私の会社の川側の窓から佐藤工業という会社が見えます。
私の人生を方向付けた本の一冊、ノンフィクション作家吉村昭氏の小説
『高熱隧道』に登場するゼネコンです。
昭和42年刊行された本作は、私の小学校に文庫化されて所蔵されていました。
日本電力黒部川第三発電所水路トンネル、欅平駅〜軌道トンネルの工事の話なのですが、
黒部ダム設営に際し、資材運搬用人道と水路トンネルを設置する計画でした。
現場地下には高熱の断層が通り、30m掘り進んだだけで岩盤温度は摂氏70度を突破。
岩盤温度は掘り進むと166℃に達し、ダイナマイトが自然発火するに至ります。
また、外は酷寒で、泡雪崩で鉄筋コンクリート造の宿舎が破壊されるなど困難を極めます。
富山県警察部から工事中止命令が出されるものの、国策で工事は続行、
すさまじい犠牲の上に隧道は貫通。
喜ぶのも束の間、現場を監督した主人公は人夫頭の警告を受け、逃げるように峡谷を去ります。
どんな犠牲を払ってでもやらなければならない仕事は、
成功しても直接携わった人間が幸せになるとは限らない。
と言う現実を刻み付けられた作品であり事実でした。
タビリスの記事によると、黒部峡谷鉄道の欅平より先、黒部ダム方面に抜けるルートの
受け入れ拡大が検討されていることがわかりました。富山県と関西電力が協議中だそうです。
黒部観光は、立山黒部アルペンルートがメインで、ロープウェイ、ケーブルカー、
トロリーバスを乗り継ぎ、富山の立山から黒部ダムを経、長野県の信濃大町に至ります。
北アルプスを横断する、大規模山岳観光コースとして有名です。
それに、宇奈月から欅平を経て黒部ダムへ至る「黒部ルート」を追加しようと言うのですが、
宇奈月〜欅平間のうち、現時点では宇奈月温泉から欅平まで、黒部観光鉄道で乗車できます。
その先、欅平駅から黒部峡谷鉄道の工事用線、竪坑エレベーター、関西電力黒部専用鉄道、
インクライン、専用地下道バスを乗り継いで、黒部ダムまで、18kmに及ぶ地下ルート。
この内の関西電力黒部専用鉄道が『高熱隧道』な訳です。
資材用鉄道で、一般は1996年から関西電力の公募見学会のみ乗車、基本抽選です。
「黒部ルート見学会」は、平日のみ1日60人、年間34日間で2,040人の受け入れです。
応募倍率は1.8〜9.5倍。平均4倍程度。私も何回か応募しましたが外れています。
しかし、黒部ダムの着工時、国は「竣工後は公衆の利用に供する」事を条件に
工事を許可したと言う所から、富山県が今年から受け入れを交渉、
人数や料金設定などを協議し、土日を含めて有料で開放する方向なのだそうです
関電は実現には最低3〜5年の安全対策工事が必要と主張しているそうです、
は設備が貧弱で、一般公開するには法令の基準を満たすのが困難とか、鉄道営業法や鉄道事業法、
道路法、道路運送法などの法律や根本が作業資材輸送のインフラである為、輸送能力が低い
とか言う問題もありますが、なんとしても実現して欲しいものです。
ログインしてコメントを確認・投稿する