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2017年02月23日22:37

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キリマンジャロに登頂して歌をうたう

2月9日(木)

22時30分、起床。
寝付きが悪く、浅い眠りだった。

もちろんまだ夜だ。
これから頂上へアタックする。

食事テントで軽くお茶とお菓子。
装備の点検もする。

夜明けごろが登頂のはず。
そのときの気温は氷点下10度だそうだ。
日本の冬山なら、むしろ温かいぐらい。

でも6000メートルの高地で、ゆっくり登っているので体の芯まで冷えてくるそうだ。
ガイドのYさんの提案どおり、足先に靴用ホッカイロを装着した。

23時40分、バラフキャンプを出発する。
ヘッドライトを点灯して登る。
さいわい天気はよく、月明かりがある。
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ここから先、頂上までは真っ暗で写真が撮れなかった。
どんな地形だったか分かるように、下山のときの写真を載せておく。

最初はキャンプ地から少し、砂地のゆるい斜面。

それから少し急な岩場があった。
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30分ほどで抜けるとつづら折りの岩と砂の斜面になった。
まるで富士山の登山道のようだ。
どちらも地溝帯の上にそびえている火山だからなあ。
高度差も1000メートルちょっとだから、やはりこれも富士山と同じぐらい。

斜面としては長くて急だった。
でもなにしろ真夜中で真っ暗だから、よくわからないまま登っていった。
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たしかに気温は低い。
でも、たいしたことはない。

すこし手足の指先がしびれる程度だ。
それよりも気になるのは空気の薄さだ。

一生懸命深呼吸をする。
わたしは調子が良かったけど、他のメンバーはそれぞれに不調を訴えだした。

とくに埼玉の元社長夫人は嘔吐が激しく、休憩のたびに苦しそうにしている。
夫の元社長が付き添って介抱している。
その元社長も頭痛が出ている。
二人は他のメンバーから次第に遅れていった。
サブガイドがいっしょにいるけど、あまりひどいようだと下山しなければならない。

ケアマネのおばさんも、これまでの食欲不振でつらそうだ。

兵庫のギターおじさんも頭痛と戦っている。

いちばん元気そうだった若いサラリーマンが、5000メートルを越えると腹痛と吐き気に見舞われた。

みんな初めての高度だから身体が拒否反応しているのだろう。

バラフキャンプまでは、高知の独身オバサンがいちばんつらそうに歩いていた。
オバサンのゆっくりペースに合わせ休憩を取り、やっとバラフまで登ってきた。
もちろん頂上に向かう今も苦しそうだけど、ゆっくりペースで止まらずに歩いている。
いや、たまに止まるんだけど、他の人が励ましてなんとか歩かせる。


暗い単調なつづら折りを、何度も折り返し登った。
先行グループのヘッドランプの光を追いながら。

その光の列が途切れているところが見えてきた。
ガイドのYさんに尋ねた。
「あれがステラポイントですか?」
「そうです!」

キリマンジャロの頂上は直径4キロの大きな噴火口になっている。
ステラポイントはその噴火口の縁になる。
標高が5730メートル。
そこから最高地点のウフルピークまでは標高差100メートルほどの平坦な上りがあるだけ。

富士山の吉田口頂上から剣が峰に行くようなもので、ステラポイントまでたどり着けば登頂したも同然だ。

ステラポイント直下で、高知独身オバサンが動かなくなってしまった。
体力も限界に近いのかもしれない。

「一歩ずつ数えながら登って!百歩でステラポイントに着くから!」

みんなでゆっくり登っていく。
6時過ぎ、ステラポイントに着いた。
地平線が明るくなってきた。
黄色い標識に、微かに光が指した。

高知独身オバサンは泣いていた。
「今までわたしの人生は良いことがなかったけど、これで幸せだ〜」

ケアマネおばさんは、わたしにハグしてきた。
その他の人もみんな、握手しあって喜んでいる。
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あと少し、ウフルピークに向けて歩きだす。

