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2007年10月15日22:57

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ラーメン屋幻想

名古屋・栄にある大企業で団体交渉があった。
ちょっと時間があったので「名古屋麺屋横町」に行った。
新しい店がオープンしていた。
「旭川ラーメン・青葉」だ。
醤油味のラーメンだった。

以前、今池にあっためちゃくちゃうまいラーメン屋の味に似ていた。

20年ほど前、今池の外れの裏道にその店はあった。
店といっても、たしか扉がなかった。
木造長屋の一角にあって、のれんをくぐると屋台のような構造の狭い所だった。
木のカウンターだけで、3人も座ればいっぱいだ。
五十がらみのおばさんが、ひとりでラーメンを作っていた。

あるとき、なにげなくその店に入ってチャーシューメンを注文した。
出されたラーメンを口にして、まさに人生観が変わるほどの驚きだった。
いや、少し大げさだが、すくなくとも料理に対する価値観が激変するほどの衝撃だった。
醤油ベースのスープには、野菜、鶏ガラ、昆布のほかに名古屋特有の薬膳出汁を使っているようだった。
少し細めの麺に、そのスープがよく絡み、食べている間しあわせな気分になったものだ。
一滴も残らず完食したあとも、しばらく口の中をうまさの余韻が漂っていた。
思わずおばさんに「ここのラーメンめちゃんこうまいね!」と言った。
おばさんは得意げに少しにやりと笑った。

残念なことに、この店は数年で閉店になった。
以来、評判のラーメン屋にいろいろ行ったが、ここに勝る味に未だ出会えない。
今日の旭川ラーメン屋も、風味はなんとなく似ているが、足下にも及ばない。

不思議なことに、この店は一度もグルメ雑誌などに紹介されたこともない。
今池あたりに詳しい人に聞いても「そんな店、あったっけ?」と言われる。
今ではもう付近の建物もずいぶん変わった。
どこの場所にあったのかもよくわからない。

はたして、あの今池の汚いラーメン屋は実在したのだろうか?
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