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2018年01月27日22:36

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『二十六夜待ち』

 東日本大震災から間もなく7年、ポスト震災映画とでも呼ぶべき作品がたくさん作られて来たが、これはそれが新たな段階に進んだことを感じさせる作品。震災(津波)によって人生を分断された人間と、そうではないもので分断された人間とが同格で対峙し身体を交えあう。津波で故郷ごと肉親を失っていて「震災の記憶を捨ててしまいたい」女と、津波以前にその内陸寄りの町に迷い込んでいて「それ以前の記憶がない、自分が誰だか名前さえ分からない」男。2人はなかなか言葉に出来ない思いと恐れを抱えながら、向き合おうとし前に進もうとする。

 その言葉にできない無言になるしかない もどかしさを、越川道夫は、溜めに溜めて演出する。叔母夫婦のところに身を寄せる妹のことを心配した兄から「こっち(東京)に出てこいよ」と云われても、しばらく言葉が出てこない。そのリアルさ。ヒロインへの思いを言葉に出来ず身体でしか表現できない男。しかも自分が消えてなくなってしまいそうな恐れを抱いているゆえか、性的に達することができない。そのリアルさ。井浦新と黒川芽以、ともに進境著しい演技をみせている。
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