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2017年05月20日09:58

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マスターができるまで ナツコの恋 116

ハルキの物言いにギョっとした母が後ずさりながら
『ごめんごめん』
と謝罪し、
『に、してもどしたん、急に、気色ばんだもの言いして、、』
と言った。
ハルキは
『こっちこそ、ごめん、ごめん』
と笑い、
『大切なモンじゃから、つい、キツイ言い方になってしもうて、、』
と謝った。
母は
『いいや。
悪いんは私の方じゃけんど
でも随分これは厳重にしとんじゃなぁ、、』
と聞いた。
ハルキは
『それには訳があるんじゃ』
と前置きし
『これはな、さっきのナッちゃんが持って来たヤツとは別物なんじゃ』
と言った。
すかさず俺は
『そがなん見たらわかるわ』
と嘴をはさみ
『ナツコが持っとったヤツはバラバラに割れとるけど、それは割れてねぃが』
と言った。
古中刑事が
『子供のくせに!』
と言った顔になり
『同席さしてやっとるだけでもアレなのに、やぁやぁ言うな!
つべこべ言うんじゃったらあっちへ行っとれ!』
と言わんばかりに俺を睨んだ。
父が
『ほう、
別物なんか、、
ワシらぁの目から見たらまったく同じように見えるけんどのう、、』
と言った。
ハルキが
『そうなんですよ、兄さん。
じゃけどこれはナッちゃんが持って来たヤツとは別物なんですわぁ、、』
と言った。
父が
『ほう、、』
と再度、嘆息し
『そりゃ、どういった事かのう、、
ワシにもようわからんが』
と言った。
割れてこそいなかったが、それは胴体の部分をとりまく緋の色といい、感触といい、以前、シノハラさんがやいた焼き物と寸分、違わぬ代物だった。
ハルキは
『ええですか兄さん、
考えてもごらんなさいよ』
と言い、
『シノハラじゃってバカじゃなですよ。
バカどころかむしろ用意周到な男ですよ。
その男がなんの下調べもせんといきなり元旦の晩に、あれだけの事を実行に移すと思いますか?
奥さんに焼き物の番をさせつつ、その間にこっそりヤギさんの家まで行くいうアリバイを考えたほどのもんがですよ、、
ま、歩いて行くのは無理じゃから、自転車をこいで行くんでしょう、、
じゃけど、こぐ言うてあの足ですよ。
まして街灯もころくにない夜道をです。
そして、ヤギさんの家につけばついたで、借金の延滞の交渉せんと言う大仕事が待っとる。
どれだけ時間がかかるか、まるきりの未知数じゃないですか。
通り道にじゃって、どがな障害物があるやもしれんし。
大冒険ですよ。
それを、実験もせんで、いきなり、実行すると思いますか?』
と言った。
父と母が同時に
『あっ』
『それはそうじゃ』
と言い
父が
『ほんならこれは、、、』
と、テーブルの上の、古中刑事が何人たりともさわせまいと死守している焼き物を指差し
『元旦以前にやいたモンなんじゃな。
いわばお試しに、、』
と言った。
ハルキは
『ご名答です』
と言って
『そしてこれがどこから出てきたと思いますか?』
と言った。
俺が
『そりゃ、決まっとるがな。
ヤギのおっさんの家からじゃろ
今のはなしの流れじゃったら当然じゃ』
と言った時、古中刑事が再度俺を睨んだ。
そしてハルキの方を伺うように見た。
ハルキはニコニコ笑い古中刑事に頷くと
『それもご名答じゃ
ヨシヒロちゃん、ようわかったな。』
と言った。

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