鎌倉市さんぽ「二階堂・鎌倉宮(大塔宮)から衣張山巡礼古道」
○「岐れ道の庚申塔」(西御門10付近)
鶴岡八幡宮から県道を東に向かい、金沢八景と大塔宮との岐れ道バス停、信号のある交差点の左手、魚屋さんの手前に2基の庚申塔があります。1基は道標になっており、「右大師道」とあります。
【大倉稲荷の庚申塔】
岐れ道バス停の手前、20〜30ｍのところに右に入る道(大倉稲荷参道)があります。滑川にかかる橋を渡ると「大倉稲荷」があり、鳥居をすぎるとすぐ左手に石塔が8基(庚申塔6基)あります。
○「関取場跡」(雪ノ下562)
清泉小学校の南にある関取場跡は、北条氏康が荏柄天神社の修復費用に充てるため通行税をとったところです。関取場跡の碑があります。その掟書は、荏柄天神社に所蔵されており、「徒歩は五文、背負人は十文、里人の行き来及び僧侶は無料」とあります。土地の人は、この場所を「せきば」と呼んでいたといいます。関取場跡から斜めに入る道は二階堂大路と呼ばれ、荏柄天神社の参道を横切ると鎌倉宮、永福寺跡を通り、瑞泉寺へと通じています。
【関取場跡の庚申塔】
関取場跡の案内板の裏の茂みに、青面金剛と刻まれた庚申塔が1基あります
○「荏柄天神社」(二階堂74)
荏柄天神社は、源頼朝が鎌倉に入るより前からある古い神社で、長治元年（1104）の創建と伝わります。荏柄山天満宮とも称され、幕府の鬼門の守護神でもありました。京都の「北野天満宮」、福岡の「太宰府天満宮」とともに日本三天神の一つに数えられています。天正18年（1590）小田原北条氏を攻め、関東を統一した豊臣秀吉も参拝し、徳川家康に命じて社殿の造営を命じたといいます。本殿は、鶴岡八幡宮造営の余った木材で修理を繰り返し、鎌倉最古の木造建築として残されています。
【荏柄天神社の庚申塔】
荏柄天神社参道(金沢街道沿い)に6基の庚申塔があります。もっとも古いのが元文5年(1740)銘の庚申塔です。
○「鎌倉宮(大塔宮)」(二階堂154)
鎌倉宮は、後醍醐天皇の第３皇子・大塔宮護良親王（おおとうのみやもりながしんのう）をまつっており、そのため大塔宮ともいいます。明治２年明治天皇によって創建された、比較的新しい神社です。護良親王は、後醍醐天皇を助けて建武の新政のために力を尽くしましたが、足利尊氏の謀反にあい、建武元年(1334)、囚われの身となって東光寺の土牢に幽閉され、翌年７月11日、尊氏の弟の足利直義に暗殺され、28歳でこの世を去りました。 鎌倉宮は、その東光寺の跡地にあたります。後日談があり、護良親王の世話をしていた藤原保藤の娘、南方（みなみのかた）が、護良親王の死後に出産。その子が成長して日蓮宗の僧、日叡となり、日蓮をしのび、父、護良親王をとむらうために妙法寺を興しています。
○「覚園寺」(二階堂421)
覚園寺は、建保6年（1218）二代執権北条義時の建てた大倉薬師堂を前身としています。焼失後の永仁4年（1296）、九代執権北条貞時が元寇が再び起こらぬようにとの願いから覚園寺を創建しました。開山には、忍性の弟子智海心慧が迎えられました。真言・律・禅・浄土の四宗兼学の道場。鎌倉幕府滅亡後も後醍醐天皇の勅願所、足利尊氏の祈願所となって保護を受け、鎌倉最大の茅葺の薬師堂では尊氏自筆の梁牌（棟札）を見ることができます。大悲殿跡地には、江戸時代の古民家で手広にあった内海家の住宅が移築されています。
【百八やぐら群】
裏山には「百八やぐら群」があり、180穴ほどあるといわれており、鎌倉では最大のやぐら群です。数が多いということで、仏教でいうところの百八の煩悩になぞらえて付けられた名です。
【覚園寺の庚申塔】
覚園寺の少し手前、天園へのハイキングコースの入口に3基の庚申塔があります。
【辻の薬師堂】
覚園寺の薬師堂（仏殿）は、「薬師三尊」（木造薬師如来及日光・月光菩薩坐像）、「木造十二神将立像」が安置されています。廃寺となった理智光寺の本尊「木造阿弥陀如来坐像」（鞘阿弥陀）や、「木造伽藍神倚像」、「木造賓頭盧尊者像」なども安置されています。薬師堂は元禄年間に建て直されましたが、材料は従来のものを使用しているため、古くからの面影をよく残しています。天井の梁には、文和3年（1345）に薬師堂を修理した際に足利尊氏が書いたという文字が残され、その内容は「天皇陛下のもとで世の中は治まり、元の軍の降伏を祈ったおりには寺が栄えた。仏法はますますきわまりなく、人々は仏と法と僧の三宝を敬い、国内は平和で日々を楽しむことを願う」というもの。天井画は狩野典信（みちのぶ）が描いたものといわれています。
