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MmRコミュのMmR-5. Yura

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 他の大半のコテハンと同様、ゆらは困っていた。実に困っていた。
 地図を見ながら歩き回ってみたところ、彼が目覚めたのはこの城の三階らしかった。
 元は城主の私室だったのだろうか、豪華な調度の置かれた広い部屋だ。もう長いこと人の手に触れていないのか机やベッドには埃が積もり、壁のタペストリはすっかり色あせてしまっていた。
 廊下に出ても、様子は同じだった。壁には絵画や花瓶が飾られ、架けられた松明が石造りの床を照らしている。しかし花瓶には花は挿されておらず、絵にも厚くクモの巣が張られ、既に人の手に触れていた痕跡すら見つけられない。
 全くといっていいほど、人の気配は感じられなかった。この城がどういった経緯で作られどういう理由で打ち捨てられたのかは分からないが、少なくとも廃墟になってから相当の年月が経っているのは確かだろう。不気味に静まり返った城内に自分の足音だけが反響し、吐息の音が通路の先の闇に吸い込まれていく。
 部屋という部屋、廊下という廊下に窓がないのも、この廃れた雰囲気を助長していた。
 地図で見る限り、ここは三階のはずだ。だというのに壁には明り取りの窓ひとつなく、視界は並べられた松明の薄暗い灯りに頼るしかない。石造りの壁にはところどころにコンクリートで塗り固められた跡があり、脱出できないように窓を塞いであるらしかった。
 ゆらの動きに合わせて空気が流れ、ゆらめく灯りが不気味な影をちらつかせる。壁に。床に。そして前方の暗闇に。そのたびにゆらは顔を強張らせて武器を向け、何もないと悟って冷や汗をぬぐう。
 しかし、出口がないのも明かりが乏しいのも、今の彼にとっては些細な問題だった。
 武器。
 暗闇におびえ反射的に構えてしまうたび、ゆらは複雑な表情でそれを見下ろした。
 角ばった無骨なボディ――ありていに言ってしまえば、カステラの箱のような。
 イングラムM11。重量約1.6kg。装弾数32発。射出速度は毎秒20発。最もポピュラーなサブマシンガンの一つだ。
 無論、銃器に明るくないゆらにはそこまでの詳細なスペックは分からない。が、これがサブマシンガンであることとデイパッグの中にはこいつの予備弾倉が入っていること、そしてこれが対人用の武器としては極めて高い威力を持っていることは分かる。
 ゆらも『プログラム』について無知なわけではない。『プログラム』参加者に配られる武器は剣やナイフといった手持ちの武器が多く、よくて拳銃が与えられる程度、と言うことぐらいは知っている。
 つまりこのサブマシンガンは確実に「当たり」であり――それもかなり上位の――全ての参加者の中で今、自分はほぼ最強に近い位置にいる、ということだ。
 だからこそ、困る。
 正直、彼はこのゲームに乗り気ではなかった。友達と殺し合いをするなんて。そんな、冗談じゃない。誰も殺しあうことなく平和的に合流し、脱出する道を探すべきだ。
 もちろん20人近いコテハンがいる以上、ひょっとしたらゲームに「乗る」人間も一人くらいはいるかも知れないが……それだって、残りの全員が協力して逃げ道を探すとなれば、考えを変えて仲間になってくれるだろう。
 ひょっとしたら、あくまで反発する人間がいるかも知れない。話し合いではなく、力と力のぶつかり合いがあるかも知れない。その時はその時だ。暴力的な事態になった時には、少なくともこの銃は心強い味方になってくれるはずだ。
 ただ、自衛のための武器と割り切るには、この銃は強過ぎた。
 勝てるんじゃないか。
 そんな思いが頭をかすめる。
 参加コテハンは全部で18人。自分を除けば17人だ。イングラムの弾数は本体に装填された32発と予備弾倉の32発、計64発。
