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ヒッタイト学コミュのテキスト紹介

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 副管理人のKitaです。
気がつけばこのコミュニテーも600人。
ヒッタイトを愛する人がこんなにいるなんて!

 さて、自分の分野である文献学の方から、テキストを紹介したいと思います。
10日に1回位は例を挙げたいなぁ…

 翻訳は基本的に自前ですが、プロの方を所々参考にしています。
読みやすさを重視している積りですが、難解なところなどあれば御一報下さい。
リクエストも受け付けますが、その場合時間がかかることがあります。
自分が読んだことのないテキストの場合特に。
具体的でなくとも「神話」とか「祭祀」などのジャンル指定でも結構です。


 では始めます。

コメント(66)

 上記で「ハットゥッシリIII世の弁明」は終わりです。
25は自分の書き込みだったんですが、ミスを見つけたので消しました。

 気付いたんですが、このトピック立てて一年経っちゃいましたねぇ。
「600人も参加者がいる!」と書いてますが、今ではこのコミュニティーも約700人!

 これからも宜しく。
カントゥッツィリの祈り

表1-5
 どの神が怒りを覚えたにせよ、その神は目を他に背けて、カントゥッツィリが活動することを許さなくした。
その神が天にいるにしろ、地にいるにしろ、汝イスタヌよ、彼のもとへ行き給え。
行って、私の神に話しかけて[…]。これらのカントゥッツィリの言葉を伝えよ。
6-10
 我が神よ、母が私に生を与えて以来、あなたは私を育ててくれた。
あなたは、ああ神よ、私の[名]であり栄光である。
神よ、貴方は私を善き人達と引き合わせてくれた。
影響力のあるところへと私の業を向かわせた。
我が神よ、貴方は私、カントゥッツィリを貴方の身体と心の僕にと呼んだ。
幼い頃から知っている貴方の慈悲、それを私は知っているし、認めている。
11-14
 私は成長するに従い、更なる我が神の恩赦と知恵を全てにおいて見た。
決して神にかけて誓いを立てたことはなく、また誓いを破ったこともない。
我が神にとって神聖なものや、私に食べることが許されていないものを、私は口にした事はないし、そうして私の身体を穢すこともなかった。
15-19
 牛を檻から放したことはないし、羊を檻から逃させたことも同様。
私は自身でパンを見つけても、一人で食べることはしなかった。
私は自身で水を見つけても、一人で飲むことはしなかった。
今私が快復すべきであるなら、貴方の御言葉によって治るものではないでしょうか?
ああ、神よ!
今私に力が戻るべきならば、貴方の御言葉によって力が戻るものではないでしょうか?
ああ、神よ!
20-23
 生は死とつながっていて、死は生とつながっている。
人間が永久に生きることなし。
生の日々は数えられている。
もし人間が永遠に生きるものであるとて、邪悪なる病があるならばそれは嘆きの種ではないでしょうか?
24-29
 今、我が神は真心をもって私に内なる魂を見せよ!
そして私に私の罪を教えよ、さすれば私はそれを認めるであろう!
夢を通して私に語りかけ、心を開いて罪を伝えてくるなら、私はそれを認めよう。
占い師に語らせる、または太陽神の聖職者に肝臓から伝えさせ給え。
真心を持って内なる魂を見せ、私に私の罪を教え、私はそれを認めるであろう!
[力(?)]を私に再び与え続けよ!



「肝臓」というのは「肝臓占い」のことです。
羊などの肝臓をとりだしそこに出ている模様などで吉凶などを占うものです。
裏1-5
 太陽神よ、貴方は全ての羊使い(=司る者)。貴方の便りは全ての者にとって心地よい。
私に対して憤っている私の神は私を拒絶した。
[彼が私を慮ってくれるように!そして私]を活発にしてくれるように!
私に病を与えた私の神、[彼が私に再び慈愛をくれるように!
病]に私は疲れきっていて、・・・。
そして私はこれ以上立ち向かえない。
[私から悪]を(?)引き剥がすように、貴方は…向けた。(?)
6-9
 [神の怒りが(?)]再び退くように!そして彼の[心]に再び…
…病から再び離すように!
太陽神よ、シンとニルガルの力溢れる[息子]、貴方の髭はラピスラズリ(のよう)。
貴方をカントゥッツィリ、貴方の僕、は今ここに呼んだ。
私を生かしたまえ!そして私は貴方に伝え続ける。
10-13
 太陽神、我が主よ!私カントゥッツィリは今ここで私の神に[尋ねた。
私を我が]神は聞き給え!私、カントゥッツィリ、が我が神に対して何をしたのでしょうか?
そして何を[私が犯したのでしょうか?]我が神に対して!
貴方は私を作り、そして造った。
今しかし貴方に対して、私カントゥッツィリが何をしたのでしょう?
商人は太陽の前に秤をとり、そして偽る。
[私はしかし私の神]に対して何をしたのでしょうか!
14-17
 病によって私の家は不安の住家となった。
そして不安により私の魂は他の所へと滴り続ける。
一年中病の者のように私はなってしまった。
今しかし私にとって病と不安が大きくなる。
神よ、貴方に私は話し続ける。
18-21
 夜、私を寝床において甘い眠りが捉えることはない。健康は私に知らされない。
しかし今、我が神よ、力と守護神を繋ぎ給え!
生まれたときから私にこの病を定めていたということを、私は占い師(女性)によって尋ねることすらしなかった。
22-26
 しかし今、我が神の前で慈悲を私は叫ぶ。私のことを聞き給え、我が神よ!
[私]を王の門の前で歓迎されぬ者にしないで下さい!
生ける者の前で私の栄誉を貶めないように!
私が良いことをした者達は、私を救ってくれない。
[我が神よ!貴方は私にとって父であり母である。]

(以下破損…)


ヒッタイト人の考えでは魂は流動的なものです。(14-17参考)
オルタキョイ書簡

1-4
我が君である陛下に伝えよ。このように女王、貴方の僕、は(言う)。
我が君である陛下にとって全てが良くあるように!
5-9
我が君である陛下を神々が生き永らえさせてくれるように!
そして陛下を御守りされるように!
私にとってもまた順調です。
10-12
頭と背中が痛みます。
そして私は未だに同じ(状態)です。
13-16
我が君である陛下においても、どんな(状況)であるのか。
私に陛下、我が君、は返事(直訳:良き事)を書いて下さい!



10-12の本文以外は社交辞令ですよね…
9行目で健康だと言っている割には、次の行で「頭と背中が痛い。」とおっしゃっていますし。
この次はエジプト―ヒッタイト書簡ですが、そこでも長々とした挨拶が出てきます。
ラムセスII世→ハットゥッシリIII世

表1-3
[このようにワスムアリア]・サテプナリア
[大王、エジプ]トの王、太陽の息子、ラムセス、
[アモン神に愛されし者、大]王、エジプトの王(は言う)

4-5
[ハットゥッシリ、大王、]ハッティの王、
[わが兄弟に伝]えよ。

6-7
現在、余、[大王、汝の兄]弟、は快調である。
汝にとっても[非常に快調]であるように、兄弟よ。

8-14
[わが兄弟に]伝えよ。[余の兄弟が余に]書き伝えたことについて。
彼[の姉妹]マタナツィに関して。
「かの女性のために医術を準備することができる者を我が兄弟に送らせよ。
そしてかの女が出産できるために」
我が兄弟はこのように書いて余によこした。

15-裏5
我が兄弟に伝えよ。
今、余、王、汝の兄弟、は我が兄弟の姉妹について承知した。
(しかし)彼女は50歳、もしくは60歳であるという。
そして、見よ!
50歳、もしくは60歳の女性に、出産のための医術を施すなど無理なこと。

6-8
太陽神と天候神が(彼女のために)命令を下してくれるように!
執り行われるであろう儀式が、我が兄弟の姉妹のために遂行される。

9-13
そして余、大王、汝の兄弟、は能力ある術師と医者を送る。
彼らが彼女のために出産のための医術をじゅんびするであろう。

14-16
そして今、余は我が兄弟に贈り物をする。
我が伝使を通して。

17-
(ほぼ破損…)



 マタナツィは上記『ハットゥッシリIII世の弁明』に出てきたマッサン・ウッツィのことです。
>31

 当時の文明世界の二大国の首脳同士のやりとりですが、何か奇妙なやりとりですよね。

 おかげさまで、このコミュニティも参加者が700人を越えました。ありがとうございます。
 今はKitaさんによる貴重なヒッタイト文書原典紹介がメインの活動になってますね。
 いやー、ホントに。
大きいコミュニティーになりましたね。


ナプテラからプドゥヘパへの手紙

表1-3
ナプテラ、エジプトの女王
ハッティの女王プドゥヘパ、私の姉妹、に伝えよ。
4-11
貴女、私の姉妹、にとって好調であるように!
貴女の国に好調であるように!
今私は聞きました、貴女が私の健康を尋ねるために書をしたためたことを、そしてエジプトの王である大王と彼の兄弟であるハッティの王である大王との間にある良き兄弟関係と和平関係のために私に書いているということを。
12-19
太陽神と天候神が貴女の頭をあげ、そして太陽神が平和を謳歌させ、そしてエジプトの王である大王とハッティの王である大王、彼の兄弟、との良き兄弟関係を永久に与えるように。
同じく私も平和にあり、貴女と良き関係にあります、私の姉妹よ。
20-21
今貴女に贈り物を届けさせました。
貴女への挨拶代わりとして、私の姉妹よ。
22-24
そして、私の姉妹よ、私が貴女に王の使者パリフナワの手によって送らせた贈り物であるということを覚えておいて下さい。
25-27
装飾豊かな黄金のネックレス、12の糸(で綯われている)、88シェケル
ビュッソスのマクラル生地の染物
裏1-4
ビュッソスの染めチュニック
5つの染物、良質の細(糸)製
5つの染めチュニック、良質の(糸)製
織物合計:12の織物


