※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
消し炭の魔女、彼女は誰にも屈さず、どこにも属さず、長らく彼女をときめかせるような相手などいなかった。
それが、出会ってしまった。コンカファーズギルドで、燃やしても燃やしても死なない男に。
不幸な決着のはずだったが、彼女は、その男の存在を感じていた。
必ず生きている。その予感は日に日に強くなっていった。
「見つけた……」
反応が強くなった。
消し炭の魔女は、にやりと笑い、挨拶代わりの魔法を放った。
建物も全て消し飛び、周囲が焼け野原と化した。
そこに残った男を見て、消し炭の魔女は珍しく興奮を抑えきれなかった。
「会いたかったよ…アッキー」
全てが死んだ大地で、男は死の香りをさせて立っていた。
「熱烈なラブコールじゃないか、消し炭の魔女、久しぶりだね」
「さぁ、踊りましょう」
消し炭の魔女がステップを踏むと、周囲に炎の柱が吹き出した。
「ちょっと今、仕事中なんだけどなぁ」
アッキーは、逃げ道がないことを見て呟いた。
「ジュン殿、お覚悟!!いや〜、これ言ってみたかったんだだよね!」
スミオがいつもの調子で、ジュンの乗った籠を開けた。
「うおっ!」
その瞬間、ジュンが勢いよく飛びつき、スミオは押し倒された。
「スミオ!」
俺は叫んだが、その時、すでに、スミオの喉笛は食いちぎられようとしていた。
これが、武士のあがき!
「こんの〜!!往生せいや!」
スミオが必死に体を入れ替え、2人は転がりながら、坂を下っていった。
「マルス、追いかけよう!確実にとどめを刺すんだ!」
トランゴが俺に声をかける。俺は無言で頷くと、スミオを追って走り出した。
途中で、兵を斬り分けながら、スミオの元にたどり着いた。
「お前ら…カリスマのところの奴だな…小癪な」
「これが鮫地方の領主のオーラ…」
見ると、スミオが倒れたままになっている。
あの頑強なスミオの首を噛みちぎるなんて…。
「……安心しろ、マルス。あの程度なら、スミオはすぐに修復可能だ。それより、今は目の前の敵に集中しろ」
言われなくてもわかっている。こいつは、1人でも戦況を覆せるほどの実力を持っている。
それに早く仕留めないと、敵の兵達が落ち着きを取り戻すと厄介だ。
「オラアアア!!」
ジュンが間合いを詰めて、襲いかかってきた。
俺はうまくカウンターで合わせようとするが、相手も強く、壮絶な打ち合いとなってしまった。
「マルス!!」
トランゴが何かをこちらに投げた。
無我夢中でそれを掴む。
「こ、これは……ハイパーDDサーベルじゃねぇか!!」
「……それは、スミオ用に開発した兵器。だが、DDのお前なら使いこなせるはずだ!」
「DD…?俺は……DDなのか……?……よし!やってみる!!」
俺はこの武器を思い切り振り切った。
「ぐああああ!」
凄い!ジュンの武器ごと切り飛ばし、ダメージを与えることに成功した。
「このまま押し切る!」
「させるかよ!」
「ぐっ!」
ジュンの蹴りが俺の手を打ち、武器を落とさせる。そのまま吹っ飛ばされた俺は地面を転がった。
「そろそろくたばらんかい」
今のダメージで立てない……。くそ!トランゴは!?
気づいたら、トランゴは他の兵と戦っている。まずい、こちらに気づいていないのか?
やられる……そう思った時、すぐ横で寝ているスミオが目に入った。
「これだ…」
「さぁ、どんな死に方を所望かな」
「はは、俺はそんなの選ばせてやらねぇよ!」
俺は、スミオに搭載されていたメガハイ粒子砲を発射させた。
「な、なにぃーーーーー!!く、この俺が、こんなところでーーーー!」
「………勝った。勝ったぞーーー!」
俺は勝ち名乗りをあげた。周囲にそれが伝播し、戦いが終わっていく。
「よくやったな、マルス」
カリスマ様から労われている時、俺は何かを思い出したが気がした。
俺は……この男を知っている気がする。
それは記憶の手がかりになるのかもしれない。
撤退するコムギは、カリスマとの初めての出会いを思い出していた。
あれは……鮫地方の領主が集められた国王の城での出来事だった。
エリート領主だった僕は、ツバサや他の領主と雑談しながら、会議場へ入っていくところだった。
そこで当時、無名だったカリスマを初めて見た。
思わず放った一言、それが奴との因縁の始まりだった。
「カリスマ……?」
その名を聞いた時、エリートである僕は口説ける女でもいるのかと思い、そちらを見た。だが、姿を見てがっかりして呟いた。
「なんだ、男か」
しかし、次の瞬間、僕は顎にクリーンヒットをもらい、吹っ飛ばされていた。
「カリスマが男の名前で何が悪いんだ!僕は男だよ!」
頭に血が上った僕は、ツバサ達にカリスマを押さえ込ませた。
「なら、男らしく扱ってやるよ!」
僕は、カリスマの顔面に蹴りを加えると、勝ち誇りながら、会議場へと入っていった。
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