数的優位に立った絶望がぼくを見下しはじめる
浸食されずに僅かに残った夢見がちを集める
蟻が砂糖細工をもぐもぐ運んでいるみたいに
連れ去られていくから地面をただ見つめてる
見えないボードに掲示された数字を眺めては
得失点差を最小限に抑えていようとしてたけど
溢れだした涙がそのうち歪みを決壊させてくれる
怖すぎる瞬間はなんとなく楽しみな瞬間だから
風のない場所でゆらめいている蜘蛛の巣を見て
絡め取られる肢体の長さを目分量ではかっていた
死角こそ目視するのが趣味だった月日は流れて
見えやすい位置こそどこよりも盲点だったから
目の前にある身近なものへの愛着と親近感を
疑いのまなざしで愛され過ぎて壊れた心臓を聴く
根拠なく妄執を振り払うために頭を振るけれど
落下するのは秘かに囲い仕舞っておきたかった物
造作なく落城する様子が落日と重なり合った
中身を失った張りぼてになれるならば
廃墟のデパートにゆらゆら漂うなら
出会う場所は思いがけない僻地で
愛すべき辺境で忘却の彼岸へ
旅に出るよぶらり片道切符
辺鄙な顔した架空の駅で
いつもとりとめない話
耳元で囁いてくれる
泊まる宿で聴く
雨の音色だけ
心に沁みて
抱く面影
無の夢
潜る
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