Johan de Roos氏のコメントから:
「プドゥヘパが(中略)88シェケル(801グラム)の重さの12糸の黄金のネックレスをつけて宮殿内を誇らしげに歩いていたであろうことは想像するにたやすいでしょう。」
(Materials for a Biography: The Correspondence of Puduhepa with Egypt and Ugarit. In: Symposium Johan de Roos. p.24)
ラムセス→ハットゥッシリ

(最初の大部分破損)
8−14
 汝は余[に多くの]非常に不快な、聞くに堪えぬ事柄を書いてよこした。
余は[・・・]。
汝がこの事柄を聞いた後、汝は一人の男が書きしたためたものとしてはありえぬものを書いた。
「余が聞いたこの言葉は適切であるか、否か?」
そうであったな?
王(=ラムセス)はこの男に関することであればすべて書くであろうし、汝は全て彼に行う適切なことを言ってもかまわぬ。
そして(そのことは)遂行される。
しかし汝が<この事柄を>聞くにおよび、汝は兄弟にこれらの諍いを引き起こすようなことを書いてよこし、[我々の間の兄弟関係や和平について]考えなかった。

15−19
 更に。
汝が[エジプトとヒッタイトの争いに関]して書いたことは、こうである。
「汝は[ハッテイ国の敵達]との日々については考えないのか?」
[このように書いてよこした。]
見よ、あれは神の敵意であったのだ。
彼が[難儀をもたらした。余は]事[実]ハッテイ国の敵の中に切り[込み、敵を倒した。]
ハッテイの王ムワタリの[軍は彼に属す多くの国々とともに来た。]

20−28
 エジプトの王、大王の軍が(まだ)[…に留まっている間に、…]
そして大王、[エジプト]の王、の前衛部隊が[シャブトゥナに到着すると、]ハッティの国の[軍から二人のベドゥイン]が[王のもとへ]と来た。
[そして彼らが言うには、「ハッティの王はハルバーの国にいます。」]
3つの軍は前線に出ていて、ま[だ王のいる場所には到着していなかった。]
王は[オロンテス河の西]の王座に座していた。
[そして前衛軍は待機状態にあり、…]駐留していた。
王は[ハッティの王ムワタリがハルバーの国から]出て行ったということを知ってはいたが、[その意図]は知らなかった。
[ハッティ国の王は彼に]配下の[全軍勢とともに襲い掛かった。]
[しかしエジプトの王は彼(=ムワタリ)に敗北を喫させた。]たった一人で。
余の軍は余の傍におらず、余の[馬軍も余の傍にいなかった。]

29−33
 そして余は[エジプトにハッテイ]国のこれらの国々からの敵たちを連れ去った。
エジプトの人々とハッ[ティ]の人々の前に[…]
そして汝は余の軍勢に関してこう言う。
「軍はお[らず、そして(本当に)馬軍もそこにいなかったのか?」見よ、]
余の軍の一つはアムルの国に駐在していた、もう一つの軍[は…にいた、]そして更なる軍はターミンタの国に駐留していた。
これは事実で[ある。]


 (上の手紙でもそうですが、)この二人ホントは仲が悪いんじゃ…
 間が空きました。
とある出版物と格闘してまして…
(言い訳。ヒッタイトと直接的な関係はない本です)


アルツァワ書簡(EA 31)
アメンホテップ3世→タルフンタラドゥ(アルツァワ王)

1-6
 ニムワレヤ、大王、エジプトの王、はこのように言う。
タルフンタラドゥ、アルツァワの王に伝えよ。
余のところは全て順調だ。
余の所帯、余の妻たち、余の子供たち、余の臣下たち、余の軍、余の馬軍、余の全てのもの(?)。
余の国において全ては良好である。

7-10
 汝においても全てが順調であるように。
汝の所帯、妻たち、子供たち、家臣たち、軍、馬軍、汝の全ての所有物(?)。
汝の国において全て順調であるように!

11-16
 汝に今、余の使者イルシャッパを送った。
「婚姻のために、我が君に送られる娘を拝見させていただきたい。
そして、彼女の頭に香油を注がせよ。」
汝に今、一つの良き皮袋分の黄金を贈った。

17-21
 ところで、儀式の衣類に関して汝は余にこう書いてよこした。
「余にそれ(ら)を送りたまえ!」
汝にそれを余は送るが、後に、だ。
汝の使者を余の使者とともに早急に戻し、(こちらに)来させてくれ。

22-26
 さすれば、余の使者と汝の方から来て…した使者は、娘のための結納品を直ぐに送り届けるであろう。
そして余に、カスカ(の地域)からの人間を送ってくれ。
余は全てのことが…したと聞いている。

27-29
 ハットゥサの国において停滞している(?)ということについて。
汝に今、贈り物を運ばせた。良き意思の印として。
[余の使]者であるイルシャッパの手に(よって運ばれる。)

30-38
(以下、贈り物のリスト)
ハットゥッシリI世の遺言(アッカド語&ヒッタイト語による2言語併記)

1-7
 [大]王、タバルナは全ての兵と臣下に言った。
余は今病気になった。そして若きラバルナを汝らに紹介した。
彼は王位を受けるであろう!
そして余は彼を息子と呼び、そして彼に常に指示を与え、そして彼のことを見守り続けた。
しかし彼、子供、がいかに振舞ったか、見るに値はされまい!
彼は泣かず、彼は愛を示さなかった。
冷たい者であり、彼は愛情がない。

8-13
 余、大王、は彼を捕まえて、そして余の(病)床へと呼び出した。
「何か!?再び彼の姉妹の息子を何者も育ててはならぬ!」
しかし彼は王のことばを取らなかった。そして彼の母親の、蛇の!言葉を聞いた。
彼に彼の兄弟姉妹らは冷たき言葉を与え続けた、そしてその言葉を彼は常に聴いた。
しかし余、王、はそれを聞いた。そして戦った。

14-19
 充分である!息子ではあの者はない!彼の母親は牛のように鳴いた。
「私の生きた子牛を引き剥がして、連れて行き、そして貴方は彼を殺す!」
余、王、は何か彼に対して悪いことをしたであろうか?
神官の座に彼を就けなかったか?
彼を良いほうへと余は常に向わせた。
彼は王の意にたいして敬愛を示さなかった。
どのように彼が良き意をハットゥッサに対して持てるであろうか?

20-25
 かの母親は蛇である。そして彼は彼の母親、兄弟、姉妹の言葉を聞くことであろう。
そして彼は近づいてくる。復習のために近づいてくる。
王を取巻く兵、臣下、奴隷たちは誓う。
「王のために死す!」
そしてそれを終え、血の海を作ろうとも怖れ[ることはなし。]

26-29
 このように近付いてくるハットゥッサの者もあるであろう。
誰のもので(あるかにかかわらず)、牛や羊を奪い取ろうと近付いてくる者。
余の敵を、余は武器を持っ[て倒した。]そし[て余の国を平和に保っ]た。
そしてしまいに彼[が余の国]を[かき乱すようなことがあっ]てはならない。

30-36
 しかし今、[決し]てそのように[行くようなことはならぬ。]
息子、ラバルナ、に家[を]与え[た。多く土]地を余は与えた。牛を多[く]与えた。
[羊を多]く与えた。そして常に食べ、飲むの[だ。もし彼が良く振舞うならば、]彼は(王位に)就け!
もし彼[がしかしながら不快の念(?)]を引き起こしたり、悪[意や反抗]をもたらすならば、彼は(王位に)就くことはない!
そして[彼は、彼の所帯に留ま]るべきである。

37-41
 ここにいるムルシリが余の息子である。
彼を代わりとして[認めよ。そし]て彼を(王の)座に就け[よ。・・・]
[神]は獅子の座にまさに獅[子を就ける。]
陣営の機会が来[ると]き、また[は反乱のとき、]汝ら、余の官吏達そして臣下達よ、[余の息子にとって助け]となれ!


このテキストは他のテキストに比べて比喩や感情的な表現が多いです。
42-47
 [もし]3年目になったならば、彼は遠征に出よ!
今彼[を、英雄たる王]と余はした。
もしまだ(そうでなくとも)、[そのようになるであろう!(?)]
[…]彼は汝ら(=臣下一同)の王の子孫ではないか?!
彼を英雄[に相応しき王として]育て上げよ!
[彼を(?)も]し汝らが遠征に連れて行くなら[ば、無事に]連れ帰るように。
汝らの「群」が狼のよう[に統率さ]れてあり、[畏怖を]与えるものであるように。
第一級の従者達が[一人の母]親に生まれている。

48-52
 1つの内臓、1つの肺、1つの[考え(?)]にまとまれ!
出し抜くようなことが[あってはならない。]誰も敵意を持ってはならぬ。
そして誰も命令に背いてはならない。
シナフワとウバリヤの街のような[ことが]あってはならぬ!
誹謗がまかり通ってはならない。余の息子が[…]を成すであろう。

53-57
 (以下のようなことを)[誰も]言ってはならない。
「王は隠れて彼の心(に思うことを)[するであろう。
そ]して私は、それがそうなのか、そうでないかを明らかにする。」
[そのような]讒言は決して、決して!まかり通ってはならぬ。
[汝等は]しかし今、余の言葉と余の知見を知る者でとして、余の息子を常に思慮分別のある者にせよ!

58-62
 [しかし]誰かが誰かを追い返すようなことはし[てはならぬ。]
誰かが誰かを[追い出す(?)]ようなことはならぬ。
老賢人らは(このような)ことを言わない。「[…]をあなたは呼んだ。」
そして汝にハットゥッサにおける老賢人達は話しかけ続けてはならぬ。
[クッサル(?)の者、]ヘンムワの者、タマルキヤの者、[ツァルパ(?)の者、]どの国も汝に決して話してはならぬ!

