きらめく万華鏡の中の一の景色を見た
それで満足してすべて知ったようだけど
まだ先があり続きがあるなど夢にも思わぬ
気付かないでいい知らないでいいそのまま
堅持していておくれそのニュアンスで
闊歩していておくれそのスタンスで
謳歌していておくれそのスタイルで
きみの周囲に周到に掘られた穴ぼこに
通称というか俗称というかいわゆる
落とし穴
落っこちないように見届けてあげる
落ちるときは誰だって落ちてしまうけど
落ちる瞬間があるとしても見てあげる
見られていると落ちにくくなるだろうけど
気にせず思う存分落ちてもいいんだよって
まるで落ちてくれと言うかのように言う
腐った根性丸出しだなって思われても
構わない
這い上がる姿が見たいだとか
落ちたあとにどうするか観察だとか
そんなデータを収集するほど暇なのか
わからないけど
誰だって落ちてしまうための落とし穴って
あるよねないかもねあったっていいよね
どっちでもいいよねできれば回避したいし
でも一度落ちてしまったらそこまで
そこから
終わってしまったと同時に始まる別の時間
徒労、無駄骨、不毛、無慈悲、ナンセンス
秒針の鋭さ、しかし鈍いのは時計盤の
のっぺらぼうにひたすら広がる面積
救える余地はどれくらいあるのか
腕ずくで計算しようと試みていたのか
足ひっぱる覚悟でも一蓮托生と心見ていたのか
見透かされたちっぽけな打算の世界
裏切りとすれすれの裏返りから出てくる
知らなかった知りたくもなかった豊饒の世界
届かない予算比と裏腹に復調の予兆さえ見せる
それは妄想コミット込みでなぜか進捗する
推進力がなにもないのにただ突き進む世界
淡々としているようでずっしりと重く
整頓されているようで出鱈目なのに清々しい
何にも染まらずそこにただ屹立するまなざし
想い描く理想像とも似ても似つかわしくないのに
胸はぜんまい仕掛けのように踊っては跳ねる
図解も立証も弁明もうまく成り立たないくせに
なんか知らないけどかっこよくてはまる
後腐れのないさっぱりした奇妙な中毒感が
じわじわじわじわ真綿と共に蝕んでくれる
おねがい落とし穴にはまってもう抜け出せないの
あとは惰性でひからびてしぬのを待つだけよ
こうなることはとっくの昔に気付いていたわ
わからないようになんとか引き延ばしてきたけど
落とし穴にちゃんと選ばれたことは光栄だけど
誰もかれもが浮上するだなんて言い切れないから
何かを辞退する人だっているんだってことを
なんて言ってるうちに空からみる影もなく
何ものかの鋭い爪に攫われていってしまいそう
連れ去られていってしまいそう
どこから
どこに
行きたいの
結実しない
ユーフォーキャッチヤーの爪でさえぬいぐるみ
うまくひっかけられないその思念で
何の種類の魂を浮かび上がらそうとするの
じぶんの魂
ちゃんと磨いていなかったせいで
落っこちてしまったんだって
認めないのも認めるのもどっちも苦しい
どっちを選んでみても苦しいの選択の連続で
ぼくたちは随分と疲労を重ねてしまっていた
うまくいくように思えたのに
いつも夜になると声を殺して泣いた
深夜の通販のテレビを見て少しだけ嬉しくなって
電話をかけようとしたらなんか違うと思った
かすかな違和感
気がついてしまうように出来ている
完璧に騙すこともできずに中途半端に見ないように
心に徐々に毒を盛るように躾けていたけど
そのままでいいんだよって
この姿で穴に落ちて泥に塗れたままで
明るい空が似合わなくたって
明るい気持ちが何億光年も先に見えた
あれはたしかに光だったのだろうか
見えなかったのかもしれない
焼けついた白と黄色の競演が
地の底からからだをかすかに浮かばせていた
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