父親が死んで3年ちょっとになる。
遺骨をずっと自宅に置いていた。
台湾からお客さんが来たとき、骨のある部屋に寝てもらった。
彼らはずいぶん珍しそうに眺めていた。
そろそろ邪魔なので納骨することにした。
ゴミと一緒に捨ててもよかったけど、法律違反になるらしい。
だまってればバレないから問題ないけど、そういうわけにもいかない。
近いうちに我が家の墓じまいをする予定なので新しいお寺と契約した。
名古屋市の大須にある万松寺だ。
ここは由緒あるお寺だ。
どのくらい由緒があるかというと、織田信長のお父さんである織田信秀が開基した。
お父さんの葬式も万松寺で行われ、信長は位牌に抹香を投げつけた。
大河ドラマでも描かれた有名なシーンだ。
また徳川家康が幼少期に人質としてここで過ごしたことがある。
その万松寺も最近は儲けに走っていて、大きなロッカー式の納骨堂を作っている。
今年の4月に建物を増築して新しいロッカー納骨堂ができた。
オープン記念価格で安かったので契約した。
今日が納骨の日だった。
自宅にある父親の骨は大きいのと小さいのと二つの壺に入れてあった。
一つにまとめるため、小さい壺から骨を出して大きい方へ入れた。
山盛りになってしまったのでギューっと押し込んだら骨が砕けて収まった。
骨壷を紙袋に入れて大須へ行った。
万松寺を選んだのは繁華街の真ん中にあるからだ。
地下鉄で行ける。
墓参りが終わったあとに飲みにいける。
すぐ裏手にはジークジオンというガンダムバーがあるし、まんだらけ名古屋店も30メートルほどだ。
受付を済ませて時間が来た。
まずは顔認証登録だ。
こんどから納骨堂へ入ってお参りするためには、入り口のモニターに自分の顔をかざして本人確認をする。
画面に対象の死者の名前が出てくるからOKボタンを押す。
モニターの下からバーコードが印字されたレシートが出てくる。
それを持って地下一階の参拝所へ行く。
レシートに書いてある番号のブースへ行く。
その頃には地下2階にあるロッカー室から骨が自動的に運ばれてきている。
バーコードをリーダーに読ませると画面に故人の名前や写真が映る。
画面の下に骨壷を収納した金属の箱がガラス越しに見える。
ガラスの前にお花、お線香、お供えを置いてお参りをする。
骨壷を収納する金属箱は4人分の骨を預かってもらうことができる。
今日はまず父親の骨を入れた。
もうすぐ母親の骨を入れ、いずれはわたしの骨もここに安置される。
金属箱に最後に収納された人の死後33年経ったら合同墓に合祀される。
だからわたしの墓は残らない。
織田信長のお父さんたちといっしょに、その他大勢で供養されるのだ。
じつはわたしは親子関係があまり良くなかった。
大学に入って家を出てから、親の顔を見るのは数年に一度くらいだった。
だから親と並んでいっしょの納骨堂に入るのは気分が悪い。
でもまあ死んじゃえば意識がないのだからどうでもいいけど。
納骨は簡単な儀式だった。
骨壷を金属箱に入れて、係の人が鍵をかける。
和尚さんが来てお経を唱え、金属箱が機械によって地下2階へ収められておしまい。
30分もかからなかった。
これからは和尚さんが毎日2回お経を上げてくれる。
それで疑問に思ったんだけど、わたしが死んで33年経過ということは、まあこれから50年くらいは納骨堂のお世話になる。
それまで顔認証システムとかバーコードリーダーとかの部品メンテナンスは大丈夫だろうか。
フロッピードライブやビデオテープのように、すぐに時代遅れになり生産中止にならないのだろうか。
受付のネーチャンに尋ねてもよくわからん答えが帰ってきた。
でも万松寺の良いところは入籍した家族じゃなくてもいっしょに納骨できることだ。
内縁関係の夫婦や同性愛カップルでもよい。
ということは、まったくの他人同士でもシェアして一つの箱に納骨できるんじゃないだろうか。
安くすんでオトクなような。
とにかくこれで部屋にあった骨が片付いた。
あとは昔からある我が家の墓を撤去する。
こんどは保健所へ行ったり手続きが面倒だ。
それから先日バスツアーに行ってきた。
2〜3日したらこれも日記に書く予定。
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