mixiユーザー(id:3964440)

2021年01月18日23:24

255 view

プロDD・M 〜その106

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「強いことが常に最良とは限らない…か」
 久々の地面の味を覚え、かつての大将軍は、立ち上がり、血をぺっと吐き出した。
「そのまま寝てりゃいいのに。このおっさん潰してから、ゆっくり相手してやってもいいんだぜ?」
「ほざけ。誰がいつお前に遅れをとったよ」
「行くぜ…!地獄のフルコース喰らわしてやんよ!」
 ユーヤが飛び上がり、ステゴに強烈な蹴りを入れる。
 僅かに後ずさったステゴにそのまま包丁を突きつける。
「オラァ!」
 続けて、ノコッチも分厚い財布を取り出し、ステゴに叩きつけた。
「くらえ!パパの財布!」
 さらに、続く2人の猛攻撃に、さすがのステゴも防御に徹するしかなかった。


「カリスマ、あのジュンを倒すとはな!恐れ入ったぜ」
 この男は、ノンピ。昔、サシ飲みした縁で、うちに押しかけてきている。
 おそらくノコッチ失脚も影響してのことだろう。
 以前、ノコッチと2人で、ノンピを攻めたことがあるが、そんなことは気にしないらしい。
 だが、僕としても、こいつの旧領を認めることで、東側の守りの要にしたい。
 東には、ナガツキ、ミツミツといった強敵が待ち構えている。彼らは、他の領主達と違って、積極的に事を起こそうとしないが、相当な実力者だ。
 いずれはぶっ潰すが、今はまだその時ではない。安全策として、ノンピを生かしておくのは悪くない。
「ノンピ、これからも僕の協力者として、鮫地方を盛り立てていこう」
「もちろんだぜ、カリスマ!俺達、マブだろ!」
「ああ!」
 うるせぇな、こいつ。必要なくなった即消してやるからな。
「カリスマ、俺達はこれから義兄弟だ、何でも相談して、何でも力を合わせて行こう」
「えっ…?」
「どうした?違うのか?」
 こいつ…形に拘るタイプか?面倒くせぇな。
「いや、わかった。僕らは義兄弟だ」
「よっしゃ!なら、杯をかわそうぜ!」
「…お、おう」
 八方美人が裏目に出た。こいつと、義兄弟などと知れたら、デメリットの方がでかくないか?大丈夫か?
 そこによりによって、ヨシピが割って入ってきた。
「あの〜…」
「なんだ、蛆虫」
「いや、ボクチン、ノンピとは義兄弟の契りをかわしてるんですが…」
 は?マジ?
「それはいいな!よし、3人で誓いを立てよう!」
「………」
 こうして、僕達3人は義兄弟の契りをかわした。
「我ら天に誓う!我ら生まれた日は違えども、死す時は同じ日同じ時を願わん!」
 はたしてこれで良かったのだろうか……。
 とりあえず、お前らが死す時は、僕が鮫地方を手中に収めた時だからな、覚えとけよ。


 カリスマ、ノンピ、ヨシピの義兄弟の話は、最前の誓いと呼ばれ、瞬く間に鮫地方に拡散された。
「ナガツキ公!ここにおられましたか!ミツミツの軍勢が……ナガツキ公?」
「………おのれ、カリスマ。ノンピと組んでまで、己が野望を成就させたいか。許さぬ」
 後にナガツキ家に長く務めていた男は語った。あんなに怒りに満ちた表情のナガツキ様は初めて見た、と。


「コタケ様、カリスマが行動を起こしました」
「知ってるぜぃ!あいつ、策を間違えたな、馬鹿め!」
「愚かな男でございますな」
「おそらく奴は、多くの敵に狙われるだろう。だが、我が軍が誇る最強のリフト部隊で、先に首をとって、鮫地方にコタケあり、と示してやろうじゃねぇか!」


「カリスマくんも馬鹿なことをしたね」
「教祖様、我々、聖癖教は、正式にカリスマを神の敵と認定しましょう」
「ホホホ、それもいいでしょう。ですが、ジュンを倒した実力、侮れぬ。ユウの到着を待って、今後の策を練りますか」


 トンネル内では一進一退の攻防が続いていた。
 ユーヤの蹴りと包丁のコンボ、ノコッチの財布による攻撃は1つ1つが重く、ステゴを追い込んでいったかに見えた。
「料理人は、戦闘では手を使わない、それが俺のポリシーだ。包丁はOK」
「財布の力をなめるなよ!」
 3人の実力者、その中でも、突出した暴力を持ってしまった故に、的にされる。
 強さが最良とは限らないとは、まさにそうだった。
「ぐふぅ…はぁ…はぁ…」
「どうした!!もう終わりか!!」
 挟撃をくらい、膝を落としそうになったステゴだったが、踏みとどまった。
 そして、彼はぐっと地面に力を入れて立った。
 周囲の空気が震える…。
 次の瞬間、攻撃を繰り出そうとしたユーヤと、ノコッチの動きが止まった。
 いや、攻撃の速度を追い抜いて、ステゴの強烈なパンチが左右に見舞われた。
「強い事…それは常に…最良とは限らない…か…だがそれは、中途半端に強い奴の場合だ。真に強ければ、それが最良だ!!」

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する