葉山町さんぽ「仙元山ハイキング・長運寺から仙元山」
○「長運寺」(長柄615)
逗子(新逗子)駅前から葉山方面のバスに乗り長柄交差点で下車し、あずまやのところを斜めに入り道なりに行きます。旧道を東にしばらく歩き、十字路を左折して少し入ると「長運寺」があります。大永年間（1521〜27年）に御霊神社の別当寺として達立されました。開基は宥海(ゆうかい)で、寺の名は三浦大介義明の命名と伝わります。三浦大介義明は平安時代末期の衣笠城主で、三浦半島一帯に勢力を保持していました。本尊は不動明王。平安時代末期、土地の武士・長江義景が祖父・鎌倉権五郎影政を祀るため、衣笠城内の「箭執（やとり）不動」を分祀したと伝えられています。影政は、後三年の役で源義家に従って奥州清原氏と戦った際、鳥海弥三郎に右眼を射られ、弓矢の刺さったままその敵を打ち殺し、陣に戻ってから抜かせたという剛勇な武士として知られます。恵心作と伝えられる三浦不動尊霊場第25番札所です。
【地蔵十王図】
｢地蔵十王図｣があります。江戸時代後期の十王の信仰を一尊一副に描き、地蔵菩薩を含めて十一副からなります。保存状態もよく8月16日の虫干し時に公開されています。
【布袋尊(湘南七福神)】
湘南七福神の布袋尊が祀られ、正月元旦より10日迄ご開帳されます。
【長運寺の庚申塔】
山門右に1基の庚申塔があります。
○「御霊神社」(長柄662)
もとの旧道に戻りのどかな田舎道を東に向かうと、左手にがっちり組んだ石垣の上に「御霊神社」があります。祭神は鎌倉権五郎影政と大己貴(おおなむち)命。勧請は、長運寺を建立した長江太郎義景とも、三浦為通ともいいます。創建も不明ですが、永正14年(1517)再建の棟札が残っています。森に覆われた長柄の里の守り神です。影政にあやかるよう、毎年1月7日に御備射(おびしゃ)祭という神事があります。また、新嘗祭（新穀感謝祭）と七五三祝が11月23日に行われるようです。
○「仙光院」(長柄1439)
御霊神社から東に向かい右折して、川久保橋を渡り逗葉新道に出ます。左折してしばらく歩き、左の旧道に入ると「仙光院」があります。永正年中（1504〜20年）に長覺阿闍梨が開基したと伝えますが、『新編相模風土記稿』には「永正中長覺が再興する…」とあり、永正より前に既に開基されていたと考えられます。長覺阿闍梨は、鎌倉地方に真言宗を広めた真言宗史上重要な名僧でした。
【十一面観世音】
本尊の「十一面観世音」は、大光普照（だいこうふしょう）観音とも呼ばれ、頭上の十一面のうち前後左右の十面は菩薩修行の階位である十地を表し、最上部の仏面は仏果を表します。本尊を修復する機会に、本尊の内部から元禄7年（1694）5月4日に修復を受けたとする覚書が見つかっています。
【毘沙門天(湘南七福神)】
本堂内に安置してある北方の守護神「毘沙門天」は、湘南七福神の一つに数えられます。聖徳太子の物部氏討伐祈願、鎌倉宮の大塔宮護良親王、楠木正成などの深い尊信によって大和国信貴山の毘沙門天を勧請したものです。
【畠山地蔵】
境内に入って左側に「畠山地蔵」を安置する地蔵堂があります。畠山地蔵は、源頼朝の右腕として活躍した畠山重忠の念持仏で、近くにあった長徳寺が所有していましたが、お堂が老朽化したため、平成15年10月26日に仙光院に安置され、翌年10月24日境内に地蔵堂が建立されました。
○「本立寺」(長柄1575)
仙光院からすぐ東に「本立寺」(ほんりゅうじ)があります。寛永元年(1624)創建と伝えられます。
【本立寺塀脇(長柄上)の庚申塔】
本立寺手前の塀脇の路端に4基の庚申塔があります。右端の庚申塔に元禄元年 (1688)の銘があります。
○「長徳寺跡と五輪塔群」(長柄1212)
