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2017年07月13日18:11

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6月の。

6月に観たのは『オデッセイ』『わたしは、ダニエル・ブレイク』『イットフォローズ』『388』『ヴィジット』の5本。

●『オデッセイ』
火星の学術調査隊が嵐に遭遇、飛ばされた1人を必死に救出しようとするも果たせず、宇宙服のアラートから彼は死亡したと判断し残りは火星を撤収、地球に戻る。置き去りにされたマークは限りある資材と資源をフルに駆使して生き延びようとする、まぁシンプルな話。
シンプルではあるけど話のテンポが速くリズムもいいので飽きずに観れる。ともすれば陰鬱で悲惨になりがちな題材ではあるけどそうならないのはとにかく明るくタフでバイタリティに溢れ、ユーモアを失わないマークのキャラクタによるね。
母船の連中との憎まれ口も何ともステキ。置き去りにされた恨み言を云うでもなく、置き去りにしたコトを謝るでもない。ただお互いのパーソナリティを貶すような和やかな掛け合い、やり取り。其処から伝わるのはプロフェッショナルの冷静な覚悟、そして強固な結びつき。
NASA長官の顔を知らず、自己紹介されても全く動じない気にしない科学バカ、好きなキャラでした。マーズパスファインダがさりげなく、しかし重要なアイテムとして出て来たのも楽しかったな。

●『わたしは、ダニエル・ブレイク』
心臓を患い医者に仕事を止められた爺さん大工ダニエル。しかし何故か療養手当は打ち切られ、役所に行くと就労するよう云われ、仕事が出来ないと訴えると療養手当を勧められ。あらゆる手続きはIT化され彼には太刀打ち出来ずどっちにも進めず八方塞がり。そんな彼が役所で会ったシングルマザー、ケイティ。彼女もまたシステムと社会に叩きのめされつつ2人の子供たちと必死で生きて居た……。そんな話。
一見ちょと短気な爺さんダニエル。コレじゃ心臓も患うよとは思ったけど、職人気質なだけで実は非常に心優しく細やかな男だと云うのが判って来ると印象も変わる。隣人の若者にもぐちぐち文句云ったりするけれど彼らとの仲が険悪なワケじゃなく、助け合って仲良く笑い合いながら生きて居る。
描写されるのは不況に冒され力なく生きる英国の街と人々。システムは冷淡で社会は過酷。でもシステムは人間が作ったモノ、社会は人間の集合。そしてヒト自体は優しく暖かい。窓口のアンも意地悪だったわけじゃない。ケイティに夜のお仕事を紹介したガードマンも悪意があったワケじゃない。じゃあ冷酷なのは一体何なのだろうね?何故システムと社会はそうなって仕舞うのだろうね?何てコトを思う。
昔『冷たい方程式』を舞台化したトキに頂いた「彼はこのシステムを作った人に腹を立てて居る筈」的なアンケートを思い出す。コレは的外れではあるけど重要な視点で、ヒトはつい人間に腹を立ててしまいがちだけど、システムは個人の意思ではどうにも出来ないレベルで駆動してたりするのだよね。

●『イットフォローズ』
19歳のジェイはある夜、彼氏から『それ』を伝染される。それは様々なヒトの姿を取ってじわじわとひたすら徒歩で追って来る。それは憑かれたヒトにしか見えず、追いつかれたら死ぬ。それはヒトに伝染すコトが出来るが、伝染した相手が追いつかれて死んだらまた自分に戻って来る。死にたくなければ君も誰かに伝染せ、追いつかれる前に。大体そんな話。
まぁよく出来てたかな。ノロノロ迫り来るアリサマも不気味だったし。結局『それ』の正体は判らず、解決したかどうかも判らないって云う曖昧で不安定なラストも割と好み。感染先が殺されるとまた自分に戻って来るから『伝染す』のと『対処法を教える』のはセットってのも上手く出来てる設定だと思う。
欲を云えば。殴れるし撃てば倒れる、遅いから逃げ続けるのも簡単、未感染の誰かと居れば判別も容易。こう云う『肉体に危害を加える』バケモノは日本人的には余り怖くはないかな。メリケンのヒトたちはこう云うのが怖くて逆に『精神を汚染して来る』バケモノの怖さを余り実感出来ないのかもだけど。
『それ』は実体を伴ったナニカではなく感染者だけに感知出来る『肉体的に危害を加える幻』で、それが見えると云う症状の感染症。とかの方がまだ面白かったかも知れない。物理的に対処不能な方が。
そう云う面でも『知人や愛するモノの姿にも見える』『頭もいい』て設定をもっと使うかと思ってたけどな。それもキッチリ生かし切り、ジェイを精神的にもっともっと追い詰めて欲しかった気もする。
ジェイも『それ』にパニクるのは判るんだけど、協力して呉れる妹も友人たちも居るのにいちいち深夜の公園とかひとりきりの場所に逃げるのだよね。しかもわざわざ車の外で寝るとか。いやいや。
まぁでも面白かったですよ。『それ』がみんなちょと薄汚れた感じの下着姿とか半裸状態だったような気がするけど其処には何か意味があんのかな。単に白っぽいカッコってだけ?ちょと気になった。

