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2020年11月23日23:29

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空に住む

青山真治監督の「空に住む」

タワーマンションとは20階以上の建物のことをいうそうで、多部未華子が住むのは39階。
建物の外景は全く出てこない。
冒頭、マンションを最初に訪れる場面は、監視カメラの映像で玄関先のみ写し出される。

マンションを出る場面は、内側のエントランスのみで、コンシェルジェの柄本明がいる。
もう一度、会社の後輩、岸井ゆきのとエントランスを通り、出ていく場面はある。
それはエレベータで降りた時に向かいのエレベータで上るところだった、スター岩田剛典を見ての会話があるから。

出勤時の描写では、玄関を通り越して、通りの階段を降りる場面になっており、高いマンションの上にまだ高台にあることが示される。渋谷だから、駅は谷にあるのだろう。

マンションは一方が全面的なガラス張り。人の動きは、部屋の玄関ドアから窓に向かうことになる。
それが、逆になってくるのが、この映画。
多部が玄関まで行く場面が描かれるのは、後半、岩田を出迎える場面で、ここでは少しスローモーションにまでなっている。

その後の動きも多部からの動きであって、それまでは岩田からの動きがほとんどであった。

特に、ソファの窓側に岩田が寝そべって会話をする場面での岩田の動きは、クロード・シャブロルの「引き裂かれた女」であろう。(右のスチル)
シャブロルのこの映画でのブノワ・マジメル演じる金持ちのぼんぼんは、すごくいやらしい(すけべという意味ではない)。
岩田くんには、そこまでのいやらしさはない。

マンションでの人の動きが出逢いの重要な役目を果たすエレベータも含めて、かなり限定的に描かれるのに対して、勤め先の出版社は、木造の古民家で、縁側から人が出入りする。玄関から靴を脱いで上がる多部の姿もあるが、玄関を出た門から社員が出かけていくカット、縁側に正座する多部のカットまである。
座敷で原稿を打っている大森南朋のところに、ガラス戸を開けて社長が入って来る場面など、四方から人が出入りしている感覚で、開かれている。

移動は、橋を渡る電車の外景のみ。
多部が永瀬正敏と、港に来る場面でも外景で多部が車から下りるだけ。

最後の場面が、岩田が移動する車の中で、セリフから成田空港に向かっていることがわかるくらいで、移動の感覚はここで初めて描かれる。

空がばーんと出てくる。タイトルバックと最後。
最初と最後の空の有様が全く異なって見える。

ちなみに、原作者の小竹正人は、LDH所属の作詞家で、EXILEや小泉今日子に詩を提供している人。もともと永瀬正敏の付き人をしていたそう。
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