春と秋がどんどん無くなっていっている。こないだまで暑いとか言っていてもうクリスマス!?
・ベイビー・ドライバー
待望のエドガー・ライト新作。地元での上映が待ちきれず新宿まで観に行きました。
犯罪組織の逃し屋ドライバーが惚れた女のため最後の大仕事に挑むというどシンプルなストーリーながら、ベイビーをはじめキャラの素敵な演技と音楽に乗ったリズミカルなアクション&カースタント、バイオレンス度高めなのに全編の根底に流れる優しさによって上品さすら感じる傑作に仕上がっている。
アンセル・エルゴート演じるベイビーの可愛らしさ・人間的魅力は抜群、正直終盤まで良く出来た楽しい良作という評価だったのがラスト近くで涙腺崩壊。細かい積み重ねを通して、あそこにベイビーという人間の本質がよく表れていた。バディとダーリンの危険カップルや、ジェイミー・フォックス演じるバッツの見ているだけで「関わっちゃいけない」雰囲気も抜群で、ヒロインのデボラの存在が霞んで見えるほど。と思っていたらそのデボラが終盤にきて存在感をグングン増していく。どの場面でも、誰かが生き生きとしていて常に目が離せない。
監督が監督なので、陽気なコメディタッチなのかと思っていたがいたってシリアスで硬質な仕上がりだったのには驚いた。ただしただ数少ない明るいシーンでしっかり笑わせてもくれるのはさすが。監督お得意の細かく小気味いいカット割りが今回鳴りを潜めていたのはちょっと寂しいかな。
若干暴力的ではあるものの、上映館の少なさが本当にもったいない、文句なしの珠玉の一作なので、ソフト化されたらもっともっと多くの人に見て欲しい。
・ワンダーウーマン
「美しく、ぶっ飛ばす」というキャッチコピーが秀逸だと思います。
不毛だったDCユニバースに颯爽と降り立った王女様。すごい美人が悪い奴らをガンガンに薙ぎ倒します。と書くとマーベル映画並みの明るく楽しい娯楽作品を想像しそうになるが(そういう面もあるのだが)今回もどこか陰のある画作りは健在。というか第一次世界大戦時が舞台という時点で、ある程度陰鬱な雰囲気にはなるよなあ。同時代ということもあって、雰囲気はキャプテン・アメリカの一作目にも近い。
とはいえ主な舞台が昼間の戦場ということもあり剣・盾・ロープ・格闘を存分に振るったアクションは非常に見やすく爽快、特にロープアクションは直線的で大味だった「マン・オブ・スティール」や「バットマンvsスーパーマン」せっかくのチームがまるで生かせていない単調なバトルだった「スーサイド・スクワッド」とは一線を画す、ヒネリの効いた戦いになっています(MCUほど立体的ではないけど)。前半、浜辺でのアマゾネスvsドイツ軍という「カルチャーギャップ・ウォー」も素晴らしい。終盤はいつものドラゴンボールバトルになってしまったのが少し惜しいなあ。
ストーリーもいい。悪い奴を倒す、という単純明快なアクションでなく、今までのシリーズのようなモヤっとするものでもなくメインであるヒーロー(ヒロイン)アクションに加えて戦争・恋愛・バディ・カルチャーギャップコメディにジュブナイル的要素まで過不足なく取り込み、多すぎないメインキャスト勢が存分に個性を発揮する。バランスよく、飲み込みやすく安心して見られる秀作。逆に言えばそつなくまとまりすぎていて個人的にはもう少し遊び心というか、毒・アクがあればベストだったけれど。
そういえば不満点が。ドイツはどこまでいっても悪の帝国に描かれるのね。「親玉を倒しても戦争が終わるわけじゃない」という極めて重要なメッセージがあったのに、親玉を倒して終わらせてしまったのは良くも悪くもアメリカ映画だと思う。
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