夜が明けてくる。
ヘッドランプをしまう。
最高地点も輝いて見える。
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狭い噴火口尾根の外側には氷河が横たわっていた。
大きな氷を眼下に眺めながら歩いて行く。
昨日降った雪が薄っすらと積もって、踏みしめると気持ちがいい。
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1時間後、広場のようなところに看板があった。
その先は、すっぱりと切れ落ちている。
キリマンジャロ登山の終点ウフルピークだった。
標高5895メートル。
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振り返ると、ちょうど太陽が雲海から登ってくるところだった。
ウフルピークでご来光が見られるなんて、なんというタイミングだろうか。
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みんなであらためて喜びを分かち合う。

看板の前で記念撮影をするのがキリマンジャロのお約束だ。
他のグループが並んで順番待ちをしている。
わたしたちも列に加わる。
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ちょっと時間がかかった。
やっと最前列に来て、撮影をする。
それぞれのカメラを誰かその辺の人に渡して、写真撮影していた。
そのとき、二人の人が走り込んできた。

高度障害で遅れていた元社長夫妻だった。
「間にあった〜!よかった〜!」

元社長夫人も、よろよろになりながらサブガイドに脇を支えてもらい、ここまで登ってきたのだ。
これでメンバー全員が揃った。
あらためてみんなで登頂記念写真を撮る。


兵庫のギターおじさんの提案で、頂上看板の近くで唄を歌った。
「上を向いて歩こう」だ。

♪上を向いて 歩こう涙が こぼれないように
♪思いだす 春の日一人ぼっちの夜
♪上を向いて 歩こうにじんだ 星をかぞえて思いだす 夏の日一人ぼっちの夜
♪幸せは 雲の上に幸せは 空の上に 上を向いて 歩こう涙が こぼれないように
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なんか他のグループの人たちに、めちゃくちゃウケてしまった。


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7時30分、下山開始。
来た道を戻るだけだ。
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わたしは他の人たちを見失い、はぐれてしまった。
先に下りているのかと思い、走ってバラフキャンプまで戻った。

8時30分、バラフキャンプに到着。
ウエイターさんがお祝いの言葉といっしょにレモンジュースを出してくれた。

他の人たちが下山してきたのは10時30分だった。
わたしが途中からいなくなったので心配をかけてしまったようだ。

おたがいに安心して昼食をとる。

12時30分、バラフキャンプを撤収して下山する。
ムウェカルートというのを下りていく。
広くなだらかな尾根だ。
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高度が下がり、また灌木帯になり樹林帯になった。
16時30分、ムウェカキャンプに到着。
標高は3100メートルに下がった。

高度障害が出ていた人たちも元気になった。
空気が濃いというのはありがたい。
気温も暖かく、緑もたくさんある。

殺伐とした世界から戻り、楽しい夕食をした。
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2月11日(日)

今日は3時間、ムウェカゲートに下りるだけ。

朝食前に日本人とタンザニア人が集まって解散式を行った。
ガイドさんやコック、ウエイター、ポーターさんたちにチップを渡す。

その次は恒例で、おたがいに唄を歌うことになっているそうだ。
わたしたちは、他に知らないからまた「上を向いて歩こう」を歌った。

タンザニア人たちは「キリマンジャロの唄」というのを歌ってくれた。
ビートの効いたアフリカっぽい旋律だ。

♪アクナマタ〜、キリマンジャロ〜
と何度も繰り返す。

「アクナマタ」というのはスワヒリ語で、ノープロブレム、ケンチャナヨの意味。
日本語だとぴったりするのがないけど、「大丈夫」ぐらいだろうか。
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8時、下山開始。
ジャングルの中を下りていく。
日差しが強く、熱帯植物が咲き乱れている。
なんだか懐かしい気がする。

突然、先頭のサブガイドさんが立ち止まった。
振り返って
「バイバイ〜キリマンジャロ」
と言っている。

頂上が眺められる最後のポイントだそうだ。
みんな、もう一度、記念に写真を撮る。
そして声を揃えて言った。

「バイバイ〜キリマンジャロ!」

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(サファリ編につづく)
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