63-67
 余の[息子]フッツィヤを見てみよ。
余は彼をタッパッサンダにおける[君主]とした。
人々はしかし彼を責め、そして中傷し続けた。
彼らは[余にたいして敵意]を持った。「汝の父の意に反せよ。
タパッサンダの街にある王宮は[清められていない。]汝が清めをせよ。」

68-74
 [余、王、はフッツィヤを]捕らえた。
そしてハッティの人間達は[ハットゥッサにおいてさえ、敵意を抱]いた。
さらに彼らは(余の)娘(の心を)も捕らえた。
彼女は[息子を産んだが故に、余に対して]人々は敵意を持った。
[「彼(=王)には王位のための息子がいない。
そ]れ故に臣下が座ることになるであろう。[臣下が王になる!」
そしてかの女はさ]らにハットゥッサと宮殿を[不忠のものとした。
余に対して臣下達]と宮殿の者達は敵意を抱いた。
[そしてかの女は国を全て煽]動した。

75-82
[ほぼ破損]


(表面終)
裏1-22
[大部分が破損しているため省きます]

23-25
[汝等はしかしあの女に悪しきことを為]してはならぬ。
あの者は悪事を為したが、[余は悪事によって仕返]しをしてはいない。
あの女は余を父と[呼んではならぬし、]余がかの女を娘と呼ぶことはない。

26-32
[これまで余の意を汲む者は誰もいなかった。]
[しかし汝は余の息]子である。ムルシリよ!
汝はそれ(=ハットゥッシリの意)を受け入れよ!
[父の言]を守れ!
父の言葉を守るならば、汝は[パンを食]べ、水を飲むであろう。
もし成[人さが]汝の[心に]あるならば、日に2度でも3度でも食べ、自身に気を使うよう。
[もし老]いが汝の心にあるならば、充分に飲む[ように。]
[(その頃には)汝の父]の言葉に反してもよい。

33-45
[第一級]の余の臣下は汝らである。王である余の言葉を[守る]ように。
そうして汝等はパンを食べ水を飲む。
[ハットゥ]ッサは高みにあり、余の国は栄え[るであろう。]
もし大王の意をしかしながら守らぬのであれば、[将]来(?) 生きることはかなわず、朽ちていくであろう。
王の命を乱す[者は、]今まさに[・・・]余の[…]
かの者は第一級の臣下ではない![・・・は]喉を切られるべきである
あの(話が示すように):余の祖父[・・・]の言葉を彼の息子達は破棄したのではなかったか?
余の祖父は[ラバ]ルナを息子としてサナフッティの街で任命した。
[後にしか]し、彼の臣下達は彼(=祖父)の言葉を乱した。
[・・・]パパフディルマフを王位に就けた。
何年が過ぎたであろうか?[どれだけの者が](運命から)逃れたか?
臣下達の財産はどこにあろうか?それらは朽ちたのではなかったか?


46-52
汝等は大王ラバルナである余の言葉を守れ!
守るのであればハットゥッサは高みにあり、余の国を[栄え]させるであろう。
汝等はパンを食べ、水を飲む。
もし守[らないな]らば、汝らの国は他の者のものになるであろう。
汝等は[神々に関する]事柄に敬意を払うように。
厚いパン、お神酒、[パルス]ル、メマルを備えよ。



「パンを食べ水を飲む」と言うのは富裕の表現です。

 ちょっと料理に関してコメントです。
パルスル=鍋で作る料理の一種
メマル=雑穀の混ぜ物(推定)。お供えのほか、馬のエサにも使われます。
52-54
 先送りにしてはな[らぬし、]後回しにすることもならぬ!
もしそれを[先]送りにしたら、昔のように悪いこととなる。
ただ[そう]あるべき(形)にせよ!

55-63
 [大]王ラバルナは彼の息子ムルシリに[話]し始めた。
余の言葉を汝に与えた。この粘土板を毎月汝の前で読ませよ。
余の言と知恵とを心に刻め。
そして余の従者たちと臣下たちとを情けを以て扱え。
誰かの悪事を見る、神に冒涜を誰かが為す、何かしらの(悪い)[言]葉を誰かが言う。
(そのような時には)議会に尋ねよ。讒言もまた議会に向けられるべきである。
我が息子よ、[汝の]心にあることに従って行動せよ!

64-73(込み入った段落で理解が困難です)
 大王ラバルナはハスタヤルに話す。
余を蔑ろにしてはならぬ!かの女に関して王がこのように話すことがないように!
「王宮の者達曰く『この者は老女に尋ね続けている。』」王はこのように言う。
「今も老女に尋ね続けている。余が知らないと?」
再び余を蔑ろにしてはならぬ!(決して)ならぬ!余にのみ尋ねよ。
そして汝に余の言葉を伝えよう。
 余を良く洗い、胸に余を抱き入れてくれ。余を胸で大地から守りたまえ。

Colophon
 タバルナ、大王、の文書、大王タバルナがクッサルで病に倒れ、
若きムルシリを王位に定めた時。


 訳の時にpankusをどう訳すか考えたんですが、上では便宜上「議会」と訳しました。
(元々の意味は「全ての」「全体の」(英語のall)です。)
あとはŠU.GI-女性です。字句通りに「老女」と訳してあります。
 ハスタヤルは女性です。


 ハットゥッシリI世の遺言はこれで終わりです。
ムルシリII世の言語障害

表面
1−9
 このようにムルシリ、大王、は(語る):
荒廃の地クンヌーに余は向かった。嵐が来て、更に天候神が恐ろしく雷を轟かせた。
余は驚嘆した。そして余の口の中に言葉は少なくなった。
余から言葉は少し出てくるようであったが、余はこのことに気を咎められなかった。
しかし年月が過ぎるにつれて、余にとってこの出来事は夢に出始めた。
余に夢の中で神の手が触れ、言葉が余から出て行った。

9−17
 余は占いを行った。そしてマヌッツィヤの天候神(が原因である)と出た。
マヌッツィヤの天候神に対して(更に)占わせた。
「彼に身代わりの牛を与え、炎で焼く。そして犠牲鳥を焼く。」と占いは出た。
身代わり牛に関して占った。
「身代わりとしてクンマンニの町において神殿で奉げる。」と占いは出た。
そして身代わり牛を装飾し、陛下はそれに手を置いた。
そしてクンマンニの町へと向かわせた。陛下は礼をした。

18−28
 身代わり牛を装飾した日に、陛下は沐浴をした。
その前日の夜に女と寝た(からである)。
早くに沐浴をし、そして身代わり牛に手を同様に置いた。
身代わり牛を向かわせ、陛下は身代わり牛(の儀式の)後に7日間清く沐浴をした。
身代わり牛をクンマンニの町に連れて行っている間。
[これは]長くかかったので、陛下はもう待つことが出来なかった。
そして7日が過ぎた。8日目から[…(破損)

29−30 (破損)


 「出て行った」の部分を「機能しなくなる」の意味に取る学者もいます。
結局の所、どんな言語障害(吃音、失語症など)であったのかは不明です。
31−39
 (供えの)鳥を以下のように焼いた。
エヌマッスィに一羽、アリ・イタルキに一羽、アリ・ムドリに一羽、
イニ・イリリに一羽、イルミ・パルミに一羽、イリルテヒに一羽
ウラフルツィに一羽、ドゥワンテに一羽、タハスィ・ドゥルスィに羊を一匹、
キビッスィ・プヌフンスィに一羽、ガメルスィに一羽、アニスヒ・ビンディヒに一羽、
シェルディヒ・シェラビヒに一羽、タティ・ドゥワルニに一羽、ズズマキに羊を一匹、
[火]でこれらが焼かれる、ということがこうして(占いにより)定められた。

39−裏面3
 [・・・]に従って、[・・・]ポフガリ牛を以て[・・・]記された。
それを同[様]、か[の日]に向かわせた。
神に[・・・]そして供物台に[・・・]日に運んだ。[・・・]

4−8
 天候神にアムバッスィ、羊一匹、ケルディ
男性の神々にアムバッスィ、[・・・羊一匹]
エッルリ神に、アバリ神に[・・・]
[(牛一匹、羊一匹を)]アンザイ机に、[・・・]
レッルリ神には牛一匹、羊一匹[・・・]


 カタカナの名前はフリ語の宗教用語なんですが、意味は殆ど分かっていません。
それでも分かっているのを書き出しますと
アムバッスィ:ambaššiのam-「焼く、燃やす」
ケルディ:keldi「無事、息災」
大分間が空きました。おひさしぶりです。

9−27
 身代わり牛に手を置いたあの日、そしてそれ(=牛)を向かわせた日、(その時)余が着ていた儀礼(?)服。
その儀礼服も持っている:ベルト、短刀、靴。それとともに持っていった。
馬車、弓、箙、馬もまた持っていき、運び去った。
余が食事をしていた机、余が飲んでいた杯、余が眠っていた寝床、余が使っていた青銅の浴槽。
これらの器具のうちからは、何も取られなかった。
神が占いによりこのように定めたからである:儀礼服、馬車、弓、箙、馬が持っていかれる。
天候神が恐ろしく雷を轟かせ、そして嵐が来たあの日。
あの日着ていた儀礼服、あの日乗っていた馬車。
これらの儀礼服を含め、馬具の揃った馬車等々を持っていった。

28−37
 身代わり牛が運ばれたとき、そして身代り牛の儀式が昔から木の板に書かれているやり方に従い、
そして神、アンバッシ、ケルディへの儀式は木の板に書かれた慣例に倣い、執り行う。
もし身代り牛が、道が長いゆえに途中で死んでしまったならば、そこにその牛を持ってきたのと同様にし、他の牛に全く同じ装飾を施す。
これらの装飾[…]身代り牛とともに燃やす。

Colophon
 […未]完。[大王ムルシリが]荒廃のクンヌーにて[…]雷鳴を聞いた時。
 ヒッタイト新年祭(fragment)


[…そ]して彼(=神官?)はこのように言う。

 天候神のために、年の初めに天と地の盛大な祭儀が行なわれた。
神々は全て集い、天候神の家へ来た。
心に後悔(?)を抱く神は、その悪しき後悔の念を追い払いたまえ!
 この祭りにおいては食べたまえ、そして[飲]みたまえ!
満腹になるまで食べ、[渇]きが癒されるまで飲みたまえ!
王と王女の生命(が良くあり続けるよう)に話したまえ!
[天]と地の[…]話し続けたまえ!
穀物の[…

(以下破損)


 残念ながら、このテキストはここに訳した分しか残っていません。
でも、新年(のお祭り)はどこでも変わらんようですね。
 Bronzetafelのテキストを紹介してもらえると嬉しいです。

