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2018年11月24日16:16

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歌枕紀行「後宇多天皇陵」2

 さて、般若寺から「いざ高雄へexclamation」と山道に踏み入ると、いきなり倒木だらけで進行不能にげっそり どうやら先の記録的強風でやられちゃったよう。やむなく予定を変更して、以前から気になっていた別の峠道を越えて、嵯峨野に出ることにしました。

 テクテクのぼってゆくと、左右の崖にへばりつくように、結構なお屋敷が建ち並んでいます。防犯カメラだらけで、どう見ても堅気じゃないような・・・冷や汗 やがて山道となり、峠を越えて竹林のなかをしばらく下ってゆくと、後宇多天皇の御陵のそばに着きました。

 後宇多天皇(1267-1324)は、南北朝の動乱を引き起こしたヤンキーエンペラー・後醍醐天皇のお父さん。20才そこそこで従兄弟に譲位してからは、自分の子孫と従兄弟の子孫とが交互に即位してゆきますが、そんな生ぬるい状態に我慢のならない後醍醐天皇は、お父さんが亡くなるや否や、ブチ切れてしまいます。

 来年即位なさる皇太子さまも、長いあいだ待たされた末に、どう見ても中継ぎなので、「大丈夫かしら・・・?」と心配になりましたがく〜(落胆した顔)

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◎昔の内侍の尚侍(カン)の殿、近ごろ院号ありて、萬秋門院と聞こゆるも
(昔、後宮で”内侍の尚侍の殿”と呼ばれたお方は、近ごろ院号を賜って”萬秋門院”と申し上げるが、そのお方も)

 故院の御蔭にてのみ過ぐし給へれば、拠り所なく哀れげなり。
(これまで故院の御庇護によって、どうにか生活なさっていたので、今は拠り所もなく寂しげである。)

 御四十九日は、八月(ハヅキ)十日あまりの程なれば
(御四十九日の法要は、八月十日あまり(今の9月初旬)の秋の盛りなので)

 世の気色(ケシキ)何となく哀れなるに、女院・宮たちの御心の内ども
(世の中の風物の何もかもが悲しみを誘い、萬秋門院や皇太子さまたちの御心の内は)

 朝霧よりも晴れ間なし。十五夜の月さへ掻き曇れるに
(朝霧よりも煙っていて晴れない。中秋の名月さえ曇って見えず、気を滅入らせる。)

 故院の御位の御時に、宰相の典侍(スケ)とて候(サブラ)ひしは、雅有の宰相の娘なり。
(そういえば、故院の御在位中(1274-1287)に、”宰相の典侍”と呼ばれてお仕えしていた人は、雅有の宰相の娘であるが)

 その世の古き友なれば、「同じ心ならん」と思(オボ)し遣るも、睦(ムツマ)しくて
(お互いにその頃からの旧友なので、「きっと同じ気持ちでしょうね・・・」と思いやりなさるにつけても、様子が気になって)

 萬秋門院より宣(ノタマ)ひ遣はす
(萬秋門院よりお贈りになった歌)


【内侍の尚侍の殿】一条実経の娘・頊子、1268-1338。後宇多天皇の寵愛によって後宮で出世し、17才も年下の後二条天皇(後宇多の長子)と結婚するが、子もできぬまま崩御に伴って出家した。「内侍の尚侍」は後宮の女官長の意
【院号】出家した貴族に贈られる称号。女性には宮中の門名がつけられる。頊子は4年前に賜った
【故院】後宇多天皇、1267-1324、亀山天皇の次男。後醍醐天皇が即位すると、上皇として政界に返り咲くが、権力欲の強い息子と折が合わず、3年前に隠居。この年の6月25日に嵯峨野の大覚寺で崩御した
【宮】後二条天皇の長子・邦良親王、1300-1326。後宇多系の嫡流と目されたが、まだ幼かったため、いったん叔父の後醍醐が即位して、それを継ぐことに決まった。祖父の臨終に際して、天皇としての心構えを細かく遺言されている
【雅有】飛鳥井教定の子、1241-1301。飛鳥井家は藤原氏の庶流で、代々蹴鞠の師範をつとめた。その娘なので、故院や頊子と同世代か


      仰(アフ)ぎ見し 月も隠るる 秋なれば 

                     理(コトワリ)知れと 曇る空かな

(昔、宮中で一緒に中秋の名月を楽しみましたね。でも今は、尊敬申し上げていた法皇さまがお隠れになった秋なので、「道理を知りなさい」と言わんばかりに空も曇っているわ・・・)


【月】後宇多天皇をたとえる


「いと哀れに悲し」と見奉りて、御返し、宰相の典侍
(宰相の典侍は「ほんと、しみじみと悲しい歌だこと」と同情申し上げて、お返しした歌)


         光なき 世は理の 秋の月 

                    涙添へてや なほ曇るらん

(この世の光である法皇さまが亡くなられたので、秋の月が曇るのも道理です。そのうえ私たちの涙が加わって、なおさら曇ることでしょう)

                            『増鏡』第十七・春の別れ

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