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2021年09月06日12:20

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ショートミステリー(17)畏れ

これは芥川龍之介の短編小説:神々の微笑、にヒントを得たものです。

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軍用機で颯爽と厚木飛行場に降り立ち、連合国軍最高司令官として敗戦国日本の統治を始めたダグラス・マッカーサーであったが、実は部下にも言えない大きな不安を抱えていた。

それは不安というよりは恐れ・畏れに近いものだった。

マッカーサーは、対日戦への関与においても、戦歴においても、占領軍の総司令官として自分以上に相応しい人物はいないと思っていた。
また、今の日本には蟷螂の斧ほどもアメリカに歯向かう力は残ってはいないのだ。

しかし、この畏れ、あるいは恐れを醸し出す圧力はいったいどこから来るのだろう?
日本の美しい山河、更には焼け野原の市街地までもが今にも自分に襲い掛かってきそうな不安を常に感じていた。

まさか、猿の惑星に来た訳でもあるまい、、。

宗教的な力かも知れない。とマッカーサーは思った。
しかし、仏教は随分と昔から日本に伝わってはいるが、どこか歪な形として根付いているに過ぎない。
第一にキリスト教は?
日本の戦国時代からの宣教師たちの懸命な努力にも関わらず布教は成っておらず、日本に敗退した、と言っても過言ではなかった。

ゼウスにできなかったことを私はやろうとしているのか?マッカーサーはそんな無力感を感じていた。
もう何もかも投げ出してアメリカに帰りたい気持ちになった。

対日戦の初期、日本軍にフィリピンを追われた時にも、また、末期にレイテ湾で戦艦大和ら日本艦隊の艦砲射撃に晒されそうになった時でも、こんな気持ちになったことは無かった。

目に見えない「畏れ」だけに、マッカーサーには対処の方法が無かった。

そんなときに昭和天皇との会見がなされた。

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会見の内容そのものは、世間話に毛が生えたような取り留めの無いものだったが、マッカーサーはひどく感動した。

なんと素朴で静かな人柄だろう。これが日本の天皇なのか。
これであの激しい日本の陸・海軍を統帥できたのか?アメリカでは考えられないことだ。

マッカーサーは歴史の重みというものを初めて感じた。

そして何よりも重要なことは、今まで不安・恐れ・畏れに覆われていたマッカーサーの心が、何故かは分からないが、あたかも霧が晴れるように、晴れ晴れとしたことだった。

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私はあの方、すなわち日本の天皇の助けを借りて日本を統治していくことに決めたぞ。従って、天皇の極東軍事裁判への関与・出廷は無用だ。そのように計らえ!
マッカーサーは腹心の部下に命令した。

部下:分かりました。しかし、東京裁判は何とかなると思いますが、本国の世論はどうします?アメリカでは75%の国民が天皇を極刑もしくは重罰に処すべきだ、と言っていますよ。

マッカーサー:なーに、さほど難しいことではあるまい。開戦時にルーズベルトがやったことの逆をやればよいのだ、、。











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