木曽川の河口から源流までを巡る旅。
この企画を思いついてから1年だ。
最初に伊勢湾を出発したのは真冬の雪が降る1月。
桜の季節は犬山城を歩き、新緑の季節は廃国道を歩いた。
真夏の木曽谷では汗だくになった。
最終回は紅葉も盛りを過ぎた山の中を歩くことになる。
11月2日(土)
前夜に名古屋を出発して、味噌川ダムにある「木曽川源流ふれあい館」の駐車場でテント泊。
自販機もトイレもあって快適だ。
午前5時に起きて、ダムのいちばん奥にある奥木曽大橋まで車で移動する。
午前6時30分、橋の右岸にある駐車場から出発する。
ここから奥は一般車両通行禁止だ。
林道を歩いていく。
山は紅葉で赤と黄色に染まっている。
すぐに500メートルのトンネルを抜ける。
木曽川はもう小さな沢だ。
川沿いの林道を2時間ほど歩く。
工事車両が何台か追い抜いていく。
この道はもとは森林鉄道だった。
以前中継駅があったところに神社や建物跡が残っている。
休憩して、無事をお参りする。
上ソコツ沢との出合いのあたりで、林道から別れて沢に下りていく道がある。
自動車が通った跡があるが、かなり荒れている。
とにかく行けるところまで行ってみる。
信ノ沢という支流との出会いに着いた。
ここで道は終わっている。
川の名前もここからは「ワサビ沢」に変わる。
午前9時30分、沢登りシューズに履き替えて歩く。
ここから沢登りだ。
すでに水量は少なく、簡単に渡渉できる。
歩きやすい河原だ。
途中で朽ち果てた木の橋がある。
あちこち作業の人が入っているのだろう。
1時間ほど歩くと堰堤が見えてきた。
横をよじ登って先に進む。
さらにまた堰堤が現れる。
次から次へと、この沢は堰堤だらけだ。
5番目の堰堤は苦労した。
両岸が切り立っていて、崖のようなところを登らされた。
後続者のためにロープを出す。
7つの堰堤を越えた。
だんだん嫌になってきた。
二股の出会いに来た。
右の方に工事中の堰堤がある。
そのすぐ上、100メートルぐらいのところに林道が横切っている。
本日の宿泊予定地だ。
工事中の堰堤に近づく。
看板を見ると「小ワサビ沢」と書いてある。
ワサビ沢の支流だ。
だから左の方の流れが本流だった。
本流を登って行くと、すぐに滝があった。
2段で20メートルぐらいだろうか。
初めての滝だ。
下の方は簡単に乗り越えた。
上の滝で困ってしまった。
岩が逆層になっている。
流れの中に潜り込めば抜けられるけど、この時期に濡れたくない。
しばらく考えて、左岸をロープを付けて乗り越えることにした。
まず岩壁の傾斜が緩いところを登り、あとは滝の上まで崖を横切っていく。
20メートルロープしか持ってきていない。
すぐに足りなくなる。
予備ロープやテープをその場で継ぎ足しながら登る。
かなり足場が悪い。
足を乗せたところが崩れた。
なんとか片手だけで体を支えた。
落ちたら死んでいた。
ゆっくりと岩場を横切り、ロープの長さギリギリで滝の落ち口に来た。
後続者に合図を送る。
緊張しながら登ってくるのが、ロープの進み具合で分かる。
終了直前で「足が攣った!」などと叫んで動けなくなる。
おい、どうすればいいのだ!
しばらくしてなんとか無事に到着。
本日最高の緊張場面だった。
あとは階段のような岩場を楽しく登っていく。
また二股があった。
どちらも林道はすぐそこだ。
左のほうが傾斜がきつくて面白そうだからそっちに行く。
林道の橋をくぐって道に出た。
これは本流じゃなかった。
右のほうがワサビ沢だった。
30メートルぐらい先に右の沢があり、木曽川源流の標柱が立っていた。
「木曽川源流・母なる川ここに生まるる」
午後1時40分の到着だった。
同行者はここに来るのが初めて。
感動して標柱に抱きついている。
予定では、この前の広場にテントを張って早めの宴会だった。
でも小ワサビ沢の堰堤工事で、ダンプカーが停まっている。
工事関係の人もウロウロしている。
作業が終わるのを待つことにした。
ちょっと離れたところ、作業小屋の近くでシートを広げて酒を飲みはじめる。
座って気持ちよく宴会していた。
作業の人が話しかけてきた。
山好きな人のようで、会話が弾んだ。
午後4時、作業の人たちが帰っていった。
ダンプも下に降りた。
あらためてテントを張って、宴会の続きだ。
眠って起きて、夕食を作り、また酒を飲む。
秋は日が暮れるのが早い。
空には星が出ている。
明日に備えて早めの就寝。
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