黒沢清の「散歩する侵略者」
侵略者がどういう生物なのか、全く見せない潔さ。
「ボティ・スナッチャー」(78)のようにすり替わったのではなく、
「ヒドゥン」(87)のように寄生するタイプのようなのだけど。
概念を奪われること
それが、ライト・コメディのタッチで描かれる。
松田龍平のとぼけた感じが実にいい。
長澤まさみは、大河ドラマとか見ていても、違和感があったのだけど、今回は見事に腑に落ちた。
あの場面のあの表情は美しかった。
武闘派の恒松祐里はアクション女優かと思ったら、ふつうの女優さんとのこと。
病院で児島一哉相手の、あの立ち廻りは並じゃない。
やはり、セットには×がたくさん。
松田・長澤の家には耐震補強のための×があるし、長澤の会社にも。
そしてカーテンは揺らぐ。
今回も長澤と松田が車で移動する場面は、宙に浮いたような感じだった。
だが、今回のその場面はタルコフスキーの「惑星ソラリス」(72)の
ブリューゲルの「雪中の狩人」を空中浮遊しながら見る場面を想起させた。
そうなのだ、この映画はタルコフスキーに通じている。
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では、WOWOWで放送されたもう一つの「散歩する侵略者 予兆」
これ、見たさにWOWOWに加入したが、まだ、最後まで見ていない。
高橋洋が脚本になると、ここまで違うのか。
染谷将太が右手に変調を来すという「寄生獣」を想起させる場面があったり
概念を奪われることが、こんなにも怖いこととして描かれるとは。
なんといっても、東出昌大。
まるでクリストファー・リーのようだ。
映画版でもうさん臭い神父役で強く印象に残ったが、このドラマの東出は、夏帆や染谷との身長差を活かし、白衣をマントのように翻している。
そして、カーテンが揺らぐ、揺らぐ。
黒沢清は風の映画だなぁ。
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高橋洋は、8月の「カナザワ映画祭」でのトークイベントで話を聴いた。
彼の監督としての新作も見たのだが、そのことはまた別に書く。
WOWOWのドラマの映画館での上映も決定したとのこと。
http://yocho-movie.jp/
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