○「歌の橋」(二階堂935)
荏柄天神社参道入口から金沢街道を東に向かうと、鎌倉十橋のひとつ「歌の橋」があります。1213年2月に渋川兼守が、謀反の疑いで処刑されそうになったとき、無実の思いを十の和歌にこめて荏柄天神に納めました。次の日、将軍の実朝は、その歌を聞いて感心して罪をゆるしました。兼守は神に感謝して、そのお礼としてこの場所に橋を造り納めました。これがこの橋の名の由来です。
○「杉本寺」(二階堂903)
急な石段を上る「杉本寺」は鎌倉最古の寺で、初の大僧正となった行基の開山です。東国の旅をしていた行基は、天平3年（731）、大蔵山からみて「この地に観音さまを置こう」と決め、自ら彫刻した観音像を安置しました。その後の天平6年（734）、光明皇后が夢の中で受けた「財宝を寄付し、東国の治安を正し、人々を救いなさい」というお告げにより、本堂を建立したと伝えられています。
【身代地蔵】
杉本寺の観音堂横の六地蔵。よく見ると七体並んで置かれていますが、一番右の一体は「身代地蔵」と呼ばれています。この地蔵尊には、三浦氏の内部争いの際、杉本太郎義宗に放たれた矢を受け、傷跡から血がにじみ出てきたという伝説が残されています。
【杉本城跡】
杉本寺の観音堂の上(大蔵山)が杉本城跡になります。杉本城は、三浦義明の長男杉本義宗によって築かれたとされ、六浦道を抑える要衝でした。建武4年（1337）、後醍醐天皇の命を受けて西上する途中の北畠顕家は、朝夷奈切通から鎌倉に入り、斯波家長の守る杉本城を攻めて落城させました。観音堂横の五輪塔群は、北畠顕家の鎌倉攻めによって戦死した者の供養塔といわれています。この戦いで、家長以下300人が杉本城で自刃したといいます。
○「釈迦堂切通しと衣張山・巡礼古道」(浄明寺2丁目)
「衣張山」には、北条政子がある暑い日に、この山に白絹を張って、雪山に見立てて涼をとったという言い伝えがあります。杉本観音バス停のすぐ先の信号を右折し犬懸橋を渡り、滑川沿いを3分ほどで十字路に出ます。
【上杉朝宗および氏憲邸跡】
この十字路に「上杉朝宗および氏憲邸跡」の碑があります。横切る道は「田楽辻子のみち」で、右は「釈迦堂切通し」、左は「報国寺」への道です。衣張山へは直進して坂を上っていくと登山口に着きます。十字路から右へその先を右折して15分ほど歩くと、通行はできませんが釈迦堂切通しがあるので、寄ってみました。
【釈迦堂切通し】
釈迦堂切通しは、鎌倉時代の面影を良く伝えてくれる切通しです。切通しというより洞門のようです。谷戸の名は、鎌倉幕府三代執権・北条泰時が父・二代執権北条義時の霊を慰め様と釈迦堂を建立したことによります。この切通しは大町方面に通じており、鎌倉の外の地域を結ぶ切通しではないため鎌倉七切通し（七口）には数えられてはいません。一帯は北条時政の屋敷(名越邸)跡で、名越亭の先の尾根道には、納骨堂の丸い穴を日輪に、さらに二重に彫られた穴を月輪にたとえて名がつけられた「日月やぐら」があります。その東側には、伝説の残る「唐糸やぐら」があります。二代執権・義時を弔うための釈迦堂は、洞門の北側入り口の西方にあったといわれ、字名が釈迦堂として残っています。釈迦堂切通しは現在は通行禁止になっていますので、もとのハイキングコース(先の十字路)に戻ります。
○「衣張山(標高120ｍ)」(大町6丁目)
十字路を南に向かうと、最奥の民家の横の登山口から山頂までうす暗い植林の道が続きます。沢沿いの道から左手の自然石の階段を上っていくと、尾根にでます。衣張山の標高は120ｍで、山頂は平らで広くて見晴らしの良く、傍らに2つの五輪塔と地蔵、ベンチがあります。南側が開けていて、鎌倉の街と由比ヶ浜、稲村ガ崎、その向こうに箱根、富士山、丹沢、相模湾には伊豆大島も見えます。
【浅間山】
