いきなりラストに触れますが、まあ勘が悪い人であっても、この夫婦(元文学教師の夫はアルツハイマーが進行中で、妻は末期癌)が映画の最後までに何らかの形で死に至るだろうというのは分かります。同居するイマイチ出来の悪い息子には無断で、年代物のキャンピングカーでフロリダのヘミングウェイの家(記念館)まで向かうというロードムービーですが、運転する夫はもう運転できる状態ではなく妻も即時入院が求められている病状。家からはライフルを持ち出している、しかも目的地が(銃で自死したと云われる)ヘミングウェイゆかりの場所となると、もう伏線張り過ぎです(笑)。だからこの作品は、彼ら(のどちらかか両方か)がいかに死んでいくのか、そこに至るまでに何が起こるのかという物語ということになりますが、安心してください、基本線はコメディですから。
睦まじく生きてきた二人。理知的でウィットに富みダンディな教師というより学者。良き夫であり良き父親だったその片鱗はもうごくたまに、しかもほんの数分顔を出すだけ。自分がどこにいて何歳なのかもよく覚えていない夫の姿に何度も嘆息しつつ、それでも妻は病身をおして夫にハッパを掛け珍道中を続行させていく。記憶がまだらになった夫の口から思わぬ秘事が発覚して愕然となることも…
ウィッグを被り一見誰だか分からないヘレン・ミレンとドナルド・サザーランド、この名優2人だけの場面が多い。ラストの展開など、良くも悪くも日本人向きのような気がする。
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