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MmRコミュのMmR-44. Kifuru

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 銃声が耳を貫き、傍らの壁に着弾の火花が散った。
 反射的に身がすくんだ。状況を把握する間もなく、傍らに立つすろぷろが手を伸ばし、身を突き飛ばす。
 直後、二発目の銃声。
 床に倒れ伏した頭上を、熱い鉛の塊が通り過ぎた。一拍遅れて、灼けた空気の匂いが鼻をつく。
 顔を上げた時にはもう、すろぷろが身を低く屈め部屋の中に飛び込んでいた。彼の背中越しに、部屋の中央で仁王立ちになるおりが目に入る。
 そして、彼女の足下で倒れ伏するうと、おりの手に握られている銃が。
 黒光りする銃口が動いた。疾駆するすろぷろに向け、おりはためらわずに引き金を引く。
 小さな銃口から、不釣り合いに大きな火線が噴き上がる。腕の動きを読んだのか、すろぷろは横飛びにはねて銃撃をかわす。流れ弾が近くの石壁に食い込み、樹古の頬に火花と破片を飛び散らす。
 おりがさらに狙いをしぼる。距離はまだ五メートルあまり。走る速度を落とさず、すろぷろが腕を一閃させる。
 ほとばしる銀光。身をひねり、おりは投げつけられたダガーを寸前でかわす。その隙に距離を詰めたすろぷろが、彼女の銃を蹴り上げる。
 発砲。
 銃撃は寸前で狙いをそらされ、すろぷろの頬をかすめた。裂けた肌から血がしぶき、千切れた髪の毛が宙を舞う。
 乾いた音を立てて、拳銃が床に転がった。丸腰になったおりに向け、すろぷろが獣のように躍りかかる。
 上体をそらし、おりはつかみかかる手をかわした。カウンターの蹴りがすろぷろの足を払う。巧みにバランスをくずされ、すろぷろは仰向けに床に叩きつけられる。
 その喉元に目掛け、おりの足刀が打ち下ろされた。
 とっさに横に転がり、すろぷろはギロチンのようなその打撃から逃れた。蹴撃が床を穿ち、打震が壁を震わせる。
 蹴り。蹴り。さらに蹴り。横転するすろぷろを追い、おりの足が何度も打ち下ろされる。狙いは正確に喉元や首筋。直撃すれば即死は免れない。
 数度目の足刀が、すろぷろの首筋をかすめた。着地したその隙を逃さず、すろぷろが足首につかみかかる。はじかれたように身を引き、おりが後ろに飛びすさる。
 流れるような動作で身を起こし、すろぷろも立ち上がった。蹴撃に備えガードを固めながら、おりと樹古の間に体を置く。
 間合いを取って向き合う二人。空気に緊迫が満ちる。
 つい数時間まで、談笑したり一緒にるうの手当をしたりしていたのに。先の見えないこの暗闇でやっと見つけた、安心して触れ合える仲だったのに。
 そのおりが。自分たちに牙を剥いている。るうを殺し、すろぷろを殺そうとしている。
 そしてその先には、もちろん自分も。
「……どうして」
 思考がマヒしてしまったようで、何も考えられなかった。そんな彼女を代弁するように、すろぷろがおりに問いかける。
「どうして、おりさんがこんなことを」
 すろぷろの声にも張りがなく、どこか虚ろな響きがあった。あ、すろぷろさんも同じだ、私と同じに混乱してるんだ。どうでもいいような、そんな思いが頭をよぎる。
 彼の言葉に、おりは口を開いて何か言いかけたようだった。少しためらったような表情を浮かべ、そして――ぎゅっと唇をかむ。
「……言いたくない」
 そうなんだ。まぁ、そんなこともあるよね。いいですよ、別に。私も聞きたくない。
 張りつめた空気とは裏腹に、意識が上滑りする。まともに向き合っていたらおかしくなりそうだ。それで隙ができようが、殺されようが構わないような、そんな気さえする。
「ごめんなさい。――でも、死んで」
 言葉とともに、おりが動いた。
 三メートルの距離が一瞬にして詰まる。矢のような踏み込み、振り上げられる右足。必殺の蹴打に備え、とっさにガードを固めるすろぷろ。
 と、振り上げられた蹴り足が、空中でその軌道を変えた。頭部をガードするすろぷろを嘲笑うかのように、突き込まれた右足が彼の股間を直撃する。
 声にならない声が、彼の口からもれた。がくりと膝が折れ、すろぷろはその場にうずくまる。
 ガードががら空きだった。動きの止まった彼に向け、さらにおりの蹴撃が唸りをあげる。
 ぱんッ――という乾いた音とともに、蹴りが側頭部を打ち抜いた。まるでモノを蹴り飛ばすような、容赦のない一撃。悶絶していたすろぷろはその打撃を防ぐこともできずに、まるで棒のようにその場に打ち倒された。
 無表情のまま、おりは彼を見下ろした。
 数十秒前と同じシチュエーション。しかしすろぷろはダメージが深く身動きできない。無防備な彼を踏み殺そうと、再び、おりは足を振り上げる。
 その瞳が、樹古の目に触れた。
 能面のような表情の中、その瞳の中だけに、微かに、確かに、彼女の意思のかけらが、透けて見えた。
 苦悩があった。悲嘆があった。自嘲があった。
 そして、絶望があった。

