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2016年05月07日00:59

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頭の中にのこる音 ことしのLFJ金沢  

今年もラ・フォル・ジュルネ金沢に行く。

●なんといっても目玉は、ホルンのラデク・バボラーク。

世界最強のホルン奏者。

自分がホルンが好きなのは、幼少の時に「ウルトラセブン」のオープニングの「はるかな星が〜」の後に「プォープォー」と入るホルンの音、曲の最後でも咆哮しているホルンの音、が頭の中に入って離れなくなっているからだと思う。

バボラークのホルンを、バボラーク・アンサンブルの演奏で聴く。

なんというまろやかで、甘い音色。
こんな音色のホルンは聴いたことがない。

最初の入りだけは息が強くなったりするものだけど、全くそうしたことがなく、弱音から強音まできれい。

思っていたよりも小柄で、アンサンブルのメンバーの中でも一番小さいくらい。ブロンドの第
2ヴァイオリンの女性なんか、背が高くて目立っていた。

ピアソラのバンドネオンを、ホルンで演奏したようなのって、超絶技巧なのかなぁと思いつつも、ちっともすごさがわからないくらい。

<バボラークのホームページ>
http://www.baborak.com/cz/ensembles



●ゲント・ブラス・アンサンブル O'Brass
 
 本当は、「惑星」を聴くつもりだったけど、自分がチケット購入しようとしたときには売り切れ。
 若者12人のブラス・アンサンブルで、「惑星」から「木星」を演奏するというので、聴いてみた。

ベルギーのゲント市は金沢市と姉妹都市。このアンサンブルは、ベルギーのコンテスト優勝とか若い奏者だけど、実力はあるとのこと。

「どろぼうかささぎ」序曲から「はげ山の一夜」、「展覧会の絵」から「キエフの大門」とか、耳になじみのある名曲が多い。
「木星」は、木管で演奏される最初のピララピララのところを打楽器でやっていた。

アンコールで演奏されたのは、ニーノ・ロータ「8・1/2」のテーマ。
演奏しはじめてから、彼らが舞台の上でまわり出しそうだったが、途中で止まった。
フェリーニの映画みたいに回りながら演奏してもよかろうに。
客席からは手拍子。

この曲は、学生時代にちょっとした思い出があるので、予想外に聴くことができて、たいへんうれしかった。(あの時にナナコが走り回っていた場面で鳴っていた音楽なのです。)

<ゲント・ブラス・アンサンブルのホームページ>
http://www.obrass.be/home/


●白鳥の湖、火の鳥

アンサンブル金沢のメンバーに、助っ人が入って大編成に。
指揮者は、ドホナーニやラトルに師事したという、アレッサンドロ・クルデーレ。

「白鳥の湖」。バレエ音楽であることを意識した演奏だったと思う。
テンポはしっかりとって、ダンサーが跳躍している絵が浮かぶよう。
ヴァイオリンの音を抑える指示を出して、木管を聴かせるようにしたり、聴かせたい楽器の音をしっかり出していて、実にいい指揮ぶりだった。

「火の鳥」。ストラヴィンスキーは実演ではなかなか聴けない。
アンサンブル金沢は、美しい音だった。
トロンボーンの咆哮でもエレガント。これも、ダンサーが大きくはばたく様子が目に浮かぶ。

クルデーレ、これから有望かも。

<アスペンのホームページに詳しいプロフィール>
http://www.aspen.jp/artist/conductor/alessandro-crudele/index.shtml


●能とシェーンベルク
 雪・・・能楽「雪の舞」
 花・・・シューベルト「野ばら」他
 月・・・シェーンベルク「月に憑かれたピエロ」より第二幕

毎年、能とのコラボは鑑賞しているが、今年は純粋な能楽、洋楽、コラボの3本立て。
シェーンベルクは、1912年初演の曲。
ピエロが夢の中で、般若に追いかけられる。
というのは、いかにも、表現主義である。「カリガリ博士」の登場は1920年。
これを今、上演する意味がよくわかる。今までのコラボの中でも一番よかったと思う。


●アブデル・ラーマン・エル=バシャ
 ベートーヴェン ピアノソナタ第17番 ニ短調 作品31-2 「テンペスト」
           ピアノソナタ第15番 ニ長調 作品28 「田園」

 エル=バシャのピアノは、数年前にショパンを聴いて大変感銘を受けた。
 実は、今年のLFJの中で、今でも頭の中に残っている演奏である。

高橋源一郎が、「一枚の写真の背後にどれだけ多くのことが秘められているか。動画だったらもっと生々しいはずなのに、写真の方がいつまでもひっかかっているような気がすることがある。」と書いた文章を読んで、
エル=バシャのピアノの余韻と似ていると感じている。

紡ぎだされる鍵盤の音はすぐに消えていってしまう。
彼の演奏は、派手さは全くないし、感情を込めた弾き方はしていない。
一音一音、積み重ねていくうちに、頭の中に何かが形作られていて、その背景まで考えられているような演奏である。

ストイックで、求道者のようである。 

「テンペスト」第3楽章、繰り返されるフレーズ。
なんだか切ない、なんだか哀しい。

「田園」〜「のどかな自然を描くような曲調」と解説に書いてあるが、どこがのどかなのか、自分にはさっぱりわからなかった。
ここでも、左手は全く同じ旋律を弾きながら、右手だけ違う旋律を弾くというところがあって、
そうした反復を、ただただ愛おしく感じる。
高貴な演奏だと思う。

エル=バシャは、最近、ベートーヴェンのピアノソナタ全集を出しているが、さすがにそこまで買えないとは思う。しかし、そのCDのデータを見てびっくりする。

「録音場所:ヴィルファヴァール農場、フランス」

やはり只者ではないと思う。来年も聴きたい。
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