日本人の書き手に依る「ロマンス」テーマのクトゥルー神話アンソロジー。
●新熊昇「アルハザードの初恋」
同じ作者のアルハザード・シリーズの前日譚とも云うべき話。ネフレン＝カ王と王女ネフティスの秘密に少年時代のアルハザードが迫る。初々しさを殘しているものの、既に立派な魔術師。ロマンスを絡ませたオカルト冒険もの。
●天満橋理花「エウロパの海に眠るもの」
とある喫茶店を足場に活躍する二人組のアイドル（一部ヴァーチャルアイドル）は、店镸兼マネージャーが海で釣って來た奇妙な色彩のタコらしきものを見る。折しも木星の衛星エウロパでサンプルを採取した探査衛星「うみねこ」のカプセルが海で回収されたものの破損し中は空だった。ロマンス味は薄く異形愛の有るホラー。
●橋本純「海に揺れる君の瞳は・・・」
インスマスもの。第二次大戦前の米国を舞台にエドガー・フーヴァー達から追われる日本陸軍の密偵とインスマス出身の娘とのロマンスを軸に歴史の隙�里�埋められる。「インスマスを覆う影」の補完補完作品の一つでもあるロマンスもの。
●浅尾典彦「白い花嫁」
アジアのとある半島を舞台に行方不明の学者を探しに行った男は、滅亡したバイアク族と彼等が崇めていたハスターの事を知る。彼は通訳でバイアク族の崇拝を引き継いだルワーネ族のミミと仲良くなるが、彼女は儀式で重要な役割を担っていた。カルコサは地球外として扱われる事が多いが此処ではアジア。作中に登場するミロガンダはクトゥルー神話由来ではなくウルトラマン。サブタイにも用いられている。秘境ものの風味を持つ冒険ロマンス。
●御宗銀砂「九十九度の春は来ない」
戦前のアラスカが舞台。おじを探す青年と弟を探す美女は故障したバスを放棄して運転手と共に雪の中を進み、とある屋敷に辿り着く。そこには一人の男と少女が住んで居た。行方不明に成った者の持ち物も。ウェンディゴとは何か九十九度の春を迎える迄の�諒飮�される不死の法とは何か。不死と成った者と成らなかった者との�里鵬�たわるロマンスが示唆されるだけなのが残念。全体にホラーサスペンス。
●松本英太郎「深き眠り」
ヴルトゥームは自身の生贄に供されたアマゾネスのレニアに興味を持ち、火星に居ながらにして、彼女を守りながら交流を楽しむ樣に成る。しかしヴルトゥームはそのライフサイクルから一度眠れば十年は眠り、その�里縫譽縫△惑�を取り時代も大きく動くのだった。人と邪神の異形愛を描いたロマンス。
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