 反射的に、腕が動いていた。
 悲しげなおりの目が、ぼやけた意識に喝を与えてくれた。自分のすべきことが見えた。しなければならない、そう思えた。
 おりは――彼女は、決して望んで凶行を犯しているわけではない。
 だから――だから、止めなくては。
 気付いた時には、手にしたベレッタを構え、おりを撃っていた。

 肩から血しぶきを散らせ、おりがよろめいた。打ち下ろそうとしていた足刀は動きを止め、何事もなく床に下ろされる。
 銃撃の反動が、撃ったこちらの肩にも抜けていた。まるでおりの痛みを代弁しているかのように。まるで自分の手で肩を撃ち抜いてしまったような。そんな錯覚に、樹古は捕らわれた。
 威嚇のつもりだった。少しでも自分に注意を引きつけ、動きを止めることができれば。それだけのつもりだった。
 驚いたようなおりの目が、銃を構える自分に向けられていた。その目に怒りや憎しみはなかった。ただ、単純に予想外のものを見せつけられたという驚きと、それと――かすかな同情と共感。いたたまれなくなって、樹古は思わず目を伏せる。
 おりの足下で、すろぷろが身じろぎした。
 生じた一瞬の隙を、彼が見過ごすはずはなかった。バネのように全身をしならせ、すろぷろの体がはね起きる。そのままの勢いで立ち上がりつつ、伸び上がった彼の頭突きが、真下からおりの脇腹にぶち当たった。
 おりの細い悲鳴に混じり、あばらの折れる音がここまで聞こえた。
 体をくの字に折り、一歩後ずさるおり。まだ痛みが去っていないのだろう、苦痛に顔をゆがませ彼女を追うすろぷろ。
 振り上げた彼の肘が、おりの首筋に打ち下ろされた。同時に突き上げた膝が彼女の喉元を捕らえ、鋭角な二つの打撃が、致命的な一撃を首に打ち込んだ。
 ごきんという嫌な音が響き、おりがその場にくずおれた。精魂尽きたのか、彼女と折り重なるようにしてすろぷろも床に倒れる。
 倒れたおりの姿に、目が釘付けになった。
 彼女の首筋はぐにゃりと折れ曲がり、見たこともない角度にねじれていた。冷たい石床に落ちた顔からとろとろと鼻血が垂れ、床に血溜まりを作ってゆく。
 緊張の糸が切れた。
「もう……もう、嫌ぁ……!」
 涙で視界がぼやける。忌まわしいその光景から目をそらし、背を向け、樹古は部屋を出て廊下に駆けだした。
 何も信じられない。誰も信じたくない。
 辛いから。痛いから。苦しいから。それに犯されるから。そして、それを犯してしまうから。
 それから逃れるために、樹古は走った。
 あてどもなく、ただ走り続けた。

         【残り8人】

コメント(5)

プロット練ってる時は、まさかこの二人がリアルで結婚するとは思ってなかったなぁ(´ー`)y−~~
>銃撃は寸前で狙いをそらされ、すろぷろの頬をかすめた。
>千切れた髪の毛が  ←個人的に、ここダウトw
         
も…もみあげ、もみあげ;
<!と言っても、すろさんはあまり髪がふさふさしてないからな>
<!そういう意味ではダウトと言われても仕方ないぜ>
<!たぶんそういう意味>

とりあえずおれのタマが……タマが……っっっ!!!?(´Д`;)

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