本立寺から逗葉新道まで戻り、新道を横切り旧道を南に向かうと、阿部倉山登山口(道標なし)の庚申塔などがある奥に｢長徳寺跡｣があります。創建は天文元年(1532)。本尊は地蔵菩薩立像(畠山地蔵)でしたが、平成15年10月26日に仙光院に安置されました。
【長柄の五輪塔群】
登山道を左後ろに見送り直進すると、長徳寺跡の背後の崖には、室町時代のものと思われる無数の五輪塔や宝篋印塔があります。他に、僧侶の墓・無縫塔(むほうとう)も並んでいます。昭和39年のある夜、地主がうめく人たちの夢を見て、この地に墓石が埋もれているのを聞かされたことを思い出し、掘り起こしたものだそうです。
【阿部倉山登山口の庚申塔】
阿部倉山登山口に庚申塔が4基ありますが、傍に畠山重忠守護地蔵尊や馬頭観音、牛明神があります。ここが阿部倉山北尾根の西端になります。
○「福厳寺」(長柄914)
長徳寺跡から西に向かい逗葉新道の手前を左折して、中村橋手前を右に行き人道橋を渡ると「福厳寺」があります。貞和4 年(1348)柏巌可禅(はくがんかぜん)が開山、心満尼が開基、長江太郎義景の菩提寺と伝えられます。鎌倉尼五山太平寺住職の隠栖所(隠居所のこと)ともいわれます。三門(山門)は2階建てとなっており、2階は鐘楼になっています。
【板木の句】
本堂には板木が掛けられ、「生死事大 無常迅速 光陰可惜 時不待人」の句があります。元来は、禅の修行者が道場に入門を乞う時に述べる挨拶語の一つといわれていますが、出典等は不詳です。「生死事大生」（しょうじじだい）とは、どうしても避けて通れないのは生死です。死から逃れることはできません。いつ、どんな形でやって来るかわからない代物です。�狎犬鯡世蕕畛爐鯡世蕕爐襪亙�家一大事の因縁なり�瓠�「無常迅速」（むじょうじんそく）とは、まだまだと思っている間に時間は過ぎ去って行きます。この世の全ての事はすぐに移ろうものです。この世は無常そのものです。常住するもの、常に存在するものは何一つありません。形あるものは壊れ、命あるものは亡んでいきます。「光陰可惜」（こういんおしむべし）とは、過ぎていく時間、一瞬を惜しみ、今を大切に生きなければなりません。人生も長い長いと思っていても、いつの間にか終わりが近づいています。「時不待人」（ときひとをまたず）とは、時間は人を待っていてはくれないのです。私達にはそれぞれ成すべき道があり目的があるはずです。それに向かって雑用心する事なく邁進すべきなのです。
○「長柄一族の墓(長江義景大明神)」(長柄958)
中村橋まで戻り中村橋を渡って直進し、新しい住宅が両脇に数件建ち並ぶ道を突き進むと急に草ぼうぼうの田畑道となります。田んぼを左に見て歩くと、左手に折れたあぜ道の正面に｢長江義景大明神｣が見えます。「殿ヶ谷」（とのがやつ）と呼ぶ、棚田のある谷戸の奥に社殿があります。その社殿の裏側にやぐらがあり、「長江氏三代(義景、明義、義重)の墓」と伝わる五輪塔が3基あります。義重は三浦氏一族が全滅の際に討死し、その後にこの塔が建てられてといわれています。
【長柄館跡】
長江義景大明神のある「長柄館」は、福厳寺の東隣にある殿ヶ谷と呼ばれる谷戸にあった居館と考えられています。遺構はなく、谷戸は一面の田畑に変貌しています。しかし左右両翼を山稜に守られた要害で、中世の居館を置くには適していたことが今でもよくわかります。長柄館は三浦氏の有力な郎党・長江太郎義景の居館で、鐙摺城の東方2km弱の位置にあり、鐙摺城を防衛する一翼を担っていたと考えられています。長江氏は鎌倉氏の一族で、義景は鎌倉権五郎景政の孫に当たるといわれています。衣笠合戦(1180年)の際には、義景は三浦氏の庶流大多和義久と共に城内中陣を守り、三浦氏が滅亡した宝治合戦(1247年)の際にも長江次郎左衛門尉義重が三浦宗家に殉じています。