 昨日印刷博物館でそのレプリカを見てきました。そこでは「青銅書板、古代メソポタミア、紀元前1200年」と紹介されていました。中近東文化センター附属博物館にもレプリカが展示されています。
 そういえば条約はまだでしたね。


ハッティのトゥットハリヤIV世とタルフンタッサのクルンティヤの条約

第1段落
 このようにタバルナ(である)トゥットハリヤ、大王、ハッティの王、英雄、は告げる。
ハットゥッシリ、大王、ハッティの王、英雄、の息子。
ムルシリ、大王、ハッティの王、英雄、の孫。
スッピルリウマ、大王、ハッティの王、英雄、の曾孫。
トゥットハリヤ、大王、ハッティの王、英雄の子孫。

第2段落
 余の父ハットゥッシリがムワタリの息子ウルヒ・テシュプと敵対し、彼を王位より引きずりおろしたとき、クルンティヤに罪は全くなかった。
ハッティの人々は悪いことをしたが、クルンティヤはその中には決していなかった。
かつて王ムワタリは、余の父ハットゥッシリに彼を育てるように任せ、そして昔、余の父は事実彼を育て上げた。

第3段落
 余の父がウルヒ・テシュプを王位から引きずりおろした後、余の父はクルンティヤを(選び)取ってタルフンタッサの王位に就けた。
余の父は、彼(=ハットゥッシリ)が彼(=クルンティヤ)のために規定したことと、どのように国境を定めたかということについて条約文書を作成した。
そしてこれをクルンティヤは所有している。
彼のため国境は以下のように定められた。
 ピタッサの国のほうに向かって、ツァルニヤ町のカンタンナ(?) であるハウワー山とサナンタルワ町が境界である。
ツァルニヤ町のカンタンナがフーラヤ川の国の中にある一方で、サナンタルワ町はピタッサの国に属する。

(第4段落-第11段落:国境の詳細な取り決め、様々な役職に関する規定)

第12段落
 ハットゥッサの全ての者はタルフンタッサの神々に供え物をした。余の父や、王である余がタルフンタッサの王であるクルンティヤに与えた、これらタルフンタッサの神々のための貢納品や祭儀納入品を人々が取ることはならない。
 今もし余が牛と羊のための場所を(特別に)命じるならば、(そこが)毎年200頭の牛と1000匹の羊を祭儀の納入品としてタルフンタッサの神々に納めることとする。
しかし(特に)余が土地を与えないようであれば、毎年ハットゥッサの租税から200頭の牛と1000匹の羊をタルフンタッサの神々に与え続ける。

第13段落(第2欄31-42)
 余、大王トゥットハリヤ、が王になる前から既に、余とクルンティヤを神は良き関係に付けた。
そのときには余達は既にかけがえのなく、そして良い(関係)であった。
余達は誓いの者となった。「互いを護り合おう。」
当時、余の父は兄を王位継承者に就けていた。(それ故、)余は当時王位には定められていなかった。
クルンティヤはしかし、余に対して当時(既に)誠実であり、余自身にこのように誓った。
「貴方の父が貴方をもし王位に就けなくとも、私は貴方を護る。どんな地位に貴方を貴方の父が就けたとしても、私は貴方だけを護る。私は貴方の臣下である。」
余はクルンティヤにこの様に誓った。「余は汝を護る。」


 全体で350行以上もあるので抜粋形式にしました。
なお最近の研究に従い、クルンタではなくクルンティヤとしてあります。

 青銅版文書の重さは約5キロ。
これが見つかった日(1986年7月20日)、ハットゥッサ発掘チームは盛大なパーティーだったとか…
第14段落(第2欄43-52)
 しかし余の父が余の兄弟を既に与えてあった王位継承の座から下ろし、余を王位に就けた。
そして余の父がクルンティヤと余の間の敬愛と尊敬を見ると、彼は余達を引き合わせ、そして誓い合わせた。
「互いを護り合おう。」(直訳:一人はもう一人を護ろう。)
このように余の父は余達に誓いを交わさせた。余達はまさに誓いに従う者達であった。
余をクルンティヤは護り、そして彼は誓いを曲げることは決してなかった。
余は彼にこのように告げた。「余を神々が認め、そして王になったら、汝は余の方から良きことだけを受けるであろう。」

第15段落
 そして我が父が神になると国々は散り散りになったが、クルンティヤはいかなる時も余のために死ぬ心構えが出来ていた。
余を彼は護った。そして誓った言葉を彼は決して曲げなかった。

第16段落
 余を神が選び、そして余が王になったとき、余はクルンティヤのために条約を以下のように作った。
余の父との条約に記載されていない街々もまた、農地、土地、労働力とともに全てタルフンタッサの王クルンティヤに支配のために余は与えた。
フーラヤ川の国の中にいる者は誰であれ、全てタルフンタッサの王クルンティヤ支配下に属するものとする。
国境を彼にとって良いものとなるよう余は再構成した。
永遠なる岩場の聖域を彼に返した。誰であれ将来、永遠なる岩場の聖域をクルンティヤの子孫から奪ってはならない。

第17段落
 ハッティの王トゥットハリヤが在位中これらを守っているあいだ、将来(的に)もタルフンタッサの王クルンティヤにとってこれが条約であ(り続け)るように!
トゥットハリヤの子孫はクルンティヤの子孫をタルフンタッサの国において、在位中同様に守りたまえ!
滅ぼしたり貶めたりするようなことは許されない。
そして余、大王トゥットハリヤ、がクルンティヤを守るように、余の子や孫はクルンティヤの子孫を同様に守らなくてはならぬ。
余がクルンティヤを守るように―もし彼に何かが不足しているなら、余が埋め合わせる。
もしクルンティヤの子孫に何か重くのしかかるならば、余の子や孫は同様に埋め合わせをするように。
滅ぼすことや品位を落とすようなことは許されない。

第18段落
 偉大なる王座に関して、取り決めはカルケミシュの王の条約と(同様)であれ!
タルフンタッサ国の王よりも王位継承者のみが偉大であるように。
何者も彼より偉大であってはならない。
カルケミシュの王に許されている慣習は、タルフンタッサの王にとっても許されるものであるように。

第19段落(第2欄84-94)
 余の父の条約で取り決められたことに関して以下の通り。
汝に女王が妻にするように与えた女性との子をタルフンタッサの国の王位に就けよ。
この条約が取り決められたとき、汝、クルンティヤ、はこの女性を余の父の治世中に娶ってもいなかった。今もしこの女性を汝クルンティヤが娶るのであれ、娶らないのであれ、この事柄は(もう)有効ではない。
クルンティヤが適していると考える息子―この女性の息子であろうが、その他の女性の息子であろうが汝クルンティヤの心にあって相応しいと考えられる息子―彼をタルフンタッサの王位に就けよ!
この事柄に関して何者もクルンティヤに命じることはならない。


 このトピックを立ち上げて2年が経ちました。
書き込み「1」の公約を全く守ってないですが、学問的エンターテイメントとしてこれからも読んでいただければ嬉しいです。
第20段落(第2欄95-102、第3欄1-20)
 クルンティヤ、ひいては彼の息子と孫にはこれが条約であれ。
余は汝の息子を追放するようなことはしない。
汝の兄弟や他の誰かを(汝の地位に)就けることはない。
タルフンタッサの国を余が汝に与えた故に、汝の子孫がそれを持ち続ける。
彼らからそれを取り上げられることはない。
もし汝の息子、もしくは汝の孫が過ちを犯したならば、ハッティ国の王が尋問を行なうであろう。
そしてもし、彼に罪があるのであればハッティ国の王の意に沿った処置を取るであろう、
 彼から家や土地を奪ってはならない。他の家族の者に与えることもならない。
タルフンタッサの国に関することはこの様に決められていた。
 将来タルフンタッサの王権をムワタリの子孫から誰かが奪うことはならない。
それを誰かが行い、ムワタリの家族の者に与える。クルンティヤの子孫からそれを奪う。
このようなことをする者はハッティの天候神とアリンナの太陽女神が滅ぼすであろう。
タルフンタッサ国の王権は将来(も)クルンティヤの子孫のみが所有する。
所有するは男系であり、女系の者を取ることはならない。
 しかしもし、タルフンタッサの国において王位にあるクルンティヤの息子、もしくは孫に神の意思によって不幸が起こった場合、タルフンタッサ国の王権は譲渡する、
クルンティヤの子孫だけがそれを与えられよ!そうしてタルフンタッサにおいて王位に就けよ!
他の家族の者に与えられることがあってはならない。
もし彼に男性の子孫がいない場合、クルンティヤの娘の子孫を探し出せ。
近隣の国にいようとも、そこから彼を連れてきて、そしてタルフンタッサ国にて王位にこの者を就けよ。

第21段落
 しかしもし、トゥットハリヤの子孫がハッティ国において王位にあるときに何か重大なことが起こったならば、タルフンタッサの国において王位にいるクルンティヤの子孫は命を落とす心構えでいるように!
クルンティヤがトゥットハリヤを守っていたのと同様、クルンティヤの子孫はトゥットハリヤの子孫を守るように!
クルンティヤの子孫をトゥットハリヤの子孫も同様に守るように!
滅ぼすようなことや貶めるようなことは許されない。
もしトゥットハリヤの子孫にとって何か重大な問題が起きて、ハッティ国の王位から退位せざるを得なくなったとき、タルフンタッサの国において王位にあるクルンティヤの子孫は(この)王に対して敵意を抱き、その従者として仕えることがないように!(注)

第22段落
 ハッティの行政が汝に取り決めたフーラヤ河の国の馬軍と兵隊は、ハットゥッシリが決めたことであり、そして大王である余が更に決めたものである。
将来、ハッティ国が遠征の際には100の歩兵を送るように。
しかし(更なる)歩兵を行政が要求することはならない。
彼から歩兵を要求する時には100の兵のみである。馬軍は無い。
 しかしもし、ハッティの国に平衡するようなものが反乱を起こしたときや、もしくは我が君が「下の国」から遠征を行なうならば、200の歩兵を要求せよ。
しかし駐留軍となってはならない。


