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2019年12月28日00:55

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ア・ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・男はつらいよ

もし寅さん映画を一本も、あるいはほとんど見たことがなく、「試しに見てみたいのだが、50本もあったらどれを見ていいのか分からない」という人のために「最初に見るべき寅さん」についてガイド。中にはイマイチな作品もあるので、最初にそれを見て「こんなものか」と思われたらたまらない。素直にこのガイドに従うべし!(`・ω・´)  
 
  
 
★最初に見るべき寅さん映画
『男はつらいよ 望郷篇』
 (第5作/1970年/マドンナ=長山藍子)

最初の1本は、これ一択。シリーズのエッセンスが最も分かりやすい形で凝縮された名作。冒頭から「死」のテーマが提示され、堅気として生きられない寅次郎の孤独と疎外感が描かれていく。喜劇の形を装ってはいるが、その内実は、今公開されているケン・ローチの『家族を想うとき』にも匹敵する切なさ。
『男はつらいよ』は本来この作品で完結するはずだった。ところが本作のあまりの人気に、さらなるシリーズ化がなされることになった。つまり本作は5本で終わるはずだった寅さん映画の集大成であり、同時にその後の基本フォーマットを決定づけた作品でもある。最初に見るべき寅さん映画は、文句無しにこれ。
 
 
★2本目に見るべき寅さん映画
『男はつらいよ 寅次郎夢枕』
 (第10作/1972年/マドンナ=八千草薫)

私がシリーズのベストマドンナだと思うお千代さんこと八千草薫が登場。彼女の圧倒的な魅力と繊細な演技力によって、シリーズ中屈指の「恋愛悲喜劇」になっている。本作のあの結末があったからこそ、寅さんは永遠にマドンナと結ばれない宿命を背負ったキャラになったとも言える。その意味で本作もシリーズのフォーマットを決定づけた1本だ。終盤、とらやでお千代さんの話を皆が冗談だと思う中、真実に気づいた倍賞千恵子の表情がまた切ない。 
 
 
★3本目に見るべき寅さん映画
 
『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』
 (第17作/1977年/マドンナ=大地喜和子)

シリーズ中の異色作にして、1〜2を争う最高傑作。つまりゴジラシリーズにおける『シン・ゴジラ』や眠狂四郎シリーズにおける『無頼剣』のようなポジション(笑)。山田洋次が寅さんの枠を借りてフランク・キャプラ映画の日本版をやってのけた。シリーズの中では明らかに浮いていて、いつものフォーマットをかなり崩しているのだが、1つの人情コメディとして見事としか言いようの無い出来映え。とりわけ陽性な1本であり、山田洋次の映画話術が冴えわたる。
 
 
★その次に見るべき寅さん映画

『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』
 (第11作/1973年/マドンナ=浅丘ルリ子)
『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』
 (第15作/1975年/マドンナ=浅丘ルリ子)
『男はつらいよ ハイビスカスの花』
 (第25作/1980年/マドンナ=浅丘ルリ子)

『男はつらいよ』の恋愛映画としての側面を極めた、俗に言う「リリイ三部作」。初期の喜劇性は少し控えめになり、「大人の映画」としての渋い味わいを堪能できる。実は私、『ハイビスカスの花』以降の作品は、今回の『お帰り 寅さん』しか見ていない。理由の1つは、『ハイビスカスの花』のラストの台詞が素晴らしすぎて、もうこれ以上は蛇足ではないのかと思えてしまったからだ。3作の中でも『寅次郎相合い傘』が特に素晴らしい。
 
 
 
ここまで順番通りに6本見たら、もう寅さん映画の魅力はよく理解出来たはず。あとは1本目から順番に見ていけば良い。ちなみに3作目と4作目は監督が山田洋次ではないため、だいぶカラーが違うしクオリティもイマイチ。間違ってもそこで挫折しないように。その後に真打ちとも言える『望郷篇』が登場し、長期シリーズが本格的に始まるのだから。
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