中身が飛び出して戻せなくなったカセットテープ
お腹の臓物を切り拓いた想像が重なるのは
デッキの中で閉じ込められ出られないビデオテープ
ドアノブが壊れて部屋から出られなくなるようで
身近な物が壊されたときにはいつも投影して
おしまいの疑似体験をどうやったってしてしまう
おまじないの仮死体験が欲しくて仕方がない
なにを修復できるんだろうってコートのボタン
苦手な裁縫しながら考えていたのは
このてのひらを翳すだけで何かが産まれるなら
心も脳も腐っているけど蛆はまだ愛おしさを
ウインクめいたもの振り撒いてくれるだろうか
蝿になろうと必死に群がる彼等にいったい
何を投影できるというの
グロテスクに蓋を被せてしまうような惨めな世界
つるりとした肌触りの良さに溢れた無菌室の中で
昔ながらのざらついてねとついた心情に油を注ぐ
誰にとって何が潤滑剤となり得るのかなんて
サイコな事件をニュースで観ながら考えると
ぼくも似たような狂った怪物なんだろうかって
思いたい思いたくない思わざるをえないけど
正義と悪を天秤にかけながら天秤ごとぶっ壊して
天井ごと木端微塵にぶっ離して
自由裁量権など無重力の彼方にぶっ飛ばして
尺度の消えた空白の中で顔を胸に埋める
ゆるやかに安らかに脳死したまま目が覚める
稼働できなければ生産などしなくていいのに
鼓動途絶えられれば清算などしなくていいのに
法規を超えた生きる命題に呪われた心臓が
収縮と嗚咽の痙攣を繰り返しているから
内部で鷲づかみにされた台座に座るだけ
針の筵だろうが尻肉が摩耗しようが鎮座する
揺れながら動じない宿命を背負ってしまうだけ
呪われた右手と祟られた左手と犯された右足
大地を踏みしめ次のねぐらを探しに行く
蛇に尻尾ごと丸呑みされた皮膚を撫でながら
耐性のない時間を骨の中で刻んでいたい
屈託なくわらう子供の声をどこかで聴きながら
できるだけ遠く遠いはるか遠い知らない場所で
想像できないくらいに遥か遠い知らない感覚で
世界中の悲劇を吸い上げて雨にして降らせられたら
ずぶ濡れのまま立ちつくして空を見上げられるのに
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