注:これはトゥットハリヤの子孫に対し反旗を翻して、新しく王になったような奴には忠誠を誓うな、ということです。
第23段落(第3欄43-56)
 彼に属する全ての国土と、全ての国境の前線になっているものに関して。
もしどこかで救援を求める声があったとしても、何者もフーラヤ河国から救援を要請してはならない。
ハッティの国の中、フーワトヌワンタ山国の中、キツワトナの国の中、フルニヤの国の中、イックワニヤの国の中、そしてピタッサの国の中。
閃光の天候神、パルサの神、イヌイタのシャウシュカ女神、タルフンタッサの国の永遠なる岩場の聖域、そして彼の所帯に属する国はどこであれ賦役や貢納義務を負わない。
救援のことはそれらには有効ではない。
どんな賦役や貢納義務であれ、何者もそれのために近づいてはならない。
タルフンタッサの神々のために余はそれを免除した。

第24段落
 余の父がクルンティヤに与えたものと余が彼に与えたものに関して。
彼のために我々が取り決めた条約を未来永劫何者も変えてはならない。
余がタルフンタッサの国の王の神々のための賦役と貢納義務を見た時、それらはあまりに重く、履行しうるものではなかった。
タルフンタッサの国の王が調達する神事のものはハットゥッサ、アリンナ、ツィッパランダのそれに相当する。
 余の父が彼に与えたもの、そして余が彼に与えたもの―彼にとって神々への祭祀品と祭儀とが重くのしかかった故に―を余は閃光の天候神、天候神の息子シャルマ、そしてタルフンタッサの神々のためにと免責した。
そして彼を自由にした。
何人たりとも彼から何かを奪ってはならない。
何者も彼を賦役や貢納義務に就かせてはならない。
クルンティヤの子孫からタルフンタッサの王権を奪う者、もしくはそれを軽んじたり無くすよう命じる者、または余の父や余が与えたものから何かを奪おうとする者、ひいてはこの条約から1つ言葉を曲げたりする者。
そのような者からはアリンナの太陽女神とハッティの天候神がハッティの王権を奪い去ってしまうように!

第25段落
 これが汝のために作った条約。今、この機に千の神々が招聘された。
見たまえ!そして聴きたまえ!証人となりたまえ!
(以下約20行、証人となる神々のリスト。)
第26段落
 誰であれこの国においてクルンティヤに対して難儀を持ち込むような者、もしくはそれ(=国)を彼から奪おうとする者、またはクルンティヤの子孫から奪おうとする者、ひいては彼の領地を小さくする者、余が与えたものを何であれ奪おうとする者、この条約の1つの言葉を曲げようとする者。
そのような者は誓いの神々に滅ぼされるであろう!
 余がタルフンタッサの王であるクルンティヤに与えたもの、そして余が彼のために引いた国境線。
それらを将来クルンティヤの子孫から奪うことはならない。
 王であっても自身のために取ることはならず、彼の息子に与えるようなことはならぬ。
他の家系の誰かに与えることもならない。
誰も訴訟を起こしてはならない。
 将来(も)タルフンタッサの王権をクルンティヤの子孫が持ち続けよ。
誰であれ彼に難儀を持ち込み、そしてそれ(=王権)を奪うような者は、誓いの神々がこの者を子孫共々滅ぼすであろう!

第27段落
 この条約はターワの町において(証人:王子、王の親族、書記官、軍の高官など約25名)の前で書記官ハルワ‐ツィティ、ウッキヤの町のルパッキの息子、が書いた。

第28段落
 これ(=条約)は、7つの版が作られた。
そしてアリンナの太陽女神の印とハッティの天候神の印が捺された。
1つはアリンナの太陽女神の前に。
1つはハッティの天候神の前に。1つはレルワニ神の前に。
1つはキツワトナのヘパトの前に。
1つは閃光の天候神の前に。
1つは王宮内のツィトハリヤ神の前に。
そして1つはタルフンタッサの大王クルンティヤが彼の家に所有する。



 青銅版文書はこれで終わりです。
最後の段落でようやく「印刷博物館」に関係ありそうなことが出てきましたね。

 歴史的に見過ごすことは出来ないですし、また金属に書かれている唯一の条約ですが…
改めて読むと長い、繰り返しが多い…
>kitaさん

 ご苦労様でした。ありがとうございました。有事の際の提供兵力の具体的な記述があるのは知りませんでした。

 印刷博物館さんは、たぶん条約内容とか用途とかにはあまり関心が無くて、「金属の板に(文字)情報を記した」ということが面白くて、この文書のレプリカを置いているふしがあります。
 仕事で19世紀のドイツ領邦の外交公電を読んだことがありますが、やはり繰り返しが多いですね。しかももってまわった言い回しが多くて訳するのに難渋しました。外交・条約文書ってこんなものなのかな。
キックリの「馬トレ」

表・第I欄
1-2
 このようにミッタニの国からのキックリ、馬の調教師、(は言う)。

3-12(第1日)
 馬(複数形。以下同様。)を秋に野原で放し、そしてくびきにつなぐ。
3ダンナを軽く走らせ、7イクだけ駆歩をさせる。
その後しかし10イクを駆歩させる。
馬をくびきから放し、エサを与え、水を飲ませる。
(馬を)厩舎に引いていき、1握り分の小麦、2握り分の大麦、1握り分の干草を混ぜたものを与える。
(馬は)それを食べる。エサが終わったら、(馬達を)杭につなげておく。

13-23
 夕暮れになったら馬を厩舎から出す。
くびきにつないだら1ダンナを軽く走らせ、7イクを駆歩させる。
戻って来させたら(?)、くびきを外す。エサを与え、水を飲ませる。
(馬を)厩舎に引いていき、3握り分の干草、2握り分の大麦、2握り分の小麦を混ぜたものを与える。
エサが終わったら、轡(くつわ)を着ける。

24-36
 [夜?] になったら、(馬を)[厩]舎から[出す。そ]してくびきをつなぐ。
[?ダンナを軽く走らせ、]7イクを駆歩させ[る。]
戻って[来させ]たら(?)、くびきを外[す。エサを与え、]水を飲ませる。
[再び厩舎の]中へと引いていく。そ[して…]
2頭の馬につき、2握り分の小麦、1握り分の大麦、4握り[分の干草を]同様[に混ぜ]たものを与える。
エサが終わったら、夜通しで[干草を]食む。

37-42(第2日)
 明るくなったら、[厩舎から馬を]出して、[くびきにつなぐ。]
2.5ダンナを軽く走らせ、7イクを駆歩させる。
さらにその後、10イクを駆歩させる。
そして3ダンナを進ませる。(?)

43-58
 戻って来[たら(?)]、くびきを外しエサをやる。
そ[して轡]を[着け]、杭につなげておく。昼になったら馬は干草を食べる。
日が2アンマトゥ進んだら、水を飲ませる。そして杭につなげる。
夕暮れになったら、くびきを着けて1ダンナを軽く走らせる。
戻って来させたら(?)、くびきを外す。
エサをやり、厩舎の中へと連れて行く。
(馬は)夜通しで充分に(直訳:藁のような)干草を食べる。

59-60(第3日)
 明るくなったら、厩舎から出してくびきを着ける。

(第I欄終)


1ダンナ=約1500メートル、1イク=約15メートルです。
アンマトゥは長さの単位ですが(1アンマトゥ=1「前腕」)、上記では時間の単位として出てきています。
(どれ位の時間かは不明)
ほぼずっとこんな調子で184日(分)も続きます。
 キックリの「馬トレ」を続けようかとも思ったんですが…やめました。
どうしても内容が同じ調子になり過ぎるので。

ヒッタイト『法典』(抜粋)
1:[もし]誰かが[男性、も]しくは女性を[諍い]事において殺したならば、[彼(加害者)はその人物を自身で(埋葬に)持って行]き、各々(のケースに従って)男4人か女4人を与える。
[そして、そのために彼(加害者)の家を]覗く。(注)

5:もし誰かが商人を殺したならば、彼は銀100マナを払う。そのために彼の家を覗く。
もしルウィの国、あるいはパラー国のことであるならば、彼は100マナの銀を払い、そして彼の財産を賠償する。
もしハッティ国のことであれば、その商人を自身で(埋葬)に持って行く。

7:もし誰かが自由民を盲目にさせるか、歯を折るならば、以前は1マナの銀を払っていたが、現在は20シェケルの銀を払うものとする。
そのために彼の家を覗く。

8:もし誰かが奴隷、もしくは女奴隷を盲目にさせるか、歯を折るならば、10シェケルの銀を払う。
そのために彼の家を覗く。

11:もし誰かが自由民の手、もしくは足(脚?)を折[る]ならば、彼に対して20シェケルの銀を払う。そのために彼の家を覗[く]。

13:もし誰かが自由民の鼻を噛みちぎるならば、彼は[1マナの銀を払う。]
そのために彼の家を覗[く。]

17:[も]し誰かが自由民の女性を堕胎[さ]せ[る]場合:
[もし](妊娠期間が)10ヶ月であれば、彼は10シェケルの銀を払う。
もし5ヶ月であれば、彼は5シェケルの[銀]を払う。

28:もし娘がある男に約束されていたが、他の男がその女と駆け落ちをしたならば、[…]
駆け落ちをした男は、最初の男に彼(婚約者)が支[払っていた]ものを彼に全て賠償する。
(女性の)父と母は賠償をしない。
もし父と母が女性を他の男に与えるならば、父と母は(最初の男性に)賠償をする。
もし父と母がそれを拒むならば、彼女と彼を別れさせる。

37:もし誰かがとある女性と出奔して、それに何名かの支持者がともに行く場合:
もし3名、もしくは2名が死[亡した]としても、賠償は無い。
「お前は狼になった。」(注2)