●『388』
郊外の家で妻エイミーと暮らす平凡な男ジェームズ。夫婦仲もまぁ良好。ある日、車の中に覚えのないCDを見つける。其処から始まる異変。妻が消え、パソコンからは勝手に音楽が再生され、飼い猫はすり替えられ、家の中には誰かの気配が。誰が?何故?翻弄される彼の精神は次第に変調を来し、その日常は謎の監視者により緻密に操作され静かに崩壊してゆく。そんな話。
全編通して殆どが盗撮カメラの映像。つまりまぁメタ的な構造で見ると『監督≒犯人』みたいなモンだよね。そして観客もジェームズに感情移入しながら、一方では狂ってゆくジェームズを冷酷に見つめる犯人の視線でもこの映画を観るコトになるワケでそう考えるとちょと面白い、独特な効果を生むのかも。
それを抜きにしてもまぁ、コンパクトでよく出来た映画でしたと思う。ナタリぽいちゃぽいかな。ジェームズの行動が最初からちょとエキセントリックなので『謎の監視者』は実は自分自身ってオチかなと思ったが違ったね。ラストも犯人の意図が理解出来るけど理解出来なくてちょとぞっとする。好み。
警官がボンクラ過ぎないか?とはね、思ったよ。ジェームズの訴えを真に受けず全部受け流すクセしてエイミーの姉のコトバはあっさり信じて疑心むき出しで乗り込んで来るし。まぁそう云う状況を作り出した犯人が何枚も上手で狡猾だったってコトにしとこう。でもあいつゼッタイ仕事出来ないタイプだ。
あとそうだ、ビルが可哀想過ぎたな。疑心暗鬼に囚われて常軌を逸した昔のいじめっ子に急襲されるとか、トバッチリ以外の何者でもないよね。挙げ句の果てにあんなコトになるし。同情申し上げます。
エンディングも不安定な音程にダミ声で「猫を託した」とか「97の男の肉片」とか「ニャー」とか不気味な歌で良かったんだけどアレは元々ああ云う歌があるのかな。ちょとマザーグースぽかった。

●『ヴィジット』
映画監督志望の姉とラッパー志望の弟が訪ねた初対面の祖父母。母に取っては折り合いが悪く長いコト会ってなかった両親。姉弟を和やかに迎えて呉れる2人だが、徐々に様子がおかしくなって来て「地下室には入るな」「9時半以降は部屋を出るな」等と云い始め……みたいな話。
姉が撮った記録映像、自主制作映画て云う設定のビデオ映像を中心に。『388』もそうだったけど安く抑えられそうねこう云うの。それはともかく観る側としては主観映像ならではの憑依感覚もあり、ありきたりではあるけどなかなか好きな手法ではあります。ブレアウィッチは画面揺れ過ぎで酔ったけど。
もとい。姉は母の心を救うエリクサーを求めて居て、祖父母と母との和解を望んで居る。この旅もこの映画も実はその一環で結構涙ぐましいアレコレを仕掛けるんだけどねえ。相手と状況が悪かったね。
観てて早期に気付くように祖父母、狂ってるは狂ってるんだけどそれだけじゃなく、まぁオーソドックスと言えばオーソドックスな装置ではあるけどじわじわとしたサスペンスとしては良質なモノではあるかな。
実は細かい伏線は提示されてたり、するのだよね。病院で起きた騒動の話とか。祖母がパソカメラにバター塗った理由とか、気付くとちょとクるモノがあるし。冷静なキチガイて怖いね。
祖母がオーブンの中を姉に掃除させるシィンとかも緊迫感あっていい。ヘンゼルとグレーテルかって感じだけど。

●●●
月間賞は……うーん。難しいな。6月はどれもほぼ横並び。まシアワセな状況だけど。
ムリクリ選ぶと『388』かな。次点で『イットフォローズ』。でもホントに横並びなのよ。
『ヴィジット』も面白かったけど生理的不快感をもたらす汚い描写で個人的に半歩後退。

●●●
半年過ぎて22本。
ま、そんなモンかしらね。
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