【殿ヶ谷】
「殿ヶ谷」については、『葉山郷土史』には次のようにあります。
《殿ヶ谷の東南の山間にて水田あり。東は山を負い西に堀跡あり。俚俗伝えて長江太郎義景の館跡と云う。山の裾に洞がある（方1ｍ余、深約1ｍ）。洞中に五輪塔三基列しているが（二基は高さ1ｍ有余、一基は小）皆四面に梵字を彫ってあるのみで其の他文字がないが長江太郎の墓であると云う。其の附近に御殿があったと云うので殿ケ谷戸というのでしょう。其の附近の福厳寺には其の殿様の位牌がある。義景の墓の附近に奥籔という所がある。其の所は義景の奥方の自殺した所であると云う。》
◎『仙元山ハイキングコース』
葉山のほぼ中心を歩く仙元山ハイキングコースは、全長約3�辧Ａ農欧蕕靴つ�望と楽しい四季折々の景色を楽しめます。仙元山は標高118ｍで、三浦半島の山の中でも最も手軽にハイキングが楽しめます。
【仙元山ハイキングコース長柄入口】(長柄1008)
長柄一族の墓から中村橋まで戻り、橋の手前を東に向かい突き当りを右折して直進していくと、最奥の高橋宅の手前右手が「仙元山ハイキングコース長柄入口」になります。入口に、葉山町消防本部が設置した「山火事防止23番」の立札が立っていますが、道標などはありません。大山尾根ハイキングコースに入ると、忽然とした杉林に囲まれ山気が迫ってきます。少し上ると左上にお堂があり、右下が先ほどの「長柄一族の墓(長江義景大明神)」のあるあたりになります。大山尾根は、雑木林の中のちょうど馬の背のような杣道になります。道は整備されたような小道が続き、道標などはありませんが、途中分岐のない上りの一本道です。この尾根道は、畠山重忠が衣笠城攻めの際、進攻していった中世の道になります。
【コース最高地点(標高189ｍ)】
登山道を上って行くと、受信所(アンテナ塔)のあるところが「コース最高地点」(標高189ｍ)になります。最高地点は手作りのベンチなどがありますが、杉林の中で展望はまったくありません。少し下ると、よく踏み込まれた仙元山ハイキングコースに出ます。ここには、葉山町消防本部が設置した「山火事防止12番」の立札が立っていて、道標もあります。
【桜の大木】
仙元山へとすこし歩くと、桜の大木がありベンチも設置されています。見晴もまあまあなので、休憩するのにいいところです。
【急な階段】
やがて急でロングな250段の階段を下ることになります。下りきった鞍部から、正面に登り返しの階段がそびえています。こちらは250段もありませんがそれなりにきついです。左下に葉山中学校が見えます。階段を上りきると展望が開け、向かう仙元山の山頂やその向こうに森戸海岸、菜島がすっきりと望めます。
【仙元山(標高118ｍ)】
さらに尾根道を行くと、仙元山の山頂(標高118ｍ)に着きます。一面の桜の木で花期の頃は名所として知られ、展望はすばらしく葉山の街並みや相模湾の眺めが広がっており、遠くには江の島、相模湾の向こうには箱根や伊豆半島や富士山までも見えます。葉山の海には名島が浮かんでいて、沖合700mほどのところにある無人島で龍宮が祭られているそうです。手前には、高さ13mほどの葉山灯台も見えます。山頂には「不二仙元大菩薩」の碑があり、碑の裏には文政9年と刻まれ、ここでも富士信仰は盛んであったと思われます。
【風早橋バス停】
休憩で景色を楽しんだ後、相模湾を見ながら下山します。しばらく歩いて葉山教会の前に出ると登山道は終わり、あとは急なコンクリートの車道歩きになります。下りきると木下交差点に出て、右折すると葉山トンネルの北側に出ます。左折して歩くと風早橋バス停です。
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