注:具体的にどういう内容であるかは論議の的ので、直訳にしてあります。
H.A.Hoffner Jr.によれば、「被害者(側)が加害者の資産(=「家」に属するもの)から損害を賠償してもらう権利が与えられる」です。
(つまり払えるかどうか「家」を覗いて見る訳ですね。)
 少々の差異はあれ、ハンムラビ『法典』にも上記同様の法があります。
(「鼻」に関してはないですが。)
注2:狼が羊を奪うようなところから取ったと思われる比喩です。
発言者は不明ですが、「お前」の部分は恐らく女性と出奔した男性です。
(ヒッタイト語には発言をマークする小辞があるので、この部分が発話されたことであるのは確実です。)
ヒッタイト『法典』(続)

45:[もし]誰かが(失くし)ものを見つけたならば、彼はそれをその所有者[に返す。]
彼(所有者)は彼(発見者)に対して謝礼をする。
もし発見者がそれを[返さないなら]ば、彼は泥棒となる。

59:もし誰かが雄羊を盗んだならば、以前は30匹の羊を与えることとしていた。
[現]在は15匹を与える。(内訳は)雌羊が5匹、去勢した雄羊が5匹、子羊が5匹。
そしてそのために彼の家を覗く。

62:もし誰かが雄羊を見つけて去勢し、そして所有者がそれに気付いたならば、発見者は7匹の羊を与える。
(内訳は)雌羊が2匹、去勢した雄羊が3匹、(性的に)熟していない羊が2匹。
そのために[彼の家を覗く。]

74:もし誰かが雄牛の角や脚を折るならば、彼はその牛を自身の所に連れて行き、(代わりに)良い状態にある雄牛を(負傷した)雄牛の所有者へと持っていく。
もし所有者が「私の雄牛は私が持っていく」と言うならば、彼はその牛を連れて行き、加害者は2シェケルの銀を払う。

90:もし犬が豚の油を食べてしまい、豚油の所有者がそれに発見するならば、殺してその胃から油を取り出す。
(犬の)補償は行なわれない。

92:[もし]誰かが[2つ、もし]くは3つの蜂の巣を盗むならば、以前は[蜂]刺し(の刑)であった。今は6シェケルの銀を支払う。
もし誰かが1つの蜂の巣を盗[む場合や、]蜂の巣が空であった場合な[らば]彼は3シェケルの銀を支払う。

108:もし誰かが囲われたワイン園から葡萄の枝を盗み、100の…であるならば、彼は6シェケルの銀を支払う。
[そのために彼の家を]覗く。
もしワイン園が囲われておらず、誰かが[葡萄を盗]むならば、3シェケルの銀を支[払う。]

126:もし誰から王宮の門の…を盗むならば、彼は6シェケルの銀を払う。
もし王宮の門の青銅の槍を盗むならば、死刑とする。
もし銅製のピンを盗むならば、25リットルのオオムギを払う。
もし着物一巻分の縒りを盗むならば、彼は羊毛の着物一巻分を返す。

149:[も]し誰かが養成を受けた[人?]を売り、(その後、引渡し前に)「彼は死んだ」と言うが、(新しい)所有者が彼(養成を受けた人)を追跡したならば、彼はその人物を連れて行く。
それに加えて、売り手は更に2人を彼に与える。
そのために彼の家を覗く。

159:もし誰かが一群の雄[牛を]1日使うならば、賃貸[料]は25リットルのオオムギである。
ヒッタイト『法典』(終)

170:もし誰かが蛇を殺し、そして誰かの名前を言うならば彼は1マナの銀を支払う。
もし彼が奴隷であるならば、彼は殺される。

174:もし殴り合いをして、片方が死んだならば、(もう片方は)奴隷を与える。

178:鋤牛の値段は12シェケルの銀である。雄牛の値段は10シェケルの銀である。
充分に育った牝牛の値段は7シェケルの銀である。当歳の鋤牛もしくは牝牛の値段は5シェケルの銀である。
そして乳離れした仔牛は4シェケルの銀を支払う。
もし身篭った牝牛であれば8シェケルの銀。仔牛の値段は2シェケルである。
種馬、雌馬、雄のロバ、雌のロバの値段は同じである。

187:もし人が牛を[犯]すならば、(これは)大罪である。彼は死刑に処される。
「王の門」へと彼を連[れて]行く。王が殺すか生かすかに関わらず、彼は王の前に現れない。

(188:「牛」→「羊」で同様)

189:[もし人]が彼自身の母親を犯すならば、(これは)大罪である。
もし人[が]彼自身の娘を犯すならば、(これは)大罪である。
もし人[が]彼自身の息子を犯すならば、(これは)大罪である。

192:もしある人の妻が死んだならば、彼は(その女性の)姉妹を[妻に娶ってよい。]
これは罪にならない。

197:もし人が女性を山で捕らえて(犯した)ならば、これは男の罪である。
彼は死刑にされる。
しかしもし、家の中であればこれは女の罪である。(この)女は死刑にされる。
もし亭主が(これを)発見し彼らを殺したとしても、罪は無い。

200A:もし人が馬、もしくはラバを犯しても、罪ではない。
(しかし)彼は王の前に現れてはならず、また神官にもなれない。
もし[誰かが]…の女性と、もしくはその母親や姉妹と寝ても、罪ではない。

200B:もし誰かが彼の息子を大工、[鍛冶]屋、織工、革職人などに養[成のため]与えるならば、彼はその教育のために6シェケルの銀を支払う。
もし彼(教育者)が彼(生徒)を職人にしたならば、[彼にもう一]人を与える。


 200のAとBは同じ段落に書かれています。
つながりは全く見えませんが…

 これで法典は終わりです。
200条中の30条ですが、おおよそ全体のテーマを見通せるように抜粋しました。
 次のネタを何にしようか考えていたら一ヶ月が経っていました。
時間の流れが…

テリピヌ勅令

第一欄
1-4
このようにタバルナ、テリピヌ、大王(は語る)。
かつてラバルナは大王であった。
彼の息子達、彼の兄弟、彼の姻戚、彼の親族、そして彼の軍勢は1つであった。

5-6
 国は小さかった。
しかし彼がどこであろうと遠征に向かえば、力により敵国を征服下にした。

7-9
 彼は国々を破壊した。彼は国々を力無きものとした。
海の境界まで(そのように)した。
彼がどこかに遠征から戻るたびに、彼の息子それぞれが国のどこかへと向かった。

10-12
 フーピスナ、トゥーワヌワ、ネナッサ、ラーンダ、ツァッララ、パルスハンタ、ルースナ:
彼らがそれぞれ治めていた国であった。
[そし]て大きな街々は発展した。

13-16
 [その]後、ハットゥシリが王となった。
彼の息子達、兄弟、姻戚、親族、軍勢もまた1つであった。
どこへあろうと遠征へと向かえば、彼は力により敵国を征服した。

17-20
 彼は国々を破壊した。彼は国々を力無きものとした。
海の境界線まで(そのように)した。
彼がどこかに遠征から戻るたびに、彼の息子それぞれが国のどこかへと向かった。
彼の手中においても大きな街々は発展した。

21-23
 しかしその後、王子に仕える者達が悪意を持ち始めた。そして彼らの家財を奪い始めた。
彼らの主人に対して陰謀を企み始め、そして彼らの主人から血を流させ始めた。

24-27
 ムルシリがハットゥッサで王になった。
彼の息子、兄弟、姻戚、親族、そして彼の軍は1つであった。
彼は力により敵国を征服した。
彼は国を1つ1つ破壊した。彼は国々を力無きものとした。
海の境界線まで(そのように)した。

28-34
 彼はハルパの街に行った。彼はハルパを破壊し、そしてハルパの捕虜と略奪品をハットゥッサに持ち帰った。
その後、彼はバビロンに行った。バビロンを破壊した。
そしてまたフリ[の軍]と戦った。
彼はバビロンからの捕虜と略奪品をハット[ゥッサに保持し]た。
 ハンティリは宮内官であった。そしてムルシリの姉妹ハ[ラプ]シリを妻としていた。
[そしてツ]ィダンタ[は…]ハンティリの娘[…を妻としていた。]
 ツィダンタはハンティリと共謀した。そして悪[事を行]なった。
彼らはムルシリを殺[し、そして]血の罪を犯した。

35-38
 [ハン]ティリは怖れた。「余は守られているであろうか?」
[神]々は彼を守った。彼がどこへ[…]向かおうとも、住民[は降伏した。]
アシ[ュタ]タ、[スク]ツィヤ、フルパナ、カルケミ[シュ]は[…]し始めた。
そして軍を[…]

39-42
 [ハ]ンティリがタガラマに着く[と、彼は]言い[始めた。]
「どうしてこのようなことを余はしたのか。余はツィ[ダンタ、余の義息、の言を]聞いた。
[…ムルシリの]血(の報復)を、神々は伺[った。]
[以下15行程度破損。]
58-62
 今、ハンティリがスクツィヤの女王とその家族について尋ねた。
「誰がその者達を殺したのか」と。
「王宮の長」が(この)言葉を伝えた。
「その者達は血筋の者達を集め、そしてタガラマの街へと向かった。
茂みへと追いやって、そして死んだ。」

63-65
 今ハンティリは老人になり、神になり始めた。
そしてツィダンタはハンティリの息子ピセニをその息子達とともに殺した。
(さらには)彼の近衛の者達も殺害した。

66-68
 ツィダンタは王になった。そして神々はピセニの血(の報復)を窺い始めた。
彼に対して彼の息子アンムナを神々は敵とした。
そして彼は父ツィダンタを殺した。

69-71
 アンムナは王となった。
そして神々は彼の父ツィダンタの血(の報復)を窺い始めた。
そして彼の手に麦、ワイン、牛、羊を[…なか]った。

第二欄
1-7
 彼に対して国々は敵意を抱いた:[…]ッガ、[マ]ティラ、ガルミヤ、アダニヤ、アルツァウィヤ、サッラパ、パルドゥワタ、アッフラ(など)の街々。
軍が遠征に向かったならば、彼らが無事に戻って来ることはなかった。
今アンムナは神になった。
近衛長ツルーは秘密裏でかの日々に彼の息子タフルワイリ、「黄金槍の男」、を送り、そして彼はティッティの家族を息子達もろとも殺した。

