。
4冊でやめた。
もう重くって、人口の腰骨が身体を破って飛び出しそうだたが、駅まで“いざって”いった。

それで、いつもの「俺のおとこ」のような飲み屋で、酒をたらふく飲みながら、出自の不明なまずい鳥を喰って、俺はをんなの乳房に触れるようにその4冊をまさぐった。

(――そのしあわせったら、あの俺の初恋のエリカのようだ。エリカは処女だった。俺はその「乙女の純潔」を奪ったあげく、俺の密使として独逸のある党派を内部から破壊しろと命じたのだ。「乙女の純潔」は微笑んでそれを受けた。それから俺は破壊者として牢獄に繋がれたのだ。あれは21〜26歳のときだったーー)

泥酔して、単独者の陸の孤島の「俺の部屋」に這いずって、俺のベッドのほとんど崩れた布団に倒れこんで、その4冊を「俺の女」のごとく抱きしめて昏睡した。

(――朝方、エリカとピレネー山脈を越えてアンダルシアに向かう夢をみた。そうなのだ。エリカの父はドイツ人で、あのときスペインにコミンテルンの義勇兵として赴いたのだ。俺はコミンテルンの者を射殺した。それから俺はピレネー山脈を頂く川で川鱒を釣ったのだーー)
(――エリカはこういった。『ふたりに何があってもアンダルシアで逢いましょう、約束してね、「ふたりのプロミス」を』。俺はちいさく頷いた。あれはたしか多摩川の草いきれのなかだった。以来「約束の地アンダルシア」となったのだ――)

買った本はあえてあげれば以下のものであった。
そして、それらの古本の最安値価格を卑しくもネットで調べてみた。

◆「ルカーチとハイデガー」新しい哲学のために:リュシアン・ゴルドマン 川俣晃訳、
叢書・ウニベルシタス  (¥1,000)
◆「ユング 分析心理学」:小川捷之訳 みすず書房 (¥1,500)
◆「島尾敏夫作品集5」:晶文社 (¥350)
◆「アメリカの鱒釣り」:リチャード ブローティガン 藤本和子訳、晶文社 (¥300)

つまり、古書ネット通販で買っても3,150円(送料除く)かかるものを、俺は400円で手にして駅に“いざって”いったのだ。
あの太っちょの白いカーネル・サンダースをすこし蹴飛ばして、側の灰皿を手にして気が利かない店員に注文する。

『1ピースとお水を下さい』
『店内でお召し上がりですか?』

俺は絶対応えない。
灰皿を手にしているんだから店内に決まっているだろうよ。それにしょっちゅう来ているんだからわかっているはずだ。常連客を無視するのがこのファーストフード店の戦術である(それはスタッフをいつでも交換させるためである)。
クソッタレ第三次産業めーー。

(――KFCでは、揚げ油に保存性の良いショートニングを使用してきた。ショートニングに多く含まれるトランス脂肪酸は人体に有害であるという世論の高まりから、KFC社は米国などで消費者団体から提訴されており、2006年10月30日、米国本社は2007年4月までに北米でのショートニングの使用を取りやめると発表した[6]。米国本社でさまざまな代替品を検討した結果、遺伝子組み換えの低リノール酸大豆油が本来の味覚にもっとも近いということで採用される見通しである。以前、この俺にここの幹部は適切な物流指南を申し込んできたのだが・・・・・――)

パラパラとめくってみる。

(――二日酔いで頭が痛いぜ、まるで釣られた鱒のようだーー)

可笑しいのは、「ルカーチとハイデガー」の三分の一の頁には執拗に傍線や赤点がうってあるのだが、それ以降は読んでいない様子。これは二番目に読もう(これは鱒釣りよりも楽勝だなあ〜っておもう)。「ユング 分析心理学」は最後にしよう。そして俺をむかしさんざん痛めつけた「死の棘」の島尾敏夫は二番目に廻そう。

それで最初にあがったのが、「アメリカの鱒釣り」である。
表紙の写真を観て、おれは眼を疑った。
そこには冒頭の『アメリカの鱒釣り』の表紙、にもあるが、「1706年に生まれー1790年に死んだベンジャミン・フランクリンは、内部に石の家具を備えた家のような台座の上に立っている。片方の手に数枚の紙幣、もう片手に帽子をもって。」、その傍にリチャード ブローティガンと奥さんらしき女性が佇んでいる。

