伝える手間

人にものを伝えるのは難しい、と言うのは、伝わりにくいことばかり考えたり思いついたりする人間に限ったことなのかもしれませんけれど、「素直に思ったことを言えば伝わる」などと、いかにもカッコつけて難しいことを言おうとする人にしか通用しないようなアドバイスが世の中には多すぎて腹が立ちます。もちろん、上手に伝えるための正当な努力を教えてくれる情報もそれなりに出回っていますし、ありがたく使わせていただくわけですけれど、努力と言うにふさわしい手間がかかります。立て込んでくるとどうしても一つ一つのことに十分な手間を避けず、必要な情報が伝わらず、さらに忙しくなる原因となります。

判断が難しいのは、伝えてるときには「うまく伝わっていない」のがどの経路なのかがわからないことで、同じ程度の伝え方をしていて8割9割はうまく伝わっていたりすると、伝え方が悪いのではなく、伝えられた側に問題がある、と思いたくなってきます。ひょっとすると、冒頭のような世迷言は「自分はちゃんと思ったことを素直に伝えた。だから、伝わらなかったら相手に原因がある。」と思いたい人向けの言い訳用なのかもしれません。

世の中には、結局困るのは自分であっても、自分が原因でないなら失敗してもよい、と思っている人がそれなりの割合でいるようで、言い訳がたっぷり用意されています。ただ、困りたくないと思うならば、人のせいにできるかどうかにかかわらず、自分にできることは全てやるべきですし、それができなくて失敗したからと言って、人のせいだから仕方ないと言っている暇があったら、どうやったらうまく進められたか（責任を押し付けた誰かが失敗の原因にならずに済んだ方法とかを含め）考えるべきでしょう。とはいえ、そういう責任の押し付け合いで自分が被害に遭うと次をうまく進める方法どころではありませんから、そちらの対策はとるようにしています。

ともあれ、伝わらないことによる失敗で、伝えるための手間をかけられないような悪循環を生まないため、普段から伝え方の技術を磨くことは怠らないようにすべきでしょう。もともとはこの日記もそれを含めた始めたのですが、最近はだいぶ伝える力のない文章になっているような気がします。