この世にドラッグがなければ、エルヴィス・プレスリーは死ななかったか?
それは「エイズという病がなければフレディ・マーキュリーは…」と同じく、
意味のない問いではあるけれど、
たぶん、ドラッグがない世界があったとしても、
エルヴィスはあの年齢でこの世を去っていたと思う。
あまりにも、神に愛された人間は、そんなに長くとどまれない。
もっといい、高い場所が呼ぶ。
「がんばったね、もうそろそろ帰ってきなさい」と。
実際に、エルヴィスは親しい人間に、死ぬ前にこう言った。
「次に会うときはもっと高い、いい場所だろう」。
エルヴィスは、きっとみんな、わかっていたのだと思う。
わたしは、音楽にはあまり興味がない、ということになっている。
ただ、子供のころから不思議だった。
アニメで、白人男性のハンサムはどうしてみんな、同じ顔なのか?
1)眉毛が左右高さがそろった一直線
2)鼻筋がとにかくまっすぐで、小鼻がきゅっと上に切れ込んでいる
3)目を開いたとき、うわまぶたはまっすぐだが、したまぶたは下にカーブする
4)3)の関連で、したまぶたのまつげが妙に目立つ
5)前髪が額にかからないようにセットされているが、なぜか一筋乱れ毛がある
その後知った。これは全部、エルヴィスの顔の特徴だと。
エルヴィス役の俳優がすごい。
若いころはほっそりと、晩年はぶっとく。
胴体はふとんを入れても、顔、ほっぺをあそこまで、含み綿では作れないだろう。
エルヴィスのあの、歌い方、踊り方が、独学独創だったなんて。
神から降りてくるままの天才だったのだな。
映画全編に、昔の本当のエルヴィスのコンサートフィルムがところどころ挿入されているが、
ラストシーンの長い引用が、本当に感動的だ。
エルヴィスが、天国へ向かう金色の雲にエナメルのシューズを片方のせて、
こちらに歌いかける。
ドラッグでぼろぼろで、立って歌うことはできないが、
天国への階段をのぼりながら、その声はますます透き通り、
地上の人間たちの心に直接、まっすぐに光のように差し込む。
神は地球を作り、7日目にお休みになったが、
その後、エルヴィスを作った。
そう言いたくなるだろう。
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