mixiユーザー(id:10719871)

2017年01月28日13:11

244 view

リップヴァンウィンクルの花嫁

DVDで「リップヴァンウィンクルの花嫁」を観た。
3時間の長丁場なので観る前は退屈になるかもと思ったりしたが、そんなことは全然なく、いや、実に素晴らしい映画だった。傑作。

ネット時代の、希薄化・流動化した人間関係の中で、どこにもよりどころを見い出せない孤独、そんな状況だからこそ、切実に関係を求めずにはいられない人のありようといったものが、ここまでリアルに描かれた作品は、そうそうないのではなかろうか。
映画に出てくる人間関係は、全て嘘混じりの歪んだ関係ばかり。
普通だったら、そこから何か信頼できる人の美しさ、力強さといったものが、導き出されて、救いのある「いい話」に着地したりするわけだけれど、この映画にはそんなわかりやすい「救い」はない。
いつもの岩井俊二作品なら、少女マンガ的なリリシズムがささやかな救いを感じさせてくれるのだけれど、この映画ではそれも封印されている印象。
だから、何ともやりきれない気分になる映画である。

けれど、救いが全くないわけではない。
全てを失って孤立したヒロインは、ある女性と知り合い、濃密で深い関係を体験する。
それも不幸な結末に終わるのだけれど、それでも再び1人になったヒロインに、映画の前半のような途方に暮れた感じはない。
それはきっと、濃密な「リアル」を体験したから。
その「リアル」を「愛」といってもいいのかもしれない。
すごく示唆的だなと思うのは、そうした「リアルな関係」に「セックス」と「死」が絡んでいること。
つまりはそれこそが人間にとって本質的な「リアル」だということだろう。

その「リアル」を表現するために、Coccoをキャスティングしたことが、この映画の重要なポイント。
その演技というか存在感は、やはり別格。
音楽と違って芝居は楽しいというだけあって、実に生き生きと演じている。
主演の黒木華も他には考えられないくらいにハマリ役で、素晴らしい演技を披露している。
そして岩井俊二、改めてすごいと思った。
正直もう旬は過ぎたかな、と思ったりもしていたけれど、すみません、猛省します(笑)



1 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する