ここ十数年、関東の空気は随分綺麗になったような気がする。真冬でも滅多に観られなかった富士山が、晴れていればうちのベランダからよく見える。送電線だとか近くの古いマンションに住むオッサンだとか見たくないものも目に入るので、「眺めのいい部屋」だとは到底言えないが。その富士山鑑賞も近隣のビル建設ラッシュで、いつまで出来るか分からないけど。
うちのアパートにはエレベーターはあるが、原則ペットを乗せてはいけない。犬の散歩に出掛けるにはカートに入れてエレベーターに乗せるか、小型犬というには太り過ぎの2匹のダックスフントを抱えて階段を昇り降りするしかない。犬と同様に人間も年を取ってくると、それがつらくなってくる。
ブルックリンの築50年以上の古アパートメントでも、不動産の暴騰のせいで一部屋百万ドル前後もする。眺めがいいだけが取り柄のエレベーター無しの物件の5階に住んで40年、画家の夫と元教師の妻、それに犬一匹に訪れたある週末のリハウス悲喜劇を描いたこの作品だが、そんなわけで結構リアルに感じることであり他人事とは思えない。
慎ましくしかし自由に生きてきた二人。黒人と白人の結婚ということで家族から疎まれながらも絆を強めていった若い頃の描写を挟みながら、不動産エージェントである妻の姪に煽られて自宅を高額売却し新たな家を安く買うことに夢中になっていく二人(夫は最初は嫌々だったのだが)。折しも近所でテロ騒ぎが起き容疑者が逃げ惑うという報道が流れる…
まあこういう終わり方しかないという終わり方をする、良心的な小品なのだけれど、モーガン・フリードマンとダイアン・キートンという組み合わせが素晴らしく、二人のやり取りを観られるだけで価値あり。『マンハッタン』を彷彿させるような場面もある。
朝日の小原篤記者によると、今月から来月にかけて、こういった「異人種間結婚」を描いた映画が他にも2本公開されるとか。
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