イベント後半の最初は、元先生が、バルディオスがよく受けている誤解を解くための説明をしていきました。
この部分に関しては、これまでのようなトーク内容の箇条書きだけでは説明に無理があるので、トークの内容を、前後していた話題、自分ACM個人の考察や意見などを交えながら一つの文書としてまとめます。ご了承ください。
はじめに、いくつか言葉を定義しておく。
バルディオスも、他のロボットアニメのように、設定画と一口で言っても、用途などに応じた複数のものが存在する。
元先生が描いた、変形合体の整合性なども意識したデザイン画を「オリジナル」、これを、アニメで動かしやすいように「清書」したもの(この作業が、一般的にクリンナップなどと呼ばれるもの)を「クリンナップ稿」と呼ぶことにする。
まず、バルディオスのオリジナルの顔がスクリーンに表示された。
これが、今まで見た記憶のない、線も多く、つくりも鋭いもの。よく似ていると言われるガンダムとは、面のスリットの存在くらいが共通接線で、あとは全然似ても似つかないものだった。
オリジナルのバルディオスは、Webにも転がっていなさそうなので、元先生ご本人に「これがそれに近い」と確認を取った、小学館の「アニメ・ヒーローロボット大図解」のものを引用する。
これ。
全体的に鋭角であり、元先生の言葉を借りるなら「武骨で面長」。
鼻が出ていて、目じりまわりも「面を装着した鎧武者」のようになる。
(2015年6月1日追記:この部分の文書に事実誤認があると指摘を受けたので、修正しました。
関係各位の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます)
以下、修正
―――ここから―――
オープニングフィルムのバルディオスは、
中村プロダクション作画によるもの(メカニックのみ。全体的な作画監督は上條修氏が担当したとのこと)で、この武骨で面長なものを踏襲した感じになっている。
―――ここまで―――
また、葦プロの社内で作画した際も、バルディオスもそうだが、キャラクターも、キャラクターデザインを担当した上條修氏のものを踏襲して作画がされていた。
ところが、作画を外注にすると、外の人たちが改変をしてしまい、そちらがまとまりがよくなってしまい、オリジナルでないものが人気となってしまった。
外注回の一つ、8話の1コマ。ってか、バルディオスが汗かいてるよ。こんな演出あったんだな。
閑話休題。
で、その「外注の改変」がまかり通ってしまった結果、どんどんオリジナルから離れていき、やがてどこかで見たような風になったのだ。
こんな感じで。
外注回では、他にも、透明円盤のデザインなども線を省略され、勝手に書き換えられてしまっていたそうだ。
そして、また、1枚の画が表示される。
自分が遠目から見た限りでは、特に変哲もないバルディオスの線画の一つだったのだが、それは、元先生が直接描かれたものの一つだったそうだ。
ここで、文書冒頭で定義した「オリジナル」「クリンナップ稿」の話になる。
このクリンナップ稿を手掛けたのが、サンライズなどでこうしたクリンナップ作業をずっと手がけてきていた方。某Gのクリンナップもこの方の手によるものだったので、画のタッチがバルディオスとガンダムで似てしまったのだ。
マイミクさんがまとめていてくれたので、それを拝借。
なお、ここで掲載した設定画は、全て「クリンナップ稿」であることにも留意されたし。
こうしたいくつかの事象が、後々の誤解を生んだという。
オリジナルバルディオスは、一番上に掲載した画の感じなので、この通りに描けば誤解も少なかったのではないかとのことだった。
これも、前のレポートに書いた通り、バルディオスをプラモデル化するに当たって、金型流用が行われたのは事実だが、ありものの金型をもってきてバルディオスの胸に流用しただけで、それ以上ではなく、しかも、その流用した元が何なのかは不明だという。
また、バルディオスの頭は、この、上杉謙信の兜がモチーフとなっている。
http://www.matsukawa-web.com/55_391.html
バルディオスの頭の突起も、当時はロボットの飾りと言えば、例えばダイターン3のように額につくパターンか、コン・バトラーVのように頭の横につくパターン、どちらかだったので、では、2つを同時につけてみよう、というのが着想元だったそうだ。
―――2016年9月8日追記―――
佐藤元先生が、非常に興味深い証言をしておられたので、紹介します。
バルディオスの口元のスリットも、そもそもは、佐藤会長の「マジンガーZの口の部分が縦に筋が入っているのだから、バルディオスは横方向でいこう」という発案があったそうです。
―――追記ここまで―――
次に、パルサ・バーンの設定画が表示される。
本来は、これのオリジナルも玩具っぽい(?)厚めの形状である。
玩具メーカーからは、恐らくアニメと玩具とでイメージギャップが出るのを嫌がったのであろう、「パルサ・バーンは厚く描いてくれ」と言われおり、そのように描かないと怒られたという。中村プロダクションはこうした要望をオリジナルに殉ずるように守ってくれていたのだが、別の外注先が弄ったせいで薄くなってしまっていったのだそうだ。
他にも肩の線も、パルサ・バーン時に左右の肩パーツが接合してまとまることを前提に作られているので、バルディオス形態ではラインが崩れて歪になるのが正解だという。
まとめると、
バルディオスのオリジナルの顔、ガンダムとは「似て非なる」デザイン。
ガンダムに似てしまった理由は、設定画の清書をガンダムを手掛けた人がやったため、タッチが似てしまったことと、外注がバルディオスのデザインを改変してしまい、それに周囲が引っ張られてしまったため。
また、立体化に当たってWikipediaに載っていた(今日5月29日に確認したら、その記述はなくなっていたようだ)ように、ガンダムの金型が流用されたという話もデマ。流用があったことは確かだが、何が用いられたかは不明で、そもそも、流用された箇所も胸。
それにしても、これを書く上で色々と再確認したんだけど、元先生は、ここいらを自分のサイトに載せてたり、6年前にLPOであったバルディオスナイトなるイベントの時に色々と語っていた。バルディオスナイトのイベントレポートも書いたし、その時もガンダムに似てしまった理由などは語られたと思うのだが、それを完全に説明しきれなかったのは、自分の聞き取り力の不足であり、それが今としては非常に恥ずかしい。
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