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2017年07月07日03:49

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メルケル四選に「王手」(下)


今年5月14日にドイツで最大の人口を持つノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州で州議会選挙が行われ、アンゲラ・メルケル首相が党首であるキリスト教民主同盟(CDU)が大躍進した。この州が牙城である社会民主党(SPD)は、前回の選挙に比べて大きく得票率を減らして、大敗した。
SPDは今年1月に欧州議会のマルティン・シュルツ前議長を首相候補と党首に選んで以来、一時全国での支持率がCDUと並び、党員数が1万人も増えるなど、上昇気流にあった。それにもかかわらず、SPDがNRW州で惨敗したことは、「シュルツ・フィーバー」が一時的な興奮状態にすぎなかったことを示している。
シュルツの失敗は、「社会保障を拡充し、所得格差を減らす」と宣言したものの、具体的な政策プログラムをなかなか発表しなかったことだ。
SPDはNRW州だけではなく、今年行われたザールラント州、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州での議会選挙でも得票率を減らして負けている。
私は、メルケル氏が今年9月の連邦議会選挙でも勝利し、首相四選を実現するのは確実だと見ている。その理由は、英国のEU離脱、米国でのトランプ大統領の誕生、イスラム・テロの増加、ロシアやトルコの強権的な態度など、世界中に不透明性が高まっているために、ドイツの有権者が安定を望んでいるからだ。
公共放送局ARDが今年5月に行った世論調査によると、回答者の81%が「私の経済状況は良い」と答えている。そうした時代に、有権者はシュルツを首相に選ぶという実験はしないだろう。彼らはむしろ、メルケルという欧州で最も経験が豊富で、リーマンショック、ユーロ危機、ウクライナ危機など様々な危機に対処してきた政治家を首相に選ぶに違いない。
メルケルが4期目を最後まで務めると、在任期間は16年になる。ヘルムート・コールと同じ年数だ。メルケルの強さ、そして弱点は有力な後継者がいないということである。生涯の大半を東独で過ごしていた彼女はCDU本流ではなく、コールに抜擢されて政界の表舞台に突如として現れた、「横入り組」である。このため保守本流からは「政策が左派的」と白い目で見られている。だがメルケルにとってこの任期が最後になることは確実なので、CDUは真剣に後継者探しを始めなくてはならない。ドイツが抱える大きな難題である。
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de




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