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2020年01月04日21:25

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【映画】2010年代 外国映画ベストテン

2010年代 外国映画ベストテン
 
 
1.ニーチェの馬
2.ツリー・オブ・ライフ
3.レゴバットマン ザ・ムービー
4.ブレードランナー2049
5.ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
6.スリー・ビルボード
7.コクソン
8.セッション
9.マッドマックス/怒りのデス・ロード
10.マン・オブ・スティール

次点 
ザ・ウォーク
ライフ・オブ・パイ
ボヘミアン・ラプソディ
 
  
 
2010年代の最後に見て、その年のベストワンになった映画がタル・ベーラの『サタンタンゴ』。ただし、あれは1994年の作品なので、さすがにこのリストには入れられない。だが2010年代のベストに輝いたのは、同じタル・ベーラ監督の『ニーチェの馬』だった。タル・ベーラの映画は他に『ベルクマイスター・ハーモニー』と『倫敦から来た男』しか見ていないが(そもそも日本ではその4本しか公開されていない)、その内2本が桁外れの傑作とは。『ニーチェの馬』は『サタンタンゴ』の黙示録的なヴィジョンをさらに純粋な形に煮詰めた寓話的な作品。「世界の終末」をこれほど芸術的・象徴的に描き出した作品は他に無い。

『ツリー・オブ・ライフ』が2位になったのは自分でも驚き。テレンス・マリックが通常のストーリーテリングから完全に離れ、向こうの世界に行ってしまう分岐点となった作品なので、むしろ苦々しい思いが大きかったからだ。しかし今になってみると、あの映像がまるで自分の過去の実体験のように脳裏に焼きついている。この宇宙の中で人の生には一体どんな意味があるのか…それを通常のストーリーではなく映像のイメージによって伝える本作の価値が、8年経った今になってやっと分かってきた気がする。

3位はこれまた驚きの『レゴバットマン ザ・ムービー』。良いものは良いのだから仕方がない。これまでに映画化されたバットマンの最高傑作。子ども向けアニメの姿を借りて、ヴィスコンティの『家族の肖像』と同じテーマをさらに痛切なタッチで描き出す。誰が何と言おうと2010年代を代表する大傑作アニメだ。

『ブレードランナー2049』は、私がこよなく愛する映画作家ドゥニ・ヴィルヌーヴのハリウッド進出後の代表作として。『メッセージ』も非常に良い映画だし『ボーダーライン』も傑作だが、映像のインパクトの強さで本作に軍配を上げる。なお2020年には、ついにヴィルヌーヴ監督で『デューン』のリメイクが公開される。早くも今年のベストワン最有力候補だ。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は自分でも驚くほど上位に入ってきたが、これは42年間にわたつて作られてきた9部作の完結編『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』に対する失望の裏返しという面が大きい。つまり「私にとってのSWは『ローグ・ワン』で終わっていたのだ」という意思表明。それを抜きにしても、フォースを持たない普通の戦士たちが、勇気とチームワークだけを頼りに決死の闘いに臨む本作が、シリーズの中で一番好きだ。これこそが私の見たかった真のSW。

『スリー・ビルボード』はマーティン・マクドナーの才能が遺憾なく発揮された、罪と赦しの人間ドラマ。脚本・演出から撮影や演技に至るまで全てが完璧。ちなみにマクドナーは長編デビュー作の『ヒットマンズ・レクイエム』(2008)も大傑作。とても奇妙な作品で好き嫌いは分かれると思うが、あれはまるで私のために作られたような映画だ。

ナ・ホンジン監督の『コクソン』は、ホラー映画史上1〜2を争うほどの作品。キリスト教と韓国の土着的な信仰が混ざり合った奇怪な風景。世にも恐ろしく、グロテスクで、謎と魅惑に満ちた作品となっている。

勘違いしている人も多いようだが、『セッション』は音楽を題材にしているものの、音楽映画ではない。銃弾の代わりにドラムスの音が飛び交うアクション映画だ。鬼軍曹と新兵の闘いを描いた戦争映画のようなものに近い。音楽に取り憑かれた男たちの狂気の闘い。音楽/音響はもちろんのこと、『ゴッドファーザー』を思わせる撮影も見事。

『マッドマックス/怒りのデス・ロード』は『セッション』と兄弟のような作品。神話的な物語構造と映像の中に、人間の再生ドラマやフェミニズム的なメッセージも盛り込んだ見事なアクション映画。

この手の企画で10位という枠は、「周りの評価はさほど高くないが個人的に偏愛する作品」が占めるものと相場は決まっている。何にしようかと悩んだが、作家主義に沿って見ていくと、ザック・スナイダーが入っていないことに気づき、『マン・オブ・スティール』を選ぶことにした。スーパーマンを重苦しい展開でやったことで賛否両論の大きい作品だが、私は圧倒的な肯定派。アメコミをシリアスにやればいいというものではないが、本作はストーリーもヴィジュアルも全てが成功している。ザック特有の銅版画のような絵作りは、美術品そのものだ。

 
惜しくもこぼれた3本。『ザ・ウォーク』は、世界貿易センタービルで綱渡りをした男の実話を基に「世界との和解」を描いた青春映画。2010年代で最も過小評価された傑作の1つだ。『ライフ・オブ・パイ』は3Dの可能性をフルに活用した作品。ジュブナイルのような冒険ものに見えた物語が、次第に悪夢的なファンタジーに変貌し、最後には思いもかけない残酷な現実を描き出す。芸術性と娯楽性が最高のバランスを取った、アン・リーの最高傑作。『ボヘミアン・ラプソディ』は、バランスの悪い部分が多いのも事実だが、長年のクイーンファンとしてはひとかたならぬ思いもあり… 
 
 
2010年代の映画界最大のトピックと言えば、Netflixなどのネット配信作品が映画の新しい形として登場し、息を呑むような早さでレンタルDVDを駆逐してしまったことだろう。この流れは今後も衰えることはなく、映画の鑑賞形態としては、ネット配信が最も一般的なものになっていくかもしれない。それが映画の芸術性や製作スタイルにどのような変化を及ぼすかは、これから始まる2020年代に明確になるはずだ。


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