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2022年12月12日17:06

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【映画】『THE FIRST SLAM DUNK』

『THE FIRST SLAM DUNK』
 
 
極めて有名な漫画だが、私は一度も読んだことが無いし、アニメも見たことがない。登場人物のキャラも知らないし、ついでに言えばバスケットボールにも全く興味が無い。THE FIRST SLAM DUNKとはまさに私のためにある言葉だが、そんな私が見ても、これは1本の映画として最高に面白い!
 
高校バスケットボールの話。主人公たちが所属する湘北高校vs最強の山王工業高校の試合を軸に、そこへ至るまでの過去エピソードが回想形式で綴られる。原作の主人公は桜木花道らしいが、この映画では兄の死という重い過去を背負った宮城リョータが主人公になっている。
 
公開前に一番懸念した要素は、原作者の井上雄彦が監督も務めていることだ。『バガボンド』の方はずっと読んでいたが、あの写実的な作風は、どうもアニメーションという形式に合わないように思えたのだ。
ところがこれが大ハズレ。既成の日本アニメとは一味も二味も違うリアルなタッチ、現実の映像をそのまま「動く漫画」にしたかのような独特の作風で、アニメ表現の新たな地平を切り開いているのだから恐れ入る。「疑ってすみませんでした!」と謝るしかないレベルだ。
ドラマ部分も滋味溢れるタッチで悪くないが、やはり見どころはバスケットの試合シーンで、カメラワークから何から凄まじいの一語に尽きる。スポーツの試合の映像表現としては前人未踏の域に達している。新たな映画言語の誕生を目の当たりにする驚きと感動!
またいかにも井上雅彦らしく、緊迫したシーンの合間に次々と笑いを放り込んでくるのだが、そのタイミングとスピード感がたまらない。声を上げて笑ってしまったシーンが何か所も。
白眉は、言うまでもなく試合のラスト数十秒。最高の緊張を無音で表現。アニメと漫画が混ざり合ったような映像。1回見ただけではその表現を正確に把握しき れないが、私のありとあらゆる知覚が、あれを「神演出」だと認定している。
 
ただ、この作品は、あらゆる意味で諸刃の剣という気もする。ここまでの映像表現を見せられてしまったら、今後他の映画でどんなスポーツの試合を見ても、全て退屈に見えてしまう可能性が高いからだ。そして『SLAM DUNK』という作品においても、もうこれ以上のものは作れないことだろう。つまり続編等の製作はほぼ不可能ということだ。
それほどまでに、この作品の映像表現は革命的であり、少なくとも日本においては、『THE FIRST SLAM DUNK』以前/以後で語られることになりそうだ。そんな作品が突然変異のような形で生まれてしまった驚きに、ただただ息を呑むしかない。
 
最後に1つ。エンタテインメントにおける重要な要素は、登場人物に共感や魅力を感じるかどうかだが、本作は湘北高校のメンバーはもちろんのこと、敵方である山王工業高校のメンバーにも強い共感を覚えてしまう。
特別高尚なテーマを掲げなくても、人間というものを深く描けば、そこに自ずとドラマが生まれ、テーマは後からついてくる…『七人の侍』はその典型的な例だが、この『THE FIRST SLAM DUNK』もその系譜に属する作品と言えそうだ。 
 
この機会に有名な原作も読んでみようかと思ったのだが、一切デジタル化されておらず紙の本のみ。マンガはスペースを取り過ぎるので、最近電子書籍でしか買っておらず、こちらに関してはいささかハードルが高い。

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