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2015年11月26日18:09

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【映画】年に一本出るかどうかのドキュメンタリーの大傑作『美術館を手玉にとった男』

2011年、アメリカ20州46か所の美術館に展示されていた作品がマーク・ランディスという男性によって制作され、全て無償で寄贈された偽物であったという事件がさまざまなメディアで報道された。金もうけを目的としていないことから彼は罪に問われなかったが、なぜランディス氏はそのようなことを30年も続けてきたのか。特異な贋作作家の素顔に迫る。

じつは本作にはもう一人重要な登場人物が出て参ります。最初に贋作を発見した当時オクラホマ美術館の職員だったマシュー・レイニンガーさま。彼はオクラホマ美術館を辞めさざるを得ず、無職の時も彼の情報を集めることを欠かさず、シンシナティ美術館に移ってからも取り憑かれたようにランディスの行動を追い続けていた。それは何でなのか?

予告編から受ける印象とは裏腹にこの映画は「孤独と赦し」に関しての一つの導きを出しているように私は思えました。

主人公のランディスが求めるものは、他人からの認められたいと言う想いでして、それがあって初めて自分というものが立って居られる程の儚いキャラクターなのであります。ですから最初の方では第一発見者であるレイニンガーさまが余りにも執拗にランディスさまを追っかけるので「悪役」に見えて仕方無かったのであります。

ところが中盤になってレイニンガーさまもある問題を抱えていることを告白されて、自分が抱えている症状とカテゴリー的には一緒なのでこの瞬間に「何故彼は此処まで執拗に追い続けたのか?」と言う回答が得られたのと同時に、その問題を自分が認識されることで「他人を赦す」と言う心情に導かれたのはごく自然な流れとして自分には良く解りましたし、「辛かったんだねぇ」と観ているこちら側も貰い泣きしてしまう程だったのであります。

ランデイスさまがこれ以上「贋作」を作らない為にとある方法を考えついたのが、かつてレイニンガーの同僚だったアーロンさまでして、この方法がナルホドと驚かされると共にでもまたランディスさまは「模写」を続けるだろうなぁ……と思うのでありまして、美術館側も無碍に断ることをせずに「模写」として展示すれば客寄せにはなるし、ランディスさまの渇望も抑えられて一挙両得なのではと考えてしまったのでありました。

美術鑑賞者としてもこの映画から学ぶところは多々ありまして、100円ショップで買ってきた額縁に絵葉書を入れるだけでグンと引き立つのでありますが、今度は「表装」してみようかしらん?とか観ていて幸せな気分になること疑いなしの年に一本出るかどうかのドキュメンタリー映画の大傑作として強く推薦致します。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2011年11月24日 ユーロスペースにて鑑賞)

http://man-and-museum.com/

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