7月21日(日)
オーストラリアを北上してラウトカに着いた。
大陸の北のはずれにある。
北の街というと、津軽海峡冬景色とか、ハマナス揺れる宗谷の岬とか寒々しい感じがする。
しかしオーストラリアの場合は北へ行くほど赤道が近くなり暑くなる。
だからラウトカ郊外には熱帯雨林が広がっている。
そこで定番の熱帯雨林ハイキングに行くことにした。
ポートダグラスにあるモスマン渓谷は世界遺産のジャングルだ。
その前に、近くにある動物園へ行く。
ワイルドライフハビタットというところだ。
旭山動物園の元祖のような自然生態展示を行っているというから楽しみにしていった。
大きなドームの中に珍しい動物がいて放し飼いにされていて、真ん中にレストランがある。
動物を見ながら食事をすることができる。
コアラもいるし、ヒクイドリ、キノボリカンガルーもいた。
いちばん珍しかったのがフクロネコだ。
日本の動物園にはいない。
有袋類の肉食動物でネコの生態地位を占めている。
ネコとちょっと違うけど、身体つきや性格も似ているそうだ。
たしかにのんびりした感じの動物だ。
連れて帰ることができたら、うちのネコと仲良しになれるかもしれない。
ポートダグラスからバスでモスマン渓谷のビジターセンターへ行く。
建物の裏口から電動バスに乗ってハイキングコースの入口へ行く。
よく整備された遊歩道を2時間ほど歩いた。
世界遺産の大自然の宝庫の熱帯雨林だから期待して行ったけど、まあ普通のジャングルだった。
こういうのはいつもネパールのトレッキングで歩いている。
7月24日(水)
最後の寄港地はニューギニアのラバウルだ。
旧日本軍は南半球でいちばん大きな軍事基地をラバウルに作った。
最盛期は10万人の日本人が住んでいた。
それなのに大きな戦闘が行われなかったので、今でもあちこちに戦跡が残っている。
戦闘機の残骸や塹壕の跡、潜水艦の基地も残っている。
いちばん有名なのは地下司令部でヤマモトバンカーと呼ばれている。
それぞれの戦跡に行くと入口付近に地元の人たちがいてお土産を並べている。
子供に民族衣装を着せてチップをもらおうとする人もいる。
コスチュームが珍しいし、男の子がかわいいので皆んな1ドル札を渡して撮影していた。
とくに売るものがない人は「ラバウル小唄」を独唱している。
「♪さーらーば、ラバウルよー、$%>>G)##までー・・・」
歌詞がめちゃくちゃなので正しいのを教えてあげた。
ニューギニアは今回訪れた国の中でいちばん開発途上なところだった。
道は舗装してなくて車もろくに走ってない。
バスのかわりにトラックが走っていて、皆んな荷台に乗り込んで移動している。
でもニューギニア人は素朴で良い人たちばかりだった。
7月30日(火)
日本の排他的経済水域に入った。
船の乗客に急病人が出た。
千葉県の自衛隊基地からヘリコプターが来ることになった。
日本本土に搬送してくれる。
ピースボートも、全速力で北上する。
少しでも早く収容してもらうためだ。
早朝にヘリが来て急病人をピックアップしていったようだ。
それで予定より早くコースを進んだので硫黄島を周遊してくれることになった。
船内放送で案内があったのでオープンデッキに上がってみる。
はるか前方に硫黄島が見えた。
急病になった乗客の人に感謝しなければいけない。
硫黄島は民間人が上陸できない。
自衛隊の基地があって、関係者だけが行くことができる。
わたしは以前から硫黄島に行きたくて、防衛弘済会に登録している。
基地の食堂などの施設を運営している組織だ。
ここでたまに短期のアルバイトの募集がある。
皿洗いとかそういうの。
これが一般人が硫黄島に渡航できる唯一の方法だ。
年に1〜2回募集が来るのだけど、いつも他の用事と重なって働くことができない。
今年も夏の初めにあったけど、地球一周の最中だった。
そういうことで、硫黄島を眺めることができたので感動した。
島の真ん中に飛行場と基地がある。
東のはしにあるのは摺鉢山だ。
太平洋戦争で激烈な戦闘が行われた。
兵隊さんたちが頂上でアメリカ国旗を立てている有名な写真の場所だ。
摺鉢山の裏にまわると爆裂火口のようになっている。
これは噴火で崩れたのではなくて、アメリカ軍の艦砲射撃で火口の形が変わったのだ。
だから山をほじくり返すと、いくらでも日本兵の死体が出てくるだろう。
素晴らしいところを見学することができた。
来年こそは硫黄島でアルバイトをしよう。
8月1日(木)
横浜に到着。
デッキから横浜港を眺める。
道路標識や看板が日本語で書いてある。
なんだか異様な感じがした。
もっと船の中での生活なども書きたかった。
奇人変人だらけの乗客が1100人いて、その中で自分はどのように人間関係を構築していったか。
かなり面白い話になると思う。
でも、日本に帰ってきてもう一か月だ。
そろそろ次のことに取りかからなければいけない。
今月の山登りの予定や、再来月の台湾行きも計画を立てなければ。
だから、地球一周の感想文シリーズはこれでおしまい。
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