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2007年09月18日02:42

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9月14日 水谷修先生講演概要 その3

 6年前、水谷がまだ夜間高校の教師だった頃、自分のクラスで
5万円が入った生徒の財布が消えてしまった事があった。
 ある生徒から、クラスの女の子が財布を盗っているところを
目撃したと水谷に連絡があった。水谷は目撃した子に、
このことは黙っておくようにと言った。
 彼女のお母さんが入院していて、その為のお金欲しさで
ある事は容易に想像できた。
 クラス会の時、今回の事件で誰が悪いのか?という話になった。
私は言った。「水谷が悪い。水谷がクラスに鍵をかけなかった
ために起こった事。教室の壁にも、管理責任者:水谷と
ある。教室で起こった事は全て自分に責任がある」
クラスの生徒が事件を起こし、賠償しなければいけない時が
あったが、そのお金を、他の先生から借りてでも、
水谷が全部払って生徒と一緒に謝った。それが上に立つ者の責任。
今回も全て水谷の責任。
 それから何年かたって、そのクラスの生徒の卒業式があった。
夜間高校に通う7割〜8割の子が小学校・中学不登校だった子。
そんな子が初めて味わう卒業式だから、毎年卒業式は
生徒・先生含めて大泣きに泣く。
 卒業式が終った後、ある一人の女の子が、水谷を呼び止め、
図書室に連れて行かされ、2人きりにさせられた。彼女から
そっと分厚い封筒が水谷に手渡された。中をそっと開けると、
数十枚の千円札があった。はっきり数えていないが、50枚
あったんだろう。その時、事件のことを思い出した。彼女は
「先生、私が盗んだの知ってたんだよね。何故、私のこと
責めなかったの?」「ああ、知ってたなあ。
もし、あの時、お前が犯人だと詰め寄っていたら、
お前は学校に来れなくなるだろうと思った。かばったのは第一
お前はお金を平気で盗るような人間じゃないと知ってたから。
入院しているお母さんの為だったんだよな。あの事件は、
全て水谷の責任。お前から、『先生、母さんが入院したから
お金貸して』って言われるくらいの人間関係を作って
やれなかった。だから水谷の責任。この封筒、お前の
卒業プレゼントだ」
 子供は、不完全だから子供なんだ。なのに、大人達は
不完全な子供の不完全なところを責めて追い込んでいる。
不完全な子供の今・現在を、不完全だった子供の
不完全だった過去を、不完全だった子供が犯した過去の
出来事で今・現在の子供を責める大人達。そんな
大人達を水谷は許せない。

「今、ここに来ている中学生・高校生で、今までに
誰々が薬物を使っているといった、薬物の話を
ちょっとでも聞いた事がある子、手を挙げて」
(結構、多くの生徒が手を挙げる)
中学生・高校生の約25%が、誰誰が薬物を使っているという
ような薬物の話を耳にした経験があり、39人に1人の
割合で実際に使っている学生がいる。今は、かつてないくらい
世間一般に、そして子供達の間に薬物が急激に広がって
きている。荒川区の近くだと、上野が特に酷い状況になって
きている。
 水谷が薬物と闘うきっかけとなったのは、マサフミという
一人の生徒に出会った事。マサフミは高校生の入学式に
シンナー吸って、ラリって出席してきた。彼は小学5年の
時に、暴力団の仲間に入り、6年の時には既に
薬物に手を染めていた。そんな彼を水谷は必死に更生させよう
とした。「先生、俺、家にいると薬物やっちゃうから、
先生の家に泊めさせてよ」「ああ」。そういって1週間から
10日くらいの間、水谷の家に泊まる。この間は、水谷の
目が光っているからマサフミはクスリをやらない。
「俺、もう大丈夫」といって水谷の家を離れ、彼の家に
戻る。そして3〜4日も経たないうちに、またクスリをやる。
そして、また水谷の家に来て、10日くらい暮らし、
全くクスリをやらなくなったと思って家に返すと、また
クスリをやる。こんな生活が何度となく繰り返された。
 ある日、マサフミは新聞の切り抜きをもってきた。
「先生、新聞に、薬物は依存症という病気で病院じゃなきゃ
治らないって書いてある。この記事に、薬物依存症の
病院が神奈川県にもあるって書いてある。やっぱ、
先生の近くにいても治らないから、ここに行ってみる」
水谷は大変な過ちを犯した。水谷はムカッときた。
「水谷がこれほど心血注いでお前がクスリから足を洗うために
苦労しているのに、水谷では治らないってどういう事だ」
水谷はマサフミを冷たくあしらった。その後、マサフミは
シンナーを吸って、そこからくる幻覚症状で走るダンプに
飛び込んでいって死んでしまった。水谷がマサフミを
殺してしまった。
 マサフミの通夜の時、彼を可愛がっていた暴走族の横浜
連合の連中が大勢バイクに乗って花束持って駆けつけてきた。
マサフミのお母さんは、人が変わったように、彼らに
近付いていき「この人殺し、マサフミを返せ」と詰め寄った。
お母さんの勢いに押され、暴走族の連中は花束を置いて
立ち去ったが、お母さんは「バカヤロー」と言いながら、
その花束を足で踏んで粉々にしていた。
 マサフミが火葬されて、彼の灰を目の前にした時、
お母さんは言った。「シンナーが憎い。シンナーはマサフミを
2回殺した。1回目は命を、2回目は骨まで奪った」
「お母さん、マサフミの橋渡しをしてあげましょう」
普通の人間なら火葬しても大きな骨は残るのに、マサフミの
骨はシンナーにやられていて、ほとんど大きな骨が
見付からなかった。やっと5cmから10cmくらいの骨を
1本見つけ、お母さんとそっと橋渡しをしようとしたが、
そんな僅かな骨さえも、途中で粉々に砕け散ってしまった。
お母さんは、泣き叫び、高熱のマサフミの灰を抱きかかえては
地面に叩きつけ、それを繰り返していた。水谷は
はっきりした意識がなくなっていた。意識を取り戻したのは
火葬場の職員さんから声をかけられてからだった。
見るに見かねたのだろう。
 後日、16年間の教師生活に終止符を打とうと荷物を
整理していたら、マサフミが持ってきた新聞の記事の
切り抜きを見つけた。水谷は、教師を辞める前に
この病院を訪ねてみようと思い、実際に行った。
 そこの先生から水谷は言われた。
「水谷先生、マサフミくんをあたなが殺したんだ。
あなたは愛で病気を治そうとした。愛で病気が治せるのか?
薬物依存症はれっきとした病気。愛で風邪が治らないのと
同じ事なんだ」
 そこから、薬物との闘いが始った。

(続く)
これでやっと半分過ぎたくらいです。
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