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2016年02月16日19:33

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『兵士は戦場で何を見たのか』--The Good Soldiers 生還しても . .

まだ涙が乾かなくて、表紙を見ただけで、またこみ上げてくる。
だからまったく冷静じゃないけれど、読後感、書きます。

『兵士は戦場で何を見たのか』 亜紀書房 2016-02-11

帰還兵はなぜ自殺するのか』で戦争のもたらす後遺症にせまったデイヴィッド・フィンケルの前作にあたる。
フィンケルが、2007年1月から2008年8月のあいだ、イラクで最前線の兵士たちとともに過ごし、さらに、米国各地の軍の医療センターで追加取材をおこなって、克明に記録したノンフィクション。

途中で何度も、フィクションだったらいいのに、とせんないことを思った。
読むだけでこんなにつらいんだ、作者は、そして訳された古屋美登里さんはどんなにか大変だったろう . . . 想像しただけで泣けてくる。

古屋さんの「訳者あとがき」によると――
本書は、アメリカで出版されるや多くの紙誌の書評やテレビに取り上げられたが、中でも「ニューヨーク・タイムズ」の顔とも言うべき書評家ミチコ・カクタニは、「心臓が止まるような作品」であり、これまでとはまったく違った戦争へのアプローチをおこなって、「戦争のシュールレアルな恐ろしさをみごとにとらえている」と絶賛した。また、「兵士たちの中で育まれる同志愛」や「政治家や軍上層部の論じる戦争と、兵士が直面している戦争とには大きな隔たりがあると兵士たちが感じ続けていること」をも正確にとらえている、と評している。

ほんとうに。むごくて痛くて . . . 心臓が止まりそうだ。
巻末に死亡した兵士たちの顔写真が載っている。まだあどけなさの残る若者がほとんどで、せつなすぎてやりきれない。

ひとりひとりに、あるはずだった未来 . . . 。
いま生きていたら、27歳、28歳 . . .

ああ、だけど、たとえ生き残っても、すごくせつない。
◆ 重度の「戦闘ストレス」のために、アメリカへ帰還することになったシューマン軍曹は、戦線を離脱することにひどい後ろめたさを覚える。帰郷の日の朝、コンピュータで映画を見ている。『地獄の黙示録』だ。

――マーティン・シーンが「ここにいたとき、あっちにいたいと思った。あっちにいたとき、ジャングルに戻っていくことしか考えていなかった」と言っている場面で止めた。少し戻してからまたそこを観た。(P.272)

◆ ギーツ軍曹は勲章をもらうが、やがてPTSDの診断が下り、二次的疾患として、たくさんの爆発の振動を受けたことによる外傷性脳損傷と診断され、三次的疾患として、彼の言う「サバイバーズ・ギルト(生存者の罪悪感)だとさ。なんだかよくわかんねえけど」につきまとわれることになる。(P.391)

"サバイバーズ・ギルト" には、わたしも事故や乳がんで生き残ったときに苛まれた。そのためにアルコール依存症にも陥った。だから、すこしは理解ができる。
でも、戦争の狂気は、災難や病気とは違う。戦争は、人為的なもの、人が人に命じて起こすものだ。そんなもののために、たとえ一般の人ではなく「兵士」だとしても、殺されたり心を壊されたりだなんて、ダメ。
そんなこと、許してはならない。

いま、ひとりでも多くの人に、この本を読んでほしい。
つらくて悲しいけれど、読んでほしい。

+*+-+*+-+*+  +*+-+*+-+*+  +*+-+*+-+*+

以上、舌っ足らずですが――
美しい日本語にしてくれた古屋美登里さんと、
フィンケルの貴重な「前作」を出版してくれた亜紀書房さんへ、
感謝の気持ちにかえて . . . 。

P.S. 奇しくもちょうど一年前に書いた『帰還兵はなぜ自殺するのか』の感想文には、2,500ものアクセスがありました。
関心を持ってくださる皆さんがいること、希望です。ありがとう。ハート

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