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2017年10月14日09:35

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マスターができるまで 久々 1405

それから数日が過ぎた。
いよいよ日曜が近くなった。
俺は水泳クラブでの練習のあいまをみて、カワタカを呼び出し、例の約束を反故にしてほしいむねを伝えた。
ごねるのかと思っていたら、カワタカは俺が肩すかしを喰うくらいのそっけなさで快諾してくれた。
それでも俺が
『残念じゃわぁ、、』
と未練たらたらで言うと
『またええ時間がくるて』
と慰めとも投げやりともつかない返事をして、カワタカは他の友人達と楽しそうに帰宅して行った。
なれなれしく
『トシヤ』
『トシヤ』
と言っていた。
中には下級生もいるようで
『カワタカさん』
と尊敬のまなざしを送っているヤツもいた。
俺のあまりよく知らないヤツらばかりだった。
水泳クラブを通じて出来た友人や後輩のようであった。
シゲイチはといえば相変わらず欠席が続いていた。
俺はシゲイチの体調も気になった。
シゲイチの母親の望んでいた検診も近いはずだった。
欠席と言えば、水泳クラブの一員ではなかったが、カツマも登校日などに顔を出す事はなかった。
父親の事件が尾を引いていることは明らかだった。
学校側からの申し伝えがあったからなのか、新聞社からの取材のようなものは一切なかったし、帰宅途中を狙っての盗撮のようなものもなかった。
影では何か言っていたのかもしれないが、友人達も表立ってどうこう言うものはいなかった。
今は夏休み中だったので新学期がはじまると訓示の好きな校長あたりからなにか話しがある可能性はあったが。
そんな感じで迎えた日曜だった。
ヒトミ達は朝早くから大騒ぎをしており、元気になった母親との再会を喜んでいた。
俺は、それでもまだカワタカとの約束を反故にしかねており
『なぁ。
ほんまにワィも行かんとおえんの、、、』
と言い、母に
『おえんいうたらおえんの
あきらめなせ』
と叱られた。
母の運転する車に父と俺、そして子供達が乗車し、病院に着いたのはお昼まえだった。
面会の手続きをすすまも惜しんでヒトミ達は走るようにして美保子叔母の病室に急いだ。
父が
『こりゃ!
おまえら走ったらおえんぞ
ここは病院なんじゃから』
と制止したが、聞くような彼女達ではなかった。
父と母がそんな従姉妹の後を追った。
俺はさも嫌そうにダラダラ歩きでその後をついて行った。
その時、廊下の観葉植物の間から、待合室の長椅子の上にどこかで見かけた人が腰掛けているのを見た。
誰だろうと記憶の糸をまさぐりつつ、俺は父達に遅れて美保子叔母の病室に辿り着いた。
リエに纏い付かれている美保子叔母は満面の笑みを浮かべて俺を迎えてくれた。
梨をむいていた祖母が
『遅かったがな
もう来んのんかと思うた』
と嫌みを言った。
実伯父が
『ここはやたら広いから迷子にまったんかと思うたぞ』
とこれまた刺のある物言いをした。
リエが
『ふふん』
と笑い
『ヨシヒロちゃん、本当は、今日、お友達とのお約束があったから来たくなかったのよ
だから歩く足取りも重たいんでしょ』
と小賢しい事を言った。
実伯父と祖母が目を見交わせ、そして、何故か母の方を見て
『約束?』
『なんでぃ?』
と聞いた。
俺が
『そがん事、お母ちゃんに聞かんで、わぃにじかに聞けやぁ』
と思った。
その時、最前、待合室で見た人が誰であったか不意に思いだした俺は
『あ、そうじゃった』
と祖母達が驚くような声をだした。
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