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2022年10月23日23:26

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足利義教御所に現れる髪切り女房の妖怪

『看聞日記』永享十年(一四三八)二月七日条
聞いたことだが、将軍の御所中に女房の姿をした妖怪が現れるらしい。その妖怪は女房の髪の毛を切ったり、あるいは小袖を切ったりする。また、切られている人の目には妖怪が見えるが、他人には姿が見えないそうだ。不思議なことである。御祈祷をしても、その妖怪は消え去らないという(以上、現代語訳)。

「女房の姿をした妖怪」という箇所は、底本で「変化の物」とあり、そこに「女房と云々」という割注が付されている。

この話を聞いて思い出すのは、同年一月二十日条である。

住心院実意が新年の挨拶に来たので対面して、一献の酒を飲んだ。住心院は、今日から室町殿御所の御壇所に詰めるそうだ。このところ室町殿御所では髪切りの邪気がひどいので、その邪気を退散させるために御祈祷をなさるそうだ(以上、現代語訳)。

この「髪切りの邪気」とは、「髪切り女房の妖怪」と同列のものだろう。

そしてまたこの妖怪は、以前の日記にも書いた事件(「足利義教御所内の紊乱」)とも関連するようだ。煩を恐れず、その箇所を再掲する。

『看聞日記』永享九年十一月六日条
阿野実治中将の娘である二条も将軍に処罰されて、稚児のように髪を切り払われたそうだ。これは、後花園天皇陛下が室町殿御所へお出ましになっている最中の出来事らしい。それで、二条はすぐに御所から出て行ったという。

室町殿の上様(正親町三条尹子)が御気絶なさったのも、天狗の仕業であった。この ように、室町殿御所中で不思議な事が数多く起こっているらしい(以上、現代語訳)。

稚児のように髪を切られた二条の生霊あるいは死霊が、この妖怪の正体ではないか。正親町三条尹子を気絶させた「天狗」も、同じ妖怪の仕業なのかもしれない。
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