8-12
 使者タルフスナも彼は送った。そしてハンティリを息子達もろとも殺害した。
そしてフッツィヤは王になった。
テリピヌは彼の正室の娘イスタパリヤを(妻に)娶った。
フッツィヤは彼らを殺そうとしたが、事が明るみに出るとテリピヌは彼らを追放した。

13-15
 彼の5人の兄弟。彼らに家を割り与えた。
「(そこに)居を構えよ!そして(そこで)飲食をせよ!」
何者も彼らに悪事を行ってはならない。そして余は続けて言う。
「彼らは余に対して悪事を行ったが、余は彼らに対して危害を加えること[はない]。」

16-19
 今、余テリピヌは余の父の王座についた。
そしてハッスワの街に遠征へと向かった。ハッスワの街を余は破壊した。
余の軍はツィツィリッパにもいた。そしてツィツィリッパで戦いは行なわれた。

20-25
 今、余、王はラワッツァンティヤの街へと来た。
ラッハは[余に対して敵意が]あった。そして彼はラワッツァンティヤの街を反乱させた。
そしてそこを[神々は]余の手に委ねた。近衛の者達は多くいた:
「千人兵の長」タルフ[…(役職名)]カッルワ、「宮内庁官」イナラ、「カップ持ちの長」キッ[ラ…の長]タルフンミンマ、「杓持ちの長」ツィンワセリとレッリ。
そして秘密裏に「杓持ちの人」タヌワをよこした。

26-30
 [王、]余は(その事を)知らなかった。そして彼は[フッ]ツィヤとその兄弟達を殺した。
今、王、余は(そのことを)聞いた。
人々はタヌワ、タフルワイリ、そしてタルフスを連行した。
そして彼らに対して議会は死刑の宣告をした。
王である余は言った。
「なぜに彼らは死ぬ(べきであるのか)?彼らの目を覆うべきである。(注)」
そして王、余は彼らを農夫にした、武器を肩から取り上げ、そして(かわりに)[…]を与えた。


注:(彼らを)無視する、といった意味合いと考えられます。
(目をつぶす、などの意味ではなく)
31-35
 王室においてさえも血は広がった。
女王イスタパリヤは死んだ。そして王アンムナが死んだ。
神官たちは各々言った。「今、ハットゥッサにおいては血が広がった。」
そして余、テリピヌは議会を召集した。
これからはハットゥッサにおいて何者も(王)家の子供に危害を加えたり、刃を突きつけたりしてはならない。

36-39
 王は正室の息子(である)王子がなるべきである。
もし王子が正室にいなければ、側室の者を取り、そしてその者が王となれ。
もし王子(となりうる)息子もいなければ、正室の娘の婿を取り、そして王にはその者がなれ!

40-45
 将来、余の後に王になる者は、兄弟、息子達、義理の息子達、血縁の者達、そして軍を集わせよ。
そうして敵の国々を力によって打ち負かすであろう。
このような事を言ってはならない。
「余は清める。」汝は清めない故に、自身を追い詰めることはなかろうか?(注)
家に属す者を殺してはならない。(それは)正しきことではない。

46-49
 更に、王になって兄弟や姉妹に対して悪事を(行なおうと)窺う者。
汝等は彼(に対して)の相談員である。
汝等は彼に臆せずに言わなくてはならない。「それは血の(流れる)事である。」
粘土板を見よ!「かつて、血がハットゥッサに蔓延していた。神々が王家にそれを与えた。」

50-58
 兄弟や姉妹間に悪事を行なおうとし、王の頭を狙う者(に関して)。
汝等は議会を招集せよ!もし事が(明るみに)出るならば、頭をもってそれを償う。
隠れてツルワ、タヌワ、タフルワイリ、そしてタルフスのように殺害をしてはならない。
彼の家、彼の妻や子供達に危害を加えてはならない。
もし王子が罪を犯すならば、彼が自身の頭をもってそれを償う。
しかし彼の家や子供達に危害を加えてはならない。
如何な理由で王子が亡くなろうとも、家、土地、果樹園、奴隷、女奴隷、牛、羊に対しては(何の関わりも)ない。

59-65
 今、もしとある王子が罪を犯し、頭をもってそれを償うとき、[彼の]家、息子に汝等は危害を加えてはならない。
王子の[藁や木を]与えることは許されない。
これらの悪事を行なう者達。[統率官、]「父長」、「宮廷官の長」、「近衛兵長」、「ワインの長」
[…王子の家]財を取ることを欲し、このように言うとき「かの街は我が物となる」。
(これは)その街を治める者に対して危害を加えている。


注:直訳しましたが、この部分は学者間でも意見が分かれていて確実な意味は不明です。

 なおヒッタイトは母系相続社会だったという議論で、このテリピヌ勅令はよく引き合いに出されます。
しかし実際には、この勅令はテリピヌ自身を王として正当化する以外の目的はありません。
「正室の娘の婿」という最後の条件に該当するのはまさにテリピヌ自身です。
この勅令も「法」として効果はなかったようで、後々に同様の境遇の人間が王になることはありませんでした。
 他のテキストをあたっても母権制だったという証拠はどこにもありません。
66-73
 しかし今、(今日)この日からハットゥッサにおいて汝ら―宮臣、近衛兵、黄金馬車兵、神官、給仕人、料理人、「杓を持つ者」、馬丁、野兵の長―が、このことを覚えておく者である。
タヌワ、タフルワイリ、タルフススが汝らにとっての戒めであれ。
もし誰かが再び悪事を行なうことがあるようであれば―「父長」や「宮廷官の長」、「ワインの長」、「近衛兵長」、野兵の長、最も階級の低い者であれ―汝ら議会(に属する者)はその者を捕らえ、そして歯をもって彼を食せ!(?)

裏面・第3欄
1-3
 ハットゥッサにおいて指導者である者、つまり「父長」たち、宮廷に属する者達、ワインの長、近衛兵長、馬軍の長、伝令官長。
[王宮の資]産にあるこれらの偉大なる者は、各々の部下を[…取るべ]きである。

4-6
 [更にハット]ゥッサにおいて防備された街々は守られるべき[である。]
[そ]してそこを去ってはならない!
防備された街は[…]水[…。]そして穀物に10回、20回それ(=水)を引いてくる。

(7-16 大破)
(17-42 地名の列挙)

43-48
 そして余は穀物(の収穫)を再び増やさせた。
農民達は与えられた土地において[・・・]印を捺せ!
その土地においてのみ[・・・]過ちをなさ[ぬよう!]
…において1ギペッサル、もしくは2ギペッサルで連なっていた。
そして…は国の血を飲み続けた。
しかし今(そのようなことを)してはならない!
それ[をする者は]恐ろしい死が与えられるであろう。

49-54
 [将来]余の[後に王になる]者は[常に穀物(庫)を名前とともに印]を捺せ!
[貯蔵庫の管理者は]汝に委ね、[そしてこのよ]うに言うであろう。
[…]印を捺[してはな]らない。[そして…印を]捺す。
[そして今汝を…]除く。[…]生き[…]ない。

(55-68 ほぼ破損)

69-75
 [これ]から余の[後に王になる者は…]屈辱[…。]
[そして汝]にこのように言う。[…]
汝は(それを)聴いてはならない![…]
そしてもし、つながれた労働人たちを[持っているならば…]
汝は武器をもって償う。軍隊[…]
汝の妻にとってであれ、[…に]とってであれ、それを…


 今回は問題箇所ばかりでした…
次回でテリピヌ勅令は終わりです。
その次はまた最初のテーマに戻って(?)、神話にしようかと思います。
 ヒャー、この前書いたのからもう2ヶ月!

第4欄

(1-20 ほぼ破損)

21-26
 後に、死すべき存在である者達の…が[…]を分け合った時。
彼らは、嗚呼、非常に不[遜であった。]
彼らはそれ故[に]神々によって打ちひしがれた。
しかし今、これか[らは…]
存命の両親を[何らかの]方法で財産[に関して]呼ぶ時―そして彼が口頭で要求するものが何であれ―その者(=?)を家から追い出し、そして彼からまさに財産を没収せよ。

27-29
 血の事はこのように(なっている):
血(の流れ出るようなこと、復讐)を行なうのはその「血の主人」が言った時だけである。
もし彼が「彼は死すべきである」と言うなら、その者は死ぬ。
しかしもし彼が「償いをせよ」と言うなら、その者は償いをせよ。
王にとっては何も無い。

30-34
 ハットゥッサの呪術に関して:
汝等は(この)事柄を清めよ。
王室の者の中で呪術に通じている者。
汝等はその者を家系から捕らえ、そして王宮の門へと連行せよ。
その者を連行しない者は誰であれ、悪いことが身に降りかかるであろう。

35-36
 テリピヌの第一の粘土板。完
 お久しぶりです。


誕生月による占い


(上部破損)

1' [もし第1の月に子供が生ま]れたならば、この子供は父親の資産を散財するであろう。
しかし将来彼はそれを(再び)埋め合わせるであろう。

2' [もし第2の月に子供が]生まれたならば、この子供は心の人生を見るであろう。
(=思うがままに生きる。心のままに生きる)
(もし)第3の月に子供が生まれるならば、この子供は正義を経験するであろう。

3' [(もし)第4の月に子供]が生まれるならば、この子供は病を患うであろう。
もし第5の月に子供が生まれるならば、彼にとって人生は短いであろう。

4' [(もし)第]6の月に子供が生まれるならば、この子供に両親は冷たさの側で立たせるであろう。(?)
この子供は川から、

5' ・・・から、火から、(そして)熱から出でるであろう。(?)
(もし)第7の月に子供が生まれるならば、この子供を神は秀でた者にするであろう。

6' (もし)第8の月に子供が生まれるならば、この子供は穀物と銀とを作るであろう。(=財を成す)
(もし)第9の月に子供が生まれるならば、この子供は死ぬであろう。

7' しかし死ななかった場合、両親は恐れを抱く。

8' (もし)第10の月に子供が生まれるならば、この出産が起こった家は没落するであろう。

9' (もし)第11の月に子供が生まれるならば、この子供は力強くなるであろう。
(もし)第12の月に子供が生まれるならば、この子供は老人になるであろう。(=長生きする)