衣張山を南に下ると、また小高い山頂「浅間山」に着きます。この山頂は衣張山山頂ほど広くはありませんが、五輪塔や陶器の仏さまと真新しい石仏があり、展望が開けています。
○「巡礼古道」(浄明寺2丁目)
なおも浅間山を下り尾根道を行くと、団地（鎌倉逗子ハイランド）の北端の公園に出ます。「巡礼古道5分」の道標があり、鎌倉市とは違いここは逗子市になります。公園は東西に細長く、団地の横の公園内を歩きます。左に報国寺への谷道を分け、公園を出ると左手に「巡礼古道」への道標があります。巡礼古道は昔観音信仰が盛んだった頃、 坂東観音霊場・札所33ヶ所の第一位「杉本寺」から第二位の「岩殿寺」（逗子市）に通じていた巡礼道で、現在は宅地造成のため途中で中断されてしまいましたが、わずかに残っていて古道歩きが楽しめます。特に8月10日の四万六千日には、多くの巡礼者で賑わったといいます。
【巡礼古道の庚申塔】
巡礼古道を下ると、庚申塔と掘られたいくつかの石板や、報国寺が近くなると磨崖仏などがあって、昔の信仰の旅が偲ばれる道です。
○「報国寺(竹の寺)」(浄明寺2-3)
「報国寺」は孟宗の竹林で知られる寺で、「竹の寺」と呼ばれます。建武元年（1334）に開かれ、足利家及び上杉家の菩提寺として栄えました。寺名は開基足利家時の法号「報国寺殿」に由来します。本尊は釈迦如来像、脇侍の文殊菩薩像・普賢菩薩像は宅間法眼作と伝わります。開山の天岸慧広（仏乗禅師）の『東帰集』は、日本人によるものとしては最初の漢詩集です。永享の乱で敗れた足利持氏（四代鎌倉公方）の嫡男義久（10歳）がこの寺で自刃しています。
【北条新田合戦追悼歌碑】
源頼朝が創設した鎌倉幕府は、元弘3年（1333）の新田義貞による鎌倉攻めによって滅亡しました。昭和40年、北条・新田両軍戦死者の遺骨が由比ヶ浜から報国寺に改葬され、鐘楼横の五輪塔群の中には、「北条新田合戦追悼歌碑」が建てられています。
�爐い気鬚靴眩笋眇呂睨笋譴董‐燭亡┐珪症�の音
華の世を所業つたなく散る君に 香一片を焚きておろがむ��
【木下利玄歌碑】
木下利玄は、明治から大正にかけて活躍した歌人で報国寺に墓があります。歌碑は「竹の庭」の入口に建てられています。
�爐△襪�来てものゝふ果てし岩穴の
ひやけきからにいにしへおもほゆ��
○「華之橋の庚申塔」(浄明寺2-4)
報国寺から北に向かうと、華之橋南詰に寛政12年(1800)銘の庚申塔があり、道標になっていて、右面に｢右ーばんすぎもと道｣、左面に「二ばんいわどのはしより入｣とあります。庚申塔のほかに、馬頭観音、聖観音さらにもうひとつ石仏などがあります。
○「浄妙寺」(浄明寺3-8)
「浄妙寺」は、文治4年（1188）源頼朝の重臣・足利義兼が父義康の菩提を弔うために創建した、極楽寺を前身としています。開山には、鶴岡八幡宮の供僧だった退耕行勇が迎えられました。行勇は、源頼朝や北条政子も帰依した高僧です。義兼の子義氏のときに、足利尊氏が父貞氏の法号「浄妙寺殿貞山道観」にちなんで寺名を浄妙寺と改めたと伝えられています。現在の浄妙寺は、総門・本堂・庫裡というだけですが、かつては足利氏の保護下で鎌倉五山に列せられるほど栄えました。
【足利貞氏の墓】
足利貞氏は浄妙寺の中興開基、八幡太郎義家から数えて八代目の子孫で、室町幕府を開いた足利尊氏の父です。本堂背後の墓地にある宝篋印塔は、明徳3年（1392）の銘のあるもので、中央部には「宝生如来」が浮き彫りされています。『新編相模国風土記稿』には、「元弘元年（1331）9月5日讃岐守貞氏卒しければ荼毘して当寺に塔を建つ」との記載があって、古くより、中興開基で、足利尊氏の父貞氏の墓とされてきました。
【稲荷小路の庚申塔】
県道(金沢街道)から浄妙寺（総門）への道の中ほど、やや手前で右に曲がり、すぐ突き当たりますので左に曲がります。あとは、道なりに左手の山裾にそって、右にゆるやかに曲がる道をたどります。やがて視界がひらけその先の道の左手に見えてきます。大木の根の上、1.5ｍほどのところに2基の庚申塔があります。
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