これに驚いたのである。
「廃人である俺」をいつもいたわってくれる釣友であり親友にまずそっくりであり、またその奥さんもそっくりなのだ。

ジーンズに柄のシャツ、縦縞のベストに黒い半コート、それに(文中にも出てくるが、おそらくこれを指したとおもわれる)白い三角帽子を被って髭を蓄えたリチャード ブローティガン。
黒い長靴に白いロングスカート、おそらく黒いセーターの上に着込んだ四つボタン(おそらく五つボタン)の半コート、頭には(なんいうのかなあ)白い刺繍のラウンジリボン?の奥さん。
季節は秋だろうか?
もう、雰囲気もそっくりだ(添付写真参照)。

そして冒頭に掲げた文章でもわかるが、突飛な発想と幻想的な文体はグイグイと俺を引き摺り込んでいく。
文章内のタイトルにもそれは伺われる。

【内容】

『アメリカの鱒釣り』の表紙      
木を叩いて その1  木を叩いて その2 赤い唇  クールエイド中毒者  胡桃ケチャップのいっぷう変ったつくりかた  グライダー・クリーク プロローグ グライダー・クリーク  <アメリカの鱒釣り>のためのバレエ  アル中たちのウォルデン池  
トム・マーティン・クリーク  墓場の鱒釣り  Sea, Sea Rider  ヘイマン・クリークに鱒がのぼってきた最後の年のこと  ポルトワインによる鱒死  <アメリカの鱒釣り>検屍解剖報告 メッセージ  アメリカの鱒釣りテロリスト  FBIと<アメリカの鱒釣り>  ワースウィック温泉  ネルソン・オルグレン宛<アメリカの鱒釣りちんちくりん>を送ること  十世紀の市長  パラダイス  カリガリ博士の実験室  ソルト・クリークのコヨーテ  せむし鱒  テディ・ルーズヴェルト悪ふざけ  「ネルソン・オルグレン宛<アメリカの鱒釣りちんちくりん>を送ること」に補足して  スタンレー盆地ではプディングで勝負  <アメリカの鱒釣りホテル>二〇八号室  外科医  目下アメリカ全土で大流行のキャンプ熱について一言  本書の表紙への帰還  ジョセファス湖の日々  永劫通りの鱒釣り  タオル  砂場からジョン・ディリンジャーを引くとなにが残る?  <アメリカの鱒釣り>と最後に会ったときのこと  カリフォルニアの未開地で
<アメリカの鱒釣りちんちくりん>に関する最終記  アメリカの鱒釣り平和行進に関す
る証言 <赤い唇>への脚注章  クリーヴランド建造物取壊し会社  レオナルド・
ダ・ヴィンチ讃歌うたう日曜日の半日  アメリカの鱒釣りペン先  マヨネーズの章へ
のプレリュード  マヨネーズの章                  

まあ、ざっとこんなものだが、その内容のタイトルだけでもおもしろそうではないか。

釣友とはよく釣りに行った。
山梨、長野、栃木、秋田などの東北。とくに東北ではスーパーハッチに遭遇して大釣りをした。そしてその後、ふたりで静かで素朴なキャンプをして、ランプの灯りのなかでゆっくりと話をして、星空を仰いだものだ。

最近、1週間でA4サイズで118ページ書いて、その一部を釣友であり親友に送った。中身はたいしたものではないのだが、とにかく«あたらしいビジネス創出»のためのものであり、まずかんたんに『矛盾(解決における一考察)』からはじまり、『高次産業とはなにか』、『第六次産業とはなにか』、『現在の資本主義はどうなっているか』、『現在とはなにか』というもので、友人はきっと笑ったにちがいない。
その一方で、「廃人としての俺は」、«理想と現実のいわば同義性»とか«分裂する現実»といった内容のものを書き留めていた。

俺は、この『アメリカの鱒釣り』を食い入るように読んでいたとき、また錯覚があらわれた。

『本とは性(セックス)である』と。

本嫌いで、“でき損ない”で「排泄物である俺」はいたたまれなくなって、その後3件で酒をあおり、正体不明になって、ママの娘に支えられて帰った。
翌日は昼過ぎに起きたが、とにかく体中が痛く、人工骨のあたり、肩、両腕、額に内出血があり、顔と指には出血の跡があり、たんこぶの上にまたたんこぶができていた。

鏡をみた。
そして自分におもった。

«「くたばりやがれ」と、俺は自分にいってやった。»

〜友に捧ぐ〜

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

語ろう!フライフィッシング。 更新情報

語ろう!フライフィッシング。のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。