10' そして多くの子をもうけるであろう。
(もし)第13の月に子供が生まれるならば、何も(起こら)ない。



 このテキストはアッカド語からヒッタイト語に翻訳されたもので、破損箇所などを除けば内容はおおよそ一致します。
残念ながら第6の月の部分は該当箇所がないため、解釈が難しくなってます。

 ヒッタイトの暦がどのようになっていたかは不明です。
第13の月が普通であったのか、それとも閏月のような概念があったのか。
 なお、私個人の印象ですが、ヒッタイト人は一年を四季ではなく三季で考えていたように思われます。
 ひさしぶりにお話系。

『アップの物語』

第一欄
1ー6
(半分程破損)

7-12
 スドゥルと言う名の街があった。ルッルワと言う国の海に面した所にあった。
そこにアップと言う名の男が住んでいた。
国の中で彼は最も裕福であった。牛や羊を多く持っていた。

13-14
 銀、金、ラ[ピスラ]ズリを脱穀された麦の山(?)のように持っていた。

15-21
 彼に不足しているものは何も無かった。
しかし足りないものは一つだけあった。息子も娘も彼には無かった。
スドゥルの者達が彼の前に食事に集まった。
息子にパンや肉を与える者もあれば、息子に飲み物を与える者もいた。
アップはしかし、パンを与える相手がいなかった。

22-26
 [机]は[布]で覆われていて、祭壇の前にあった。
アップは立ち上がり、家へと帰り、靴を履いたままベッドに横たわった。

27-30
 アップ[の妻は]女中達に尋ねた。
「今までうまくいったことはないけれど、今ならうまくいくかしら?」
彼女は着の身着のままアップの側へ横たわった。

31-37
 アップは眠りから覚めた。彼の妻は尋ねた。
「今までうまくいかなかったけど、今ならうまくいくでしょうか?」
アップはこれを聞いて言った。
「お前は[女であ]り、そして(他の)女のように考える。何もわかっとらん。」

38-45
 ベットからアップは起き上がり、白い羊を連れて太陽神のもとへと向かった。
太陽神は空から(これを)見て[いた。]
若い男へと姿を変え、彼の所へと向かい、そして尋ねた。
「貴方のお困りごとは何ですか?貴方のために[・・・]」


(第一欄了)
第二欄

1-9(少々破損)
 [・・・聞い]た。そして[・・・]
[・・・「私]に財を与えた。
[・・・私に]は1つ足りないものがあ[る。]
「・・・息子も娘」もいないのです。」太陽神は(これを)聞いた。
そして彼はこれに答えて言った。
「飲みに行って、充分に酔ったら、家に帰りなさい。そして貴方の妻と良い眠りを取りなさい。
そうすれば貴方に神々は与えるでしょう、一人の男の子を。」

10-18
 アップはこれを聞き、家へと帰った。
その一方太陽神は天へと向かった。
天候神は3ダンナの距離から(向かってくる)彼を見つけ、そして重臣へと言った。
「あの者が(こちらに)向かっている、太陽神、国々を統べる者だ!どこかの国が滅んだのか、それとも街々が朽ち果てるようなことでもあったのか、はたまたどこかの軍隊が争う(準備をしている)のか。」

19-24
 「料理人と酌をする者を用意せよ。彼に飲食を提供せよ。」
そして彼は来た。[・・・]
そこで[・・・]
天候神は太陽神[・・・]
彼に尋ねた。[・・・」 

25-30
何が[理由で・・・]
そして[・・・](以下ほぼ破損。)


裏面・第三欄
(上部破損)

2'-11'
 アップの妻は妊娠した。一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月、四ヶ月、五ヶ月、六ヶ月、七ヶ月、八ヶ月、そして九ヶ月が経った。
十ヶ月目に入ると、アップの妻は男の子を産んだ。
乳母は男の子を持ち上げ、そしてアップの膝(の上)に置いた。
アップは男の子をあやし、そして拭い(?)始めた。
彼(=子供)に「悪」という名を彼は与えた。
父なる神々は正しき道を[示してくれず、]悪い道を用意していた。
それ故に「悪」が彼の名前であれ!


 (太陽神であるとはいえ)通りすがりの若者に「今度はうまくいくぜ!」と言われて実行するアップって…
せっかく出来た子を(神々のせいにして)「悪」と名付けるアップって・・・
12'-15'
 [そして再び(?)]アップの妻は妊娠した。
[十ヶ月目に入]ると、妻は男の子を産んだ。
乳母は[子供を持ち]上げ、そして[・・・]
正しい名前を呼ばせることとしよう!

16'-17'
 「[・・・父]なる私の神々は(この度は)正しい道を用意していた。
[それ故に]「善」が名前であれ!」

18'-19'
 [・・・は大]きくなり、そして成人した。
[・・・時]に達した。

(第三欄了)

第四欄
1-3
 [・・・]アップの息子達は大きくなった。そ[して・・・]
男の時に達した(=成人した)。アップ[・・・]
[・・・親元を]離れ、そして家財を[分け始めた。]

4-12
 [兄]「悪」が弟「善」に言っ[た。・・・]
[「我]々は別れて、別々に生活することにしよう。」
弟「善」は[兄「悪」・・・」に言った。「誰が[・・・]?」
兄「悪」は弟「善」に言った。
「山々が「・・・」であるように、川が別[々に]流れるように、そして神々もまた別[々に]生活しているように。
私はこのことを君に聞かせるのだ。」

13-20
 [太]陽神はシッパルにいる。月の神はクツィナにいる。
天候神はクンミヤにいる。シャウシュカ(?)はニネヴェーにいる。
ナナヤはキッスィナに[いる。]バビロンにマルドゥックは[いる。]
神々は別々(の所)にいる。我々も同じく別々に[・・・]

21-25
 そうして「悪」と「善」は[・・・]し始めた。太陽神は天から[・・・]見ていた。
そして[・・・]を兄「悪」は取った。[半]分を「善」[・・・]

26-33
 [・・・]彼らは[・・・]した。[・・・]農耕用の雄牛[・・・]牝牛(が残った)。
農耕用の雄牛[を・・・]「悪」は取り、弱っている雌牛を「善」(に与えた)。
太陽神は空[から・・・見て]いた。
「[・・・]であれ![・・・]牝牛が健康となれ!そして[・・・を・・・]に産むように!」

34
 [アッ]プの第一の[粘土]板:未完。


 残念ながら続きは残されていません。
それらしきテキストはあるのですが、破損が激しく、とても読めるような状態ではないんですね。
そういうわけで『アップの物語』はこれで終わりです。
 ウッリクンミの詩(うた)

(今回は便宜上、行ではなく段落ごとになってます)


1 [ほぼ破損・・・]
クマルビを私は詩う。

2 クマルビは知略を心に描いた。
「悪なる日」を「邪なる者」へと育てようと。
天候神に対して悪事を企てようと。
天候神に対して反逆者を育て上げようと。

3 クマルビは心に知略を[描いた。]
そしてクンナン石のように[・・・]

4 クマルビは知[謀を・・・する]と、座椅子から[立ち]あがり、手に杓を取った。
風[のように]素早い[靴を履いた。]そしてウルケシュから[旅立ち、]そして「冷湖」へと[到達した。]

5 そこ、「冷湖」、には大きな岩石があった。その長さは3ダンナ、その横幅は0.5ダンナ。
彼(=クマルビ)の意識はその下にあるものへと向かった。そしてそれ(=岩)と交合した。
男性器をそこに[・・・]。五度、そして更に十度と行なった。

6-7 (破損が多いためカット) 

8 [海の神がインパ]ルリの言葉を聞くと、[インパル]リに彼は答えた。
「[我が重臣]インパルリよ!汝に[話すことに]耳を[傾けよ。クマルビの前にこれ]らの重要な[言を伝えよ。]
クマルビに告げよ。
『何故に怖れて我が家を訪れないのか?恐怖が家に憑き、そして不安が従者達を捕らえた。
汝のために杉の木は折ってある。汝のために料理は用意してある。汝のために「イシュタル楽器」を奏者たちは昼も夜も構えている。
立ち上がり、我が家を訪ねよ!』」
クマルビは立ち上がり、そしてインパルリは先を行った。しかしクマルビは[・・・]
クマルビは急ぎ、そして海の神の家へと向かった。

9 海の神は言った。「クマルビのために座席を用意せよ。彼の前に机を用意せよ。
彼に飲食を提供せよ。彼に飲むためのビールを持ってこさせよ。」
料理人たちは料理を作った。酌をする者達は飲むための甘いワインを持って来た。
彼らは飲んだ、一度、二度、三度、四度、五度、六度、七度。
そしてクマルビは彼の重臣ムキサヌに言った。
「我が重臣ムキサヌよ!余が言うことに耳を傾けよ。
手に酌を取り、そして[汝の足に]靴を履き、そして[・・・に]行け。」
(ほぼ破損)

10 [・・・]夜になる[と・・・見]張り[・・・]岩が岩を[・・・]岩石[・・・]クマルビの子供は[・・・]

11 産婆たちは[・・・]。運命の女神達と母神達は[・・・ク]マル[ビの]膝に置いた。
[クマル]ビはそ[の]子をあやし始[め、拭]い(?)始め[た。]
そして適した名前を[考え]始めた。



 このウッリクンミの詩は、クマルビの詩という(現代風に言えば)シリーズ作の一部です。
テーマは天候神を筆頭とする天界軍と天界の権利を狙うクマルビ軍の戦いの神話です。
このウッリクンミの詩の前に、海獣ヘダンムや「銀」との戦い、そしてなぜクマルビがどうして天界から落とされたか、などの話があります。
テキストの保存状態の良さから、このウッリクンミだけを訳すことにしました。
かなり長いです(残されているだけで72段落)。ですので、必要に応じて勿論カットします。

 「岩石が妊娠」というモチーフはコーカサスの民話・伝説にも伝えられています。
どちらもゴーレムのような石/岩の怪物です。
まぁ、個人的な感想としては「ヘンタイだー!」でしかないですが…

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