 充分だ。全員を皆殺しにするのに充分すぎる武器と弾丸を、自分は持っている。そう考えると心はぐらつく。
 何をバカなことを。
 頭を振り、その思いを振り払う。
 自分に人が殺せるわけがない。そもそも銃なんて撃ったことないし。それに映画やアニメを見ていても、サブマシンガンが当たるところなんて見たことないじゃないか。
 でも、だからといってせっかくゲットしたこの武器をただぶら下げて歩くのももったいない。何か上手い使いようはないものか……。
 ……はっとして、ゆらは立ち止まった。
 足音だ。
 前方の曲がり角から。警戒しているのか、歩調は少しゆるい。それでも足音を忍ばせている様子がないのを見ると、こっちには気付いていないのだろうか。
 鼓動が早まる。軽くパニックになりそうな頭を必死で落ち着かせ、ゆらは考えをまとめた。
 よし、よし、落ち着け僕。まずは相手の出方を見るのが先だ――いや違う。相手が敵意を持っていたら? そして銃を持っていたら? 様子を見ている間に撃たれてエンドだ。それはまずい。じゃ先に撃つ? いやいやそうじゃない。向こうに戦う気がなかったらどうする。でも、だからと言って黙って様子を見るわけにもいかない。何とか出会い頭に主導権を握れば――
 足音を忍ばせ、ゆらは曲がり角に近付いた。息を殺し、イングラムの安全装置を外す。出会い頭に銃を突きつけ、一気に相手を怯ませる作戦だ。別に撃つ気はない。相手に戦意がなければ銃を下ろして話し合えばいいし、そうでなくてもサブマシンガンを突きつけられれば向こうも怯んでくれるだろう。
 向こうがあくまで戦う気であれば撃つのも仕方ない。とはいえこっちはサブマシンガン。相手が拳銃を持っていたとしても、構えて撃つ前にこっちが火を噴くのが早いだろう。とりあえず足を狙えるように、銃口をちょっと下げておく。
 足音が近付いた。角を曲がり、人影が姿を現す。銃を構え、ゆらは精一杯の大声で怒鳴りつけた。
「動くな! 撃つぞ!」
 声優の仕事で鍛えた太く重い声が、朗々と通路に反響する。びくりと身を強張らせ、相手が動きを止めた。
 ベローナだ。そうと気付くより早く、ゆらの目は彼の手元に釘付けになっていた。
 長銃身のショットガン。運悪く――まことに運悪く、彼はそれを持ちやすいように両手に持ち、腰だめにして歩いていたのだ。
 ショットガンとサブマシンガン。二つの銃口が至近距離から同時にお互いを捕らえ――
「うわあああああああぁっ!」
 悲鳴はどちらのものだったろうか。
 響き渡った銃声が悲鳴をかき消し、石壁に反響して闇に吸い込まれていった。


          【残り18人】

コメント(14)

<!いつまでもこのペースだと進まないので>
連張り。
連休中は更新できないしねー。
残り18人のままで全員の紹介終えるのかとばかり思ってましたよ。w
さて、どっちが死んだのか……。
生き残った方はいきなり銃ふたつですねぇ。
とうとう交戦キタ━━━━(´д`;)━━━━━!!
交戦開始どぁ!?( ̄□ ̄;)
いやーんコレからが蝶樹になる〜
まさにDEAD OE ALIVE・・・とりあえず綴りはあっていると思います(゜∀゜)
>るう様
「OR」じゃないですか?w
自信満々なのに速攻つっこまれてるるうさん萌えw
まあ、「E」と「R」はキーが隣同士ですから、
おそらくは単なる打ち間違いでしょうけどね。
間違えうる「DEAD」と「ALIVE」に注意を払うあまり、
他は間違いようがないと思って確認しなかっただけだと思います。
Σ( ̄□ ̄ )
最初どこがヘンなのか全くわかりませんでしたw
ティティスさんのおっしゃるとおりですww

ちなみに最初ALIVEをALAIVEと打ってしまったことはここだけのハナシです
これに気を取られちゃったんですね